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恐怖!光の沢!

【注意!!】

虫が苦手な人や、
想像力ゆだかな方は、
ここで戻ったほうがええ。
 
この先はとっても危険だから、
止めといたほうが身のためだあ。
 
これは肝試きもだめでも何でもねえ。
 
ただただ怖い話だからよう。
 
話のネタとしてのぞいてみようなんて、
思わね方がええぞ。
 
虫嫌いならトラウマ必至
いや必死だな。
 
 
ここから本編始まるけど、
無理すねでな。
 
 
テレビのロケ隊。
 
【中継レポーター】
「もうほんと嫌なんだけど。
 何で?!何で私なの?
 他にもいたじゃん!
 今からでも変わってもら…」
 
【司会者】
「後藤さ~ん!
 中継つながってますよ~!
 お願いしま~す!」
 
「え?!
 はい!すいません!
 中継の後藤です。
 私はいまSNSで人気のスポット、
 岩手県◯◯村に来ています。
 人気に火がついた切っ掛けは、
 地元の方の投稿動画で、
 その幻想的な美しさに、
 動画の再生回数は一気に、
 300万再生を突破し、
 今もなお増え続けてるようです。
 そしてそれ目当てに駆けつけた観光客で、
 連日にぎわってる状態です。
 ご覧下さい」
 
薄暗い山間のさわに、
S字に流れている川。
 
そこに満天の星空を思わせる、
無数の緑や黄緑の光の粒が、
縦横無尽じゅうおうむじんに空中をただよっている。
 
【司会者】
「これは綺麗ですね。
 私も動画は拝見はいけんしましたが、
 なま迫力はくりょくが違いますね」
 
「は、はい。
 とってもキレイですね。
 ここに村長の飯田さんに、
 来てもらってます。
 飯田さん、とてもキレイな光景ですね」
「まあ、こんなもんだべ。
 うちらは毎年見てるから、
 特になんてことはねえなあ」
 
「そうですか。
 では急に人気スポットになりましたが、
 そこら辺はどうでしょう?
 何か良かったこととかありましたか?」
「人が来てくれることは、
 ありがてえことだねえ。
 地元の土産みやげ買って行ってくれっから。
 ただ持ってきたゴミは、
 持って帰ってけろな。
 そこだけはお願いすっかな」
 
「そうですよね。
 せっかく地元の方が手を入れて、
 このキレイな沢を
 維持管理してきたわけですから、
 この光景を後世に残すためにも、
 こちらへ来られる方は、
 ご協力お願いします

 
【司会者】
「後藤さん!」
 
「はい!」
「そこちょっとカメラ寄ってますけど、
 映像が遠いんですよね。
 もう少し近くまで行けますか?
 
「ち、近くですか?!」
「観光客が集まってる辺りまで」
 
「……
 わかりました。
 では、カメラさんと一緒に…
 そこまで…行きたいと…思います。
 ……ほんと……
 幻想的というか…
 神秘的というか…」
 
ワーーーー!
ワーーーー!
ギャーーー!
ワーーーー!
ワーーーー!
 
「え?!なに?
 え?え?」
「後藤さん?
 何か歓声が聞こえますけど」
 
「は、はい!
 大勢の方が…ホタルの描く…
 神秘的な世界に…
 歓喜している…ようです」
 
ギャーーー!
ギャーーー!
 
若い男女の集団が奇声を上げながら、
ロケ隊の方へ猛ダッシュで駆けて来た。
 
「絶対!無理!」
「やべえ!!」
「ちょっとあれはグロい!!」
「キモい!想像以上にキモいんだけど!!」
 
叫びながら集団はあっという間に、
夜の闇へと消えていった。
 
ロケ隊の数メートル先に、
ふわ~っと緑色の光が浮かび上がる。
 
静かに八の字を描くように揺らめき、
ゆるやかに地面に落ちる。
 
規則的な緑の光が、
ずっと地面を照らしている。
 
次の瞬間。
 
光は素早い動きで、
ジグザグに動き出し、
瞬く間にロケ隊との距離を詰めてきた。
 
カサカサカサカサカサカサッ!
 
「来たっ!来た!
 来たんだって!
 どいてぇ!ちょっとぉ!
 そこっ!
 いるんだって!
 ダメーーー!!
 帰る!東京帰る!!
 お母さーんーー!!」
 
映像は乱れ、
どうやらロケ隊全員が逃げ出し、
放り出されたカメラが、
真っ暗な道路を映し出していた。
 
カサッ!
 
光の正体が、
カメラの前に姿を現す。
 
【司会者】
「これって…ゴキ◯リ?
 
「……
 …だから…このロケ、
 嫌だって…言ったのに…」
 
遠くの方から後藤アナの声が、
かすかに聞こえてくる。
 
ザッ!
 
カメラの前に人影。
 
「あんれま。
 あれだけゴミは持ち帰れって言っだのに。
 みんな何がくてこさここに見に来んだか、
 おらにはわがらねわからん
 
そして今夜も、
怖いもの見たさの観光客の、
歓喜と悲鳴が沢に響き渡るのであった。
 
カサカサッ
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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