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¨アレ¨は現実世界にも潜んでいる/『来る』感想

中島哲也監督のサスペンスホラー映画『来る』感想です。

<あらすじ>

オカルトライター・野崎(岡田准一)のもとに相談者・田原(妻夫木聡)が訪れた。最近身の回りで超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起きていると言う。田原は、妻・香奈(黒木華)と幼い一人娘・知紗に危害が及ぶことを恐れていた。
野崎は、霊媒師の血をひくキャバ嬢・真琴(小松菜奈)とともに調査を始めるのだが、田原家に憑いている「何か」は想像をはるかに超えて強力なモノだった。

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「面白い」の定義のひとつに、「最後まで目が離せない」があるとすれば、この映画は間違いなく面白い作品だ。

ただ、観ているほうは相当の消耗を強いられる。長くても面白いからあっという間という作品もあるが、これはしっかりと長さも感じる。いつ終わるんだ、どう終わるんだと。退屈に感じる長さなのではなく、負荷があるからこそ感じる長さだろうか。

面白いけど、二度目を観たいとは思わない。もう一度観たいシーンがあるとしたら小松菜奈の真っ白な太もも。

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内容はネタバレになるので書けない。というか書くのが面倒。それにどうネタバレしたらいいのか分からないのだ。観終わった今でも残る謎があるし、かといって原作を今さら読む気にもなれない。

乱暴にいえば、「本当に一番こわいのは結局人間だよね」というよくありがちなまとめ方になってしまう。でも本当にそうなのだから仕方ない。この映画の中にある「恐怖」は、誰にとってもどこか他人事ではない。だから厭な胸騒ぎを覚える。

果たして¨アレ¨はフィクションの中にしか存在しないのだろうか。

いや、姿や形、スケールが異なるだけで、リアルなこの現実世界にも現れているのだろう。心に宿る弱さ、虚栄心、悪意などから巣食って人間を狂わせる。だからイジメが、殺人が、自殺が、テロが、連日ニュースを賑わせているのだ。

通りすがりの人間が、隣人が、友人や恋人が、いつアレに変貌して自分を追い詰めるか分からない。出来ることはまず人を人として扱い、大事にすべきものを愚直に大事にすることだけなのかもしれない。

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主演は岡田准一ながら、妻夫木聡とのW主演と言ってもいいほど妻夫木の好演が光る。実際に出番も多い。やっぱり良い役者だと再認識させられた。繊細な好青年も鈍感な馬鹿も絶妙に演じ分けられる。この映画で妻夫木が果たしてる役割は相当大きいと思う。いまや邦画界を牽引する俳優2人が並び立つのは新鮮であり、安心して観られた。

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岡田准一は最終的に何かに対して怒りを露わにして叫んでる役のイメージが強いのだが、この映画でもちょっと既視感を覚えた。一見、感情の起伏もないただのやさぐれ男かと思いきや、徐々にそうなった理由が明かされ、人間味が増していく様は良かった。

中島哲也監督から寵愛を受ける女優、松たか子と小松菜奈の2人。今回2人はちょっと変わった姉妹役である。

同監督の映画『告白』のイメージが強烈な松たか子は、今回も難しい役どころを彼女にしか出せない迫力を持って演じている。ドラマ『カルテット』でも感じたことだけど、松たか子の抑えた演技ほど底の知れない怖さはない。

小松菜奈はピンク色の髪が印象的なキャバ嬢役。彼女はとにかく色が白い。だからピンクの髪も似合うし、登場シーンの美脚はあまりの美しさに見惚れてしまう。彼女以外に誰がこの若さでこの役が務まるだろうと素直に驚かされる好演。小松菜奈の存在感によって作品の世界観が成り立ってる部分は大いにある。彼女の正義感が救いでもあった。

そのほか、すでにネットでも話題になっている柴田理恵の怪演は見ごたえ十分だし、普段のイメージとは異なる役柄で恐怖を煽る青木崇高もスパイスとなっている。

怖さも面白さも両方担保しながらしっかりとエンターテイメントでもある。個人的には観ることをすすめたい。

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