意外性はないが…/『AI崩壊』感想
映画『AI崩壊』は、インフラから医療まですべてにAIが入り込んだ2030年の日本を舞台に、そのAIの暴走によって巻き起こるパニックと、国家の陰謀を描いたSFサスペンスだ。
宣伝のためのメディア出演で大沢たかおは、「近未来×オリジナル脚本ってコケる匂いしかしないでしょ」というようなことを度々言っていた。ハリウッド大作ならいざ知らず、たしかに邦画でこの手の作品が成功したイメージは浮かばない。でもだからこそ「絶対に成功させたいと思った」と、挑戦しがいがあったとも話している。
いかにも映画専門誌で酷評されそうな作品にあえて立ち向かう大沢たかおの心意気に胸を打たれ、逆に興味をそそられた。
結論からいうと、最後まで楽しめるエンターテインメントに仕上がっていた。期待値が高くなかったのもあるのかもしれない。序盤は5分ぐらい寝てしまったが(作品の良し悪し関係なく、その日は疲れていた)、物語が進むにつれ目が離せなくなった。
全体的に王道を外すことなく、ストーリーは素直に展開する。題材そのものがチャレンジしてるから内容自体は大きくひねることをしなかったのかもしれない。登場人物たちも全員が初見の印象そのままのキャラクターである。大沢たかおの妻を演じた松嶋菜々子やその娘の存在も、大筋として既視感は否めない。意外性やどんでん返しを期待して観る作品ではないと思う。
AIが浸透し、人工知能に翻弄されるという世界は遠くない未来において起こり得るし、一度は想像したことがある人も多いだろう。すでに世の中に溢れているスマホや防犯カメラ、ドライブレコーダーや自動運転、ドローンまでもが主人公を追い詰め、逆に武器となったりする展開は面白いし、見ていて身近にも感じる。
主人公補正もありながら、大沢たかおの決死の逃亡劇も痛快だ。ツッコミどころも忘れるぐらい、ひたすらよく走っている。いい感じにおじさんとなった顔つきと、やっぱり只者じゃないよなと思わせる肉体美も見どころだ。
身体を張ったシーンも目立ち、1人だけ負荷をかけすぎだろうと心配になるほどだが、さすが本人が意欲的に臨んだだけのことはある。これぞ主演俳優といった稼働ぶり。ガンちゃんこと岩田剛典の好演や、玉城ティナの相変わらずの美貌も目の保養になる。
一部をカットされた金曜ロードショーなんかで片手間に観たら良さが伝わらないと思う。AI技術の発展スピードは早い。なので作品の旬は短い。なるべく公開から時差のないタイミングで観ることを薦めたい。
サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います