赤ちゃんわんこの超かわいいこいぬさん

超かわいい赤ん坊の小犬。主成分はスポンジ。身長30cm。生命科学の学習経験者。生態進化…

赤ちゃんわんこの超かわいいこいぬさん

超かわいい赤ん坊の小犬。主成分はスポンジ。身長30cm。生命科学の学習経験者。生態進化発生学、遺伝子水平移動の自称オタク見習い。もの凄くかわいい、という点においてのみ、猛烈に自信があります。写真にて一目瞭然と確信しています。

記事一覧

謙虚であれ! #未来のためにできること

未来のために私たちにできることは何でしょうか。21世紀に入り、気候変動や自然災害が増加し、震度5以上の地震がもはや驚くべきニュースではなくなりました。また、少子高…

私から卒業研究の提案~処方箋、そして、思いをはせて一案~

①不真面目と認定された卒研生への処方箋 卒論研究室に配属になった学生が不真面目で実験もせず勉強もしないという。本当にそうである場合もあるだろうが、本人にはやる気…

幼生転移仮説の番外編:名著に書かれた記述、そして、幻の論文の探索。

①リン・マーギュリス博士の名著に書かれ、長い間気づかなかった、共生に関する不可解な記述について リン・マーギュリス博士の名著であるSymbiosis in Cell Evolution第2…

アポトーシスがつなぐかもしれない、多細胞性と盗葉緑体

PNASの2012年1月31日号では、米国ミネソタ大学のウィリアム・C・ラトクリフらが酵母S.cerevisiaeの多細胞化現象について興味深い知見を発見している。彼等によると、雪片(s…

海生ヒドロ虫からヒドラへ、そして、ヒドラから腫瘍発生へ。

①海生ヒドロ虫の知見より、ヒドラが成立するまでの見えざる道程を考えてみて 2010年のDevelopmental Biologyの348巻p.120-129には、共生による生物進化を打ち消すような…

棘皮動物の祖先が有していた生活環に関する考察を拾い読んで

モスクワ州立大学の研究者が2022年のPaleontological Journal誌に発表した、棘皮動物の祖先の体制や形態に関する仮説の総説は、本論だけでも30ページはあり、データに基づ…

未解明、あるいは、揺らぎのある個体発生に関する、個人的な文献調査3件

①ナマコの個体発生における巨大化と小型化、および、成体の未解明な「オーリクラリア幼生」について 間接発生の発生様式をとる棘皮動物のナマコの個体発生は、卵→オーリ…

2021年に読んだ、後生動物の初期進化における幼生化現象(larvalization)の仮説の文献について

動物の発生様式の起源や最初の動物の幼生形態といった、仮説にとどまるテーマについては個人的な興味があるといえばあるので、近年見つけた情報で気になったものを適当に書…

1999年という遠い昔に修得しようとしてできなかった、多細胞体制への進化の仮説について

2000年のJOURNAL OF EXPERIMENTAL ZOOLOGY (MOL DEV EVOL) 誌288号に掲載された、Maximal Indirect Development, Set-Aside Cells, and Levels of Selectionという論題で私…

1994年に発表された論文の、動物の初期進化の模式図に心打たれて、殴り書きを残す。

30年近く前に発表された論文だが、私がこの論文を見つけたのはつい最近だった。当時オーストリアの大学に所属していた研究者が、自身の無脊椎動物の研究や当時発表されてい…

理解できるようでできない、収斂進化、そして、平行進化に関する雑記。

①高校の生物の教科書で、私の心を踊らせた「収斂進化」について 収斂進化という言葉を、高校で生物を習った人なら、副教材などで触れたかもしれない。定義については実験…

ミトコンドリアに関する幾つかの雑記(下)

①退化したミトコンドリアという細胞内小器官の存在 退化したミトコンドリアが、ある生き物の中にいて面白いのだという話を、その研究室の主任教授より聞かされたことを、…

ミトコンドリアに関する幾つかの雑記(上)

①変則的な遺伝暗号に関して https://ameblo.jp/mitakushigeki49/entry-12676434016.html 上記の敬愛するブログを読んだ。コドン表には生物を構成するアミノ酸に対応する…

北極・南極に生息する細菌・ファージ・魚類に関する雑記。

①北極の海氷と融解水の池で単離された好冷菌とバクテリオファージ 2006年のThermophilesに掲載された、北極で見つかった好冷菌とバクテリオファージについてである。 グ…

様々な個体発生の変態制御:共生細菌、バイオフィルムの微生物、ウイルス感染。

①共生細菌がもたらす後生動物の発生様式の変遷・雑種形成の阻害について 2021年に国際的な研究チームがPNAS誌に発表した、発生様式の異なる同属異種のウニについての報告…

謙虚であれ! #未来のためにできること

未来のために私たちにできることは何でしょうか。21世紀に入り、気候変動や自然災害が増加し、震度5以上の地震がもはや驚くべきニュースではなくなりました。また、少子高齢化による労働力不足が進む中、転職市場が賑わっていますが、転職が人生のすべてであるかのようなイメージが広まる一方、転職の失敗がもたらす経済的困難に対してはほとんどの企業が責任を持ちません。 このような背景の中で、私たちは明るい未来を迎えるために何ができるでしょうか。さまざまな意見があるでしょうが、私は「ひたすらに謙

私から卒業研究の提案~処方箋、そして、思いをはせて一案~

①不真面目と認定された卒研生への処方箋 卒論研究室に配属になった学生が不真面目で実験もせず勉強もしないという。本当にそうである場合もあるだろうが、本人にはやる気はあるが、周囲の同級生や大学院生のレベルが体力・知力ともに高く、健常者に見えないくらいに低劣とみなされることもある。私がそうだった。英文を読み訳すたびに叱責を受け、「もういい、俺がやる、お前は黙れ!!」と毎回最後にこう締めくくりを食らってきたのである。お前はなにもしなかった、なにも理解できなかった、なにもわかってはい

幼生転移仮説の番外編:名著に書かれた記述、そして、幻の論文の探索。

①リン・マーギュリス博士の名著に書かれ、長い間気づかなかった、共生に関する不可解な記述について リン・マーギュリス博士の名著であるSymbiosis in Cell Evolution第2版が1993年に世に出て、この日本語訳である「細胞の共生進化第2版」は、現在は学会出版センター(現在は倒産して存在しない)より2004年に世に出た。当初は細胞小器官や細胞分裂の起源が異なる生物の共生関係で生まれたという展開に興奮して読み込んだものだったが、今になって、ドナルド・ウィリアムソ

アポトーシスがつなぐかもしれない、多細胞性と盗葉緑体

PNASの2012年1月31日号では、米国ミネソタ大学のウィリアム・C・ラトクリフらが酵母S.cerevisiaeの多細胞化現象について興味深い知見を発見している。彼等によると、雪片(snow-flake)表現型は培養容器内の沈降時間によって様々なサイズの集合体に発展し、やがては大きくなったこの集合体が分かれて複数の小さな集合体となり、また大きくなっていくらしいのである。 実験的に多細胞化が再現されること自体、太古の昔に縦襟鞭毛虫が集合して海綿の祖先に至るまでの道のり(出所

海生ヒドロ虫からヒドラへ、そして、ヒドラから腫瘍発生へ。

①海生ヒドロ虫の知見より、ヒドラが成立するまでの見えざる道程を考えてみて 2010年のDevelopmental Biologyの348巻p.120-129には、共生による生物進化を打ち消すような論文が発表された。海生ヒドロ虫の一種Hydractinia echinataの細胞系譜解析では、全能性の腸幹細胞が表皮細胞から生殖細胞まで全ての分化を網羅しているというのだ。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0

棘皮動物の祖先が有していた生活環に関する考察を拾い読んで

モスクワ州立大学の研究者が2022年のPaleontological Journal誌に発表した、棘皮動物の祖先の体制や形態に関する仮説の総説は、本論だけでも30ページはあり、データに基づく模式図も20点にのぼる、重厚なものだった。解剖学的に細かい点まで見逃さずに相称性や分節性や器官の位置の変更について仮説を組み立てていく手腕には、言葉が見つからない斬新さを感じたが、私自身の能力と時間が限られていることもあり、彼等が空想した、棘皮動物の祖先(装甲に覆われたウミウシのような外観

未解明、あるいは、揺らぎのある個体発生に関する、個人的な文献調査3件

①ナマコの個体発生における巨大化と小型化、および、成体の未解明な「オーリクラリア幼生」について 間接発生の発生様式をとる棘皮動物のナマコの個体発生は、卵→オーリクラリア幼生→ドリオラリア幼生→ペンタクツラ幼生→稚体→成体、の順序で進行する。本川達夫博士の「ナマコガイドブック」p.24によると、前述の個体発生において、幼生段階でサイズが最大になるのはオーリクラリア幼生だというのである。 ウィリアムソン博士の著書「The Origins of Larvae」のp.122には、

