先生と私＿第15話「矛盾」

先生　これ、面白いと思いません？

私　　先月ちょっと話題になったツイートですね。

先生　この獣医の発言も色々矛盾していて面白いです。

私　　矛盾？

先生　これとか。それなら福祉とかセーフティネットが機能してない後進国や途上国の地域では子供を産むべきではない、となります。

私　　はい。

先生　歴史をみれば、これは安直なパターナリズムになりすぎるから反発されるのでしょう。

私　　人権侵害ということですか。

先生　貧乏だろうが富裕層だろうが、ペットを愛し飼う権利は持つべきだと思います。確かに、人間でみても、富裕層に比べたら貧乏な家に生まれた子供は、色々なことで差があり不幸になる可能性は高いですが、貧乏でも産み育てる人がいるから、社会全体としては福祉がサポートされ集団が安定するわけです。獣医の先ほどの発言が「貧乏人はペットの生物としての尊厳を侵害する」という意味なら、ペットを飼うということ自体を否定しなければならないので矛盾になります。

私　　貧乏はペットを飼うなというパターナリズムは、貧乏は子供を産むなに繋がるのですね。

先生　繋がらないのなら、ペットは所詮家畜ということになります。富裕層が良い環境で育てて長年生かそうが、貧乏人が病気で殺そうが、人間が消費して満足してることには変わりありません。そこに動物の意思はないので。獣医の先程の発言は、ミクロでみれば政治的に正しいのですが、マクロでみれば歪が出て矛盾に陥ります。

私　　なるほど。「貧乏人はペットを飼うな」というのであれば、ペット市場自体を廃止するしかないですね。それが最も動物を尊重している。

先生　そうですね。まあ個人の意見をいうなら、貧乏ならペットを飼うなというのはその通りだとは思います。ただ、それを他人に強要するというのは賛成できません。そもそも現代の獣医という市場自体が、貧困層がペットを飼うというマクロ的な経済で助かってるのだし。富裕層が、奴隷やめろと言ってるのと似てるんですよ。じゃああんたらは豊かなサービスやその金どこから捻出してるんだよってのと似たようなイライラを覚えます。

私　　もう獣医が獣医をやめちゃえば良いのでは。笑

先生　そうですね。一般のペットを診断しない形をとれば良いと思います。

私　　動物園や水族館、牧場からの依頼しか受けないというのは面白いかも。獣医さんも最小限の労働で済むし、貧困層にイライラすることもないですね。

先生　とか言ったら、この獣医は言う事変わりそうですけどね。結局は、動物の事考えてる風に見せかけて、富裕層は良いとか選民意識混ざったポジトークなのです。

先生　実際にこういう人たちがいるから、その市場が回ってるということを軽視しすぎなのです。

私　　アイドルと全く一緒ですね。あなたはお呼びじゃないって人を実は食い物にしてるってやつ。

先生　そうそう。アイドルでも危ない人引き寄せたくないなら、恋愛自由にして、年齢も20歳以上にすればいいだけ。「自分が得するとき、その逆サイでは誰かが損する」という社会の仕組みを理解していたら、獣医なんてものはペット市場の拡大がなければそんなに需要なかっただろうし、安易に貧乏人はペットを飼うなとか言えないと思うのだけれど。私は最近思うのです。短絡的で大きな損害をもたらす人、ペットの問題でいえば、金もないのに可愛いからペット飼うような人、いわゆる愚直な人間。そういう人が嫌いな時期もありましたが、最近はそういう人が必要だとすら思うようになりました。というか、いなければいけないのです。獣医のいうような、長期的な視点で物事をみて合理的かつ正しい判断をする人間ばかり増えたら世の中のいろんなことが回らなくなるし、獣医みたいに上から目線で偉そうに出来る人間もいなくなります。

私　　うんうん、難しいですよねー(途中から聞いてない

先生　Soshina君。そろそろ反知性主義読まない？今言ったようなことに繋がりそうな事書いてそうですよ。

私　　うわー、本の奨め方のセンスのなさ。

先生　あと、ウォーキング・デッドっていう海外ドラマもオススメです。ゾンビものだけど、功利主義や社会契約論の視点からみると面白いです。

私　　気が向いたら。。

おわり