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第2章:2015年の文献より(1)

2015年のBiological Systems誌で、博士は刺細胞の起源となった上皮細胞生物とアメーバ様生物について、より具体的な考察を試みている。


① 上皮様の祖先に関して

近年の主要な後生動物の系統解析より、板形動物/有櫛動物および刺胞動物という二分類の見方をしているが、上皮様生物の祖先は、現在の刺胞動物には似ていないだろう、としている。数々の研究より、三胚葉の確立が刺胞動物と他の左右相称動物の多様化に先立つ、と考えられるからだ。


有櫛動物もまた、上皮様生物の祖先から除外される。有櫛動物のrRNAが刺胞動物と似ていない他、有櫛動物と海綿動物ではシナプス系の遺伝子が欠けており、刺胞動物では有していること、加えて、有櫛動物には筋肉があるのに左右相称動物の中胚葉形成に必要な遺伝子を持っていない、という根拠があるとのことだ。


板形動物センモウヒラムシTricoplaxは、多数の進化速度の遅い単一コピーの遺伝子の解析から、真性後生動物の姉妹群という位置付けができる他、祖先的な特徴を他にも持っているという。また、ミトコンドリアのリボソーム遺伝子の二次構造、核遺伝子のデータが示す形質情報、Hox様の遺伝子発現パターン、などから、この動物が前カンブリア期の刺胞動物-左右相称動物の共通祖先として有力であり、数多くの二胚葉動物の基になったのではないか、と考える。


上皮様生物の祖先は、センモウヒラムシ様の上皮球体だったのではないだろうか。この上皮球体の一部が現在のセンモウヒラムシとなり、その他の一部でアメーバ様の細胞が体内で共生して、放射相称または左右相称の後生動物になったのではないだろうか。


② 単細胞生物の祖先に関して

コアノゾアは、単一の原始的な生物の一つとされており、3つのクラスに別れている。


(1) Ichthyosporea : mesomycetozoaの寄生体[Ichthyophomus]、saprotrophite [Corallochytrium]

(2) Filastera : 枝分かれした、とてもスレンダーだが長くかつ先細りしない触手を持つ。ミニステリア属 : Ministeria vibrans

カスサスポラ属 : Capsaspora owczarzaki

(3) 襟鞭毛虫 : Monosiga brevicollis、Monosiga ovota


襟鞭毛虫は形態的な特徴から、よく候補にあがる。海綿の襟細胞に似ている。ただし、分子データでは反論もある。この海綿-襟鞭毛虫を共通の起源とする考えでは、IchthyosporeaやFilasteraは否定される。これらの動物は、海綿-襟鞭毛虫の確立前に多様化したのではないか、と考えられるのだ。


襟鞭毛虫のMonosiga brevicollisのコードタンパク質を見ると、自身で進化していると思われ、退化した真性後生動物とは思えない。シグナル伝達や接着関連の遺伝子もあり、多細胞性の起源といえるのではないか。ただし、integrin-beta-domainは欠けており、この動物自体が何らかの基板に接着できるという証拠は見つかっていない。


しかし、Filasteraでは、このintegrin-beta-domainがあり、接着関連の因子が多数見つかっている。Ministeria vibransでは、接着しての培養が可能なことが確認されている。分散した状態でも培養できるようだ。Capsaspora owczarzakiは襟鞭毛虫と共に培養が可能である。このFilasteraが初期の動物の多細胞化への鍵を握っているのではないか、と博士は述べた。


使用文献

Symbiogeny and the Evolution of Tissues : The Hypothesis Stanley Shostak著 Biological Systems Volume 4 Issue 1 2015

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