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CI・VI・BIとは - ロゴやマークのデザインの話

※本 note は、私が「デザインを依頼したい人」向けに執筆して弊サイトにて公開していた文書を、加筆修正して転載したものです。初心者向けに説明を簡略化してあるため、専門家から見るとツッコミどころもあるかと思いますが、何卒ご容赦下さい😅

CIとは

CIとはコーポレート・アイデンティティ Corporate Identity の略です。直訳すると「組織の固有性」、簡単に言えば、見れば「アレだ」と認識できるもののことです。ヒトの場合はその外見・顔で「そのヒトだ」と判断できますよね。それと同じように組織をパッと見で判断できるようにするもの、簡単に言うとシンボルマークやロゴタイプの事です(それでけではないですが、後述します)。赤地に黄色の大きな M を見れば、「あぁマクドナルドだ」と判りますよね。そういったものです。

CIはその組織を見た目で体現できているかどうかが鍵となります。ファストフード店のものは安くて親しみやすく、かつ美味しそうでなくてはならず、高級店のものは高そうで品格がなければなりません。自分ではなく、他人が見てそう思えるかどうかが重要です。

CIは作ったらそれで終わりではなく、その「使われ方」のマニュアルも作成しなくてはなりません。勝手に色を変えたり、マークとロゴの配置や比率を変えたりしては「アイデンティティ」としての意味がなくなります。ヒトはずっと同じ顔。まぁ経年変化は免れないところですし、最近は美容整形などもありますが(笑)、しょっちゅう顔が変わるようでは信用をなくすでしょう。それと同じです。徹底して同じイメージを保つようにします。普通「マンネリ化」はネガティブな言葉として使われますが、CIに関しては「マンネリ化」を目指します。「見た事あるよ」と言われるのが目標なのです。世界中どこへ行ってもマクドナルドは全部同じ看板。そういう事です(歴史的建造物近辺では景観に配慮し、色をシックなものに変える事がありますが、例外です)。

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▲筆者が制作したCIマニュアルの一例

マニュアルができたら、それに従ってCIが入るものをすべてデザインしていきます。普通の小さな会社でも、看板・名刺・封筒・領収書・見積書・段ボール・社用車・ユニフォーム・IDカード(ちなみに「ID」はIdentityの略です)などのデザインが必要になるでしょう。一番大規模なものが航空会社らしく、デザインするアイテムの総数は2万点にも上るといいます。当然莫大な金額がかかります。

なぜCIを導入するのか?

ではなぜそうまでしてCIを導入するかというと、先に挙げたように「アイデンティティを保ち、一般への認識度を高めるため」です。知名度を高めたいなら、質の良いCIを導入するのが一番手っ取り早いです。それと職員の意識を高めるため。「一つ旗のもと」という言葉があるように、一致団結を促すためでもあります。戦国武将はそういう効果を知っていたため、家紋を旗に入れて掲げておりました。まぁ戦場で仲間を識別するためと言う意味もあるのですが、それも「アイデンティティを保ち、一致団結するため」です。街中で細い青の横縞シャツを着た人を見たら、「あ、佐川急便だ」と思いますでしょう。それを着ている人も、所属が一発で判る自分が何かマズい事をすれば、会社の顔に泥を塗ってしまう事を自覚します。だからマナーを良くしようと思う。そういう効果があるんです。直接的な営業利益には直結しませんが、認知度と職員の意識が高まれば、結果利益も上がっていくのではないでしょうか。

VI・BIとは

VI とはビジュアル・アイデンティティ Visual Identity の略で、組織(corporation)以外の、例えば商品のブランドやショップなどのマークやロゴの事をいいます(機能的に CI と特に違いはないのですが、corporation ではないので VI と呼び変えています)。アパレル関係の会社はターゲットの年代ごとにブランドを作り、それぞれにロゴを使っています。オンワードの「自由区」や「23区」などのロゴがVIに当てはまります。中核を担うような商品となると、単にビジュアルのみではなく、BI(ブランド・アイデンティティ Brand Identity)とでも呼べる戦略が必要になってきます。皆さんも洋服を買う際、ロゴが入ってるか否かで選んだ事はあるでしょう。ファッション業界ではかなり重要な事がお解りになるかと思います。

CI・VI・BIを開発するという事の重要性

このように大変重要で、かつ長年にわたって使われる CI・VI・BIを、「5万で一週間以内に」とか言う依頼者が大変多いのが現状です。そんなに簡単に安価に、自社のアイデンティティを定めていいものでしょうか? あなたの、あなた方の顔になるものですよ? 我々デザイナーは、まずその話から始めなくてはならないので結構大変です。ブランディングというのは、そんなに安直にやっていいものではないし、それでは成功しません。世間には異常な格安でロゴ制作を請け負っている業者がありますが、造形的には問題なくとも、納品先の組織やブランドをきちんと体現できているのか、運用マニュアルはどうするのかという点では疑問が残ります。

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また、シンプルなロゴは作るのに大して労力がかかっていないように見えますし、実際それだけを作るのには大した苦労はいりません。例えば NTT のロゴはまぁ簡単に描けます。しかしこれができるその裏側で、大変な数の捨てられた案がある事を忘れないで下さい。実際この二重丸(ダイナミックループと名付けられています)、これに決まるまではたくさんの案がありましたし、この案で行くと決まった後には、円の大小の比率・線の太さ・青みの具合を変えてかなりの数のバリエーションを作ったそうです。その中でベストのバランスを持ったものを拾い上げて決定しています。その労力に見合う費用というのをお考えいただきたいと思います。

ロゴに既存書体は使えない?

結論から言うと、問題ありません。詳しくは「タイポグラフィについて」で述べていますので、参照して下さい。

公募で決めるのは良策ではない

自治体や半公的機関などがよくロゴやマークの公募を行なっていますが、ほとんどが残念な結果になるのが現状です。理由は、第一線級のデザイナーはまず応募しない、という事が挙げられます。オリンピックなどの大規模イベントなどには例外的に応募するかも知れませんが、日々の仕事に追われているのに、当選しなければギャラの発生しない公募になど割く時間はないのです。よって、そこそこのデザイナーかまったくの素人しか応募してこないので、優秀な案が集まる事はほとんどありません。第二に、公募側の開発意図が応募者にあまり伝わらない事も理由として挙げられます。どうしても短い文書だけになり、そこから開発意図を汲み取るのはなかなか難しいでしょう。第三に審査員の審美眼です。こういうものは少数の有識者が独断で決定すべきですが、見識のある審査員がいる事はほとんどなく、だいたい普通の人の多数決になってしまいます。そうすると、まったく特徴のない、平々凡々で無難な案に行き着くのが関の山です。数多の地方に採用されているいわゆる「ゆるキャラ」のほとんどが公募なのですが、その少々残念なクオリティを見ればよくお解りになるかと思います。一般企業はその事がよく解っているので、公募を行う事はほとんどありません。

例外的にTBSや東京ミッドタウンがロゴの公募を行った事がありますが、共に賞金が500万円と高額で、東京ミッドタウンの方は設計者の一人、世界的建築家の安藤忠雄をはじめ、一流のクリエイターを審査員に揃えてました。公募を行う場合、これぐらい気合いを入れないとダメだと思って下さい。

スペックワーク
ちなみに欧米では、こういった公募やコンペなどによって案だけをタダで作らせ、専門家のスキルを買い叩くことをスペックワーク(speculative work:投機的作業)と呼び、大変侮辱的な行為とされています。数年前にこれに関する動画がカナダで制作され、それを和訳した以下のブログが話題になりました。我々はこういうことがなくