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【読書記録】水中の哲学者たち(永井玲衣)

「は?(驚異)マジで?(懐疑)つら(喪失)」から哲学は始まるのだ

(作中より引用)

数ページ読んで なるほど、と思いました。

この作品はInstagramで多く見かける作品で
皆さんが大絶賛していたもの。

だからこそ手に取ったし、
その分自分の中の期待値も高かったけれど
軽やかにそのハードルを飛び越えて来ました。
すごい好き。大変だ。
こんなものに出会えるから読書ってやつぁ…!

あまりにも圧倒的な解像度に自分の中の
記憶をグワっと引き出されたので、
ちょっとだけ書いておきます👇🏻

中学生か高校生のとき、ふと

「今見えているように感じる景色は、
目で見て それを脳に伝えることで
〝見えている〟と感じられている。

そうだとすると、その間でバグが起きてても
自分だけじゃ分からなくないか?
目で見えてるものって本当に見えてるの?」

と思い至り、軽くパニックになった。

あの頃からふとした時に考えてきた
「素朴な疑問」のあれこれは
今思えば〝哲学〟だったのでは?
とこの本を読んで感じました。


「哲学」って聞くと、なんだか
堅苦しいものを想像してしまうけれど、
その実態はもっと身近で 柔らかなものなんじゃないだろうか?

この作品の中では、身近な問いに焦点を当て
日常から生まれる「不思議」を
どうしてこうなのかな?と考えることも
哲学として書かれています。

「なんのために生きるの?」
「どうして人を殺しちゃいけないの?」
「働くとは?」
「神様はいるのか?」

のような、身に覚えのある問いばかりで
わかる!すごい不思議だよね〜!と共感し、
「こんな身近な問いも哲学なのか…」と
目からうろこのような気持ちになりました。


今あなたが抱えている気持ちやモヤモヤも
もしかしたら哲学的思考に触れたら
1発で解決!とは行かずとも
少し角度や深度を変えて 捉えられるかも…。

哲学に関心がある方だけでなく、
今の自分とは違った角度から見た世界を
感じたい方や、新しい考え方に触れたい方、
世界をもっとよく見たい方に
オススメの作品でした📖´-

哲学はすべてのひとに関係する。すべてのことにかかわることができる。重要でないと思われているものも、哲学対話では考えることができる。むしろ、普段は忘れられているようなものや、問われもしないようなことに耳を澄ませる。そしてまた同時に、議論の場で取るに足らないとされ、話を聞かなくてもいいとみなされているひとの話にも耳を澄ませる。

哲学対話をしていて、対話が居心地の悪い同調や、いたたまれない孤独につつまれているとき、わたしは願う。もっともっとバラバラになろう。バラバラになって、ちゃんと絶望しよう。もともと世界はいつだって、多様で、複雑で、曖昧で、不確実だ。その意味でわたしたちはみんなみじめで、みんな平等にひとりぼっちだ。

わたしたちは、お互いの話をわからないからこそ聞くことができる。わたしたちがお互いに似ていて、境遇を共有していて、双子のようであったら、わたしたちは話すことができないだろう。わからないからこそ、耳を傾けて、よく聞いて、しつこく考えることができる。無責任な共感などいらない。彼女のわからなさこそが、わたしたちにものごとを語らせる。

世界は一見まともなようで、実はかなりすっとぼけている。ひとは生まれるけど死にます、とか、地球というものがあって回転しています、とか、わたしが考えていることが誰かに完全に伝わることはありません、とか。いろんな仕方で合理化はできるかもしれないが、よくよく考えてみるとわけがわからないことばかりだ。

哲学をすることは、世界をよく見ることだ。くっきりしたり、ぼやけたり、かたちを変えたりして、少しずつ世界と関係を深めていく。揺さぶられ、混乱し、思考がもつれて、あっちへこっちへ行き来する。これは、朝に目を覚ましたときの感覚に少しだけ似ている。

(いずれも、作中より引用)

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