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講談社学術文庫「本願寺」を読む

 久々に趣味の歴史本を読もうと積読になってた本を引っ張り出す。井上鋭夫氏の「本願寺」(講談社学術文庫)です。
 真宗が誕生から宗教集団として封建的な制度を構築し、権威主義的になっていく過程を追っています。鎌倉から明治までをわずか300ページ弱で概観する脅威の本。1966年のものだけあって、思想的に権威主義、封建主義に批判的な視点を持っているようにも感じられ興味深い一冊です。


読書の動機

 戦国時代の歴史では、本願寺があちこち顔を出す。石山本願寺と信長、百姓の持ちたる国加賀一向一揆、家康を苦しめた三河一向一揆。長島では大虐殺されてるのに、結局現代まで生き延びてる。そして三重の津には高田専修寺とか本願寺じゃない真宗もあったりと、よくよく考えると疑問だらけ。
 そして最近、父から先祖にどうやら石山本願寺に籠って信長と戦った人がいるらしいとも聞く。先祖の郷土史を調べたところ元々武士だったので石山攻めの際に駆けつけて活躍し、本山直参にしてもらった、との伝承があるとか。直参てヤ◯ザかよ…。
 そんなこんなで一度挫折した本を引っ張り出した、という訳です。

ざっくり内容

 親鸞によって誕生した浄土真宗。親鸞没後に家族が食べていくため京都大谷の親鸞廟堂の管理人になります。廟堂へ参詣する人や寄進の利権を巡り親族が争い、さらに親鸞高弟で裕福な関東などの地方の真宗信者集団に対し、親鸞血族が廟堂留守職(管理人)ではなく優位性を保つために画策する。なんとか頑張って廟堂を寺に昇格させることに成功し本願寺が誕生。当初は専修寺と名乗ったら比叡山延暦寺からダメだしされて本願寺になった、という経緯も興味深い。
 そして各地の有力寺院を支配下におきたい血族対地方有力寺院が合従連衡を繰り返す中で、蓮如が登場。未だ弱い勢力の本願寺を「ほえほえ」として人気抜群で庶民の中に入り、全国各地でオルグ活動して次々に本願寺勢力を拡大していく。庶民の中にいながら、実は一族とそれ以外の人の食器を分けたりと選良意識が強烈だったとか。
 その後、他の勢力とのせめぎ合いから足利幕府や朝廷に接近。細川政元と仲良くなったことで大名間の争いに巻き込まれてしまう。しかも、本願寺と対立してる他の有力真宗勢力とも争うので、ややこしい。
結局織田信長に屈服させられた時、戦後処理を巡り顕如と息子教如が対立。この対立が後の本願寺の東西分裂に繋がっていくわけです。

感想

 親鸞が妻帯肉食オッケーとか言い出して、当時の人にとってはカルト集団に思われたんでしょうかね?そして、その法難があったからこそ、北陸や東国に基盤ができ、教団として成立していく様が見て取れます。共通の敵ができることで集団はまとまりを得るのだな、と、思います。
親鸞自体は欲がなくても、子孫が現れ食べていくことを考えた際にどうしても利権が発生してくる。さらに血筋というものの優位性というものがどこかあるわけです。
 苦闘の末に貴族化していく本願寺一族。そういや自分の小さい頃にえらい揉めて新聞沙汰になってたことをうっすら記憶しています。
 うちの先祖は僻地も僻地の大僻地の寺だったそうで、ダムに沈むこととなり、その際祖父は還俗したそうです。うちの父は長男じゃないので継ぐ必要もなかったでしょうけど、お寺を継がされていたら今頃寺の維持で大変なことになってただろう思うだけに、祖父が還俗してくれてありがとう、と、罰当たりな孫は思う。私は小さい頃、結構親に色々と言われており、歴史も好きだったので関心は極めて高かったのですが、正直、今年母の葬儀をした際に色々と思うところがありました。この本読んでその思いを強くしたところです。
 ま、自分は死んだら直葬で収骨せず、そのまま骨は火葬場で処分してもらっていいかな、墓もいらんな、と、思う今日この頃です。しかし、そろそろ継がなきゃならないお墓もあるし、悩ましいところです。

と、色々と考える際のお供にどうぞ👇


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