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備忘録:動物形態の多様性とマイクロRNA(miRNA)の相関性がもたらした、一つの希望の光あるいは幻想

温存された細胞やmiRNAの系統樹など独創的な研究で知られる、米国ダートマス大学のピーターソン博士らのチームが2018年のPNAS誌に、Evolution of metazoan morphological disparityという題で発表していた論文がある。


Evolution of metazoan morphological disparityWe attempt to quantify animal “bodyplans” and their variation within Metazoa. Our results challenge the view that maximum variation was achieved early in animal evolutionary histor…

www.pnas.org


当初は、何の差異があるのかすら不可解なグラフばかりで読むのを諦めていたが、私の本能がそうさせたのか、何となく再読してみようと思い立ち、年末年始の隙間時間を使って、繰り返し読んだ。それでも、本研究の意義を理解するに私の力が及ばないという結末に至ったが、それでも、一つの収穫が個人的にあったと実感できた。

この研究は、化石・解剖学・形態などのデータからゲノムサイズ、miRNAの種類まで分子生物学的なデータを統計学的手法で数値化し、かつ、相関図を作成するという研究手法をとっていた。それゆえグラフばかりなのだが、miRNAファミリーの数が形態の多様性と著しい相関性があったことを、追加データも含めて述べているのである。この図を示す。




ただ相関性が見られただけではなく、現在の動物の系統樹で使われる認識に基づくと、新口動物(Deuterostomia:赤)脱皮動物(Ecdysozoa:青紫)冠輪動物(Lophotrochozoa:緑)、の3区画に、互いに重複した領域もなく分けることができているのである。

※上記図表は、以下の資料のFigure.S8になります。

https://www.pnas.org/content/pnas/suppl/2018/08/29/1810575115.DCSupplemental/pnas.1810575115.sapp.pdf


本論文には全く登場しないが、ドナルド・ウィリアムソン博士は、生前、このようなことを言っていた。

「幼生および成体の時期のみに特異的に発現しているRNA配列を解析することで、各RNAの系統関係も明らかになるのではないか?」


今回は、特異的なRNA配列を追跡したものではなく、発現時期や場所を考慮せず、miRNAファミリーの数という粗視的な見方で解析しているものになるが、幼生転移仮説を示唆するものではないか、と直感した次第である。


ウィリアムソン博士は、新口動物に属する脊椎動物(両生類、魚類、無顎類)、頭索類、尾索類、および棘皮動物で、脱皮動物に属する節足動物(昆虫類、甲殻類)で、そして、冠輪動物に属する軟体動物や環形動物などで、大部分は幼生の起源がオリジナルではなく系統の離れた動物にあることを示してきたが(詳細は以下の過去記事に譲る)、起源とされる動物のいずれも、同じ動物門の中に入っているのである。例えば、棘皮動物のプルテウス幼生は半索動物のプランクトスファエラを起源としているが、いずれも新口動物に属する。完全変態を行う昆虫類の芋虫型幼虫は有爪動物のカギムシを起源としているが、いずれも脱皮動物に属する。軟体動物や環形動物などが有するトロコフォア幼生は輪形動物のワムシを起源としているが、いずれも冠輪動物に属する。

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