見出し画像

モダンカリグラフィー(またはモダンスクリプト)

最近はこんな書体が流行っています。

ここ10年ぐらいでしょうか、こういった決まった字形のないゆるくてカジュアルな書体が世界中で流行っており、モダンカリグラフィー modern calligraphy もしくはモダンスクリプト modern script と呼ばれています。今はもう「カリグラフィー」というとこの書体のことだ、と世間では思われてすらいます。

元はカッパープレート copperplate と呼ばれる書体を崩したものだと思います。カッパープレートは上級者向けの難しい書体ですが、このモダンカリグラフィーは書くだけならそこまで技術を必要とせず、むしろ若干ヘタな方が味が出ます(全体のレイアウトやデザインはやはりセンスが必要ですが)。

登場した当初は特に名前はなかったようですが、最近は便宜上モダンカリグラフィー/スクリプトと名が付いています。ただ英語の modern とは「現代の」「最近の」という意味があるので、100年後は別の名前が付いてるかもしれません。


書籍

最近はトラディショナル(伝統的)なカリグラフィーの書籍はほとんど出ていませんが、このモダンカリグラフィーのものは結構出ています。

作家(カリグラファー)

国内外に作家も多く(ほぼ女性)、文字の見た目がとてもカワイイので、ワークショップなども非常に人気があるようです。

フォント

この書体を模したフォントも多数制作されています。以下の note で大量に紹介しています。オルタネート(異体字)を持っているものが多いので、異体字切り替え機能(Adobe Illustrator 等)がないとフルに魅力を発揮できませんが、Word などでもそれなりにはなるかと思います。

ペン・書き方

ペンは通常のカッパープレート用のポインテッドニブの他、筆ペンなどが用いられています。個人的にはぺんてるの筆 touch サインペンが特に書きやすいと思います。こちらは基本的にはサインペンながら、筆ペンのように線の太さに抑揚が付けられるようになっているというスグレモノです。ペン先が短いので、線が太りすぎないのが丁度いいです。

ペン先(nib)はポインテッド(尖った)のであれば何でもいいです。漫画家が使うGペンが入手しやすいですが、Paper Tree では以下のようなものを扱っています。

オブリークホルダーはこれが便利です。ストレートホルダーと兼用になっており、また軸内にニブを1本収納できるようになっています。

▼その他のオブリークホルダーはこちらを参照

書き方は、まあ見本見て書くだけです(笑)。特殊なことは何もありません。通常はガイドラインを引いてそれに沿うように書くのですが、これはむしろ崩れてる方が味が出て面白いと思います。

左利きの人はちょっと書きづらいです。以下を参考にしてください。

🤔モダンカリグラフィーに対するモヤモヤ

従来のトラディショナルなカリグラフィーをやっている人の中には、このモダンカリグラフィーにモヤモヤを抱いている人がいます。

「なんだこの締まりのない文字は」
「何がいいんだこんなの」
「適当すぎないか」

そんな風に思って眉をひそめてます。正直に言えば、私もちょっと思わないでもないです(笑)。

ただもう、流行ってしまったのです。どんなに拙かろうと、事実とても可愛らしく、世界的に受け入れられてしまっています。これはもう変えようのない事実です。

これは、音楽の流れに似てるなぁと思います。クラシックがあり、ジャズやロックが生まれ、ポップスが生まれました。このモダンカリグラフィーは、いえば日本のポップアイドルグループみたいなものじゃないかなぁと思います。

画像2

洗練とは程遠いですが、拙さ・可愛さを売りにしてるところがアイドルとよく似てます。プレスリーやビートルズらが台頭してきた時、当時の大人たちは顔をしかめました。しかし現在、音楽界を席巻しているのはクラシックではありません。

カリグラフィーも、そうやって時代に応じて変わっていくのではないでしょうか。とはいえクラシック音楽が滅ぶことがないように、トラディショナルなカリグラフィーもずっと受け継がれていくと思います。

眉をひそめてる旧来のカリグラファーたちは、多分に嫉妬を含んでいます。自分がそうなので解りますが(笑)、「ポッと出が人気者になって儲けやがって」、という気持ちがなくもないです。が、そんなに思うなら、気持ちを切り替えてモダンカリグラフィーに取り組み、どんどん売り込んで、じゃんじゃん儲けていけばいいんじゃないでしょうか。

時流に乗るとはそういうことです。商売である以上、時にはこだわりを捨てて市場のニーズに迎合することも必要でしょう。トラディショナルで磨いた腕は、モダンカリグラフィーにおいても存分に威力を発揮すると思います。

ただおっさんである私には、とてもガーリーなこの書体を持て余しており、ちょっとこの潮流には乗れないなあと思っています(笑)。男性にはシグネチャースクリプトぐらいがカッコよくて似合うでしょうか。ちょっとがんばってみようかなぁ…。



カフェラテおごってください。