2021年に読んだ、後生動物の初期進化における幼生化現象(larvalization)の仮説の文献について

動物の発生様式の起源や最初の動物の幼生形態といった、仮説にとどまるテーマについては個人的な興味があるといえばあるので、近年見つけた情報で気になったものを適当に書いておきたい。身勝手な読書記録という形である。 2019年に、Russian Journal of Developmental Biology誌では、ロシアのモスクワ州立大学無脊椎動物学研究室の研究者らが、動物の起源と進化における仮説を発表した。この仮説では、膨大な過去の文献を渉猟し、動物の起源、初期の動物の個体発生

1999年という遠い昔に修得しようとしてできなかった、多細胞体制への進化の仮説について

2000年のJOURNAL OF EXPERIMENTAL ZOOLOGY (MOL DEV EVOL) 誌288号に掲載された、Maximal Indirect Development, Set-Aside Cells, and Levels of Selectionという論題で私が書き残していた落書きを、断捨離の過程で見つけたので、掲載する。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/1097-010X(200008

1994年に発表された論文の、動物の初期進化の模式図に心打たれて、殴り書きを残す。

30年近く前に発表された論文だが、私がこの論文を見つけたのはつい最近だった。当時オーストリアの大学に所属していた研究者が、自身の無脊椎動物の研究や当時発表されていた後生動物の進化の仮説などを総合して、動物の初期の進化を想像したというものだった。無脊椎動物では小型の浮遊幼生と大型の固着生活の成体という二相の生活環があること、細胞外マトリックスの成分は原初より変わっていないということ、から、立襟鞭毛虫の群体生活から、組織間の相互作用に伴う細胞の運動などが起こり、運動・食餌・生殖な

理解できるようでできない、収斂進化、そして、平行進化に関する雑記。

①高校の生物の教科書で、私の心を踊らせた「収斂進化」について 収斂進化という言葉を、高校で生物を習った人なら、副教材などで触れたかもしれない。定義については実験医学の用語集を借りるが、異なる系統の生物が,環境要因などで同様の選択圧に曝されることにより,似かよった形態へと,それぞれ進化を遂げるような現象、ということになる。 収斂進化:バイオキーワード集|実験医学online:羊土社 www.yodosha.co.jp オーストラリアに今も生息する有袋類と他の哺乳類と比較

ミトコンドリアに関する幾つかの雑記(下)

①退化したミトコンドリアという細胞内小器官の存在 退化したミトコンドリアが、ある生き物の中にいて面白いのだという話を、その研究室の主任教授より聞かされたことを、なぜかわからないが、ふと思い出した。トリコモナスやジアルディアといった嫌気性の呼吸を営む生物の体内にのみあるという、ハイドロジェノソームおよびマイトソームという名前の細胞内小器官である。ミトコンドリアとどのように形態や代謝経路や遺伝情報が異なるのか、思いをはせた未熟な時期が、私にはあった。これらの"退化したミトコンド

ミトコンドリアに関する幾つかの雑記(上)

①変則的な遺伝暗号に関して https://ameblo.jp/mitakushigeki49/entry-12676434016.html 上記の敬愛するブログを読んだ。コドン表には生物を構成するアミノ酸に対応する遺伝暗号とアミノ酸の物性という物理的な情報の二つがあるのだ、と私なりに理解した。コドン表といえば、私の卒業研究とも僅かに重なるかもしれないが、細胞内の微小器官には、核でもないのに独自の遺伝情報・遺伝暗号をもつものがいて、核とはその遺伝暗号の規則が若干異なるよう

北極・南極に生息する細菌・ファージ・魚類に関する雑記。

①北極の海氷と融解水の池で単離された好冷菌とバクテリオファージ 2006年のThermophilesに掲載された、北極で見つかった好冷菌とバクテリオファージについてである。 グリーンランド海の東に位置するスヴァールバル諸島で、研究チームは3種類の細菌を採取した。採取場所から、細菌をそれぞれ1A、11B、21Cとした。 1Aは一カ所の同じ海氷で採取され、残る2つは各々異なる融解水の池で採取された。いずれの細菌もグラム陰性で、16sRNAの配列を用いたホモロジー検索では、1

様々な個体発生の変態制御:共生細菌、バイオフィルムの微生物、ウイルス感染。

①共生細菌がもたらす後生動物の発生様式の変遷・雑種形成の阻害について 2021年に国際的な研究チームがPNAS誌に発表した、発生様式の異なる同属異種のウニについての報告を、偶然見つけることができたことを、幸運に思う。Heliocidaris tuberculata(以下Ht)およびHeliocidaris erythrogramma(以下Hg)については、前者が小さい卵のサイズでプルテウス幼生になり摂食を行うこと、後者が大きい卵のサイズで摂食を行わない哺育型の幼生になること