【読書記録】がらんどう(大谷朝子)
「リビングで、菅沼が死んだ犬を作っている。」
──この物語の最初の一文です。
最初の一文で えっ?と惹き込まれ、
ユニークな文章の引力に引かれながら
ぐんぐん読み進めました。
「わたしは揺れる車内でやや寄り目になりながら、自分の存在を消すことに集中した。」
「わたしには蕎麦の個体差がよくわからないから、とろろ蕎麦が想像通りの味や食感であることに満足した。」
など、所々に様子のおかしい描写があり
そこが私にとっては
ずるいよなぁ〜と思うくらいに 魅力的。
読者が引っ掛かりを覚える「フック」が
計算してなのか 無意識か
地の文に沢山仕込まれているような印象を
受けました。
村田沙耶香さんや、藤野可織さんの文が
好きなわたし好み。
これまでの人生で一度も男性に恋愛感情を
抱いたことがない “わたし” と
結婚を 負ける可能性の極めて高いギャンブル
だと思っている“菅沼”の、女性2人の
シェアハウスのお話🏠
それをもとにして“わたし”や“菅沼”の
悩みや揺らぎが描かれます。
彼女たちが女性で「アラフォー」と呼ばれる
年齢であるから、「アラフォー女性ならでは」
の悩みと捉えることも出来るけれど、
アラフォーだけのものでなく
女性だけのものでもない 生きにくさと
それでも生きていかなきゃならない
一種の苦しさを感じました🕊🕊
一冊を通して、暗めの雰囲気で
希望はあんまり描かれていないけれど、
淡々とした文のおかげかスルッと読めます。
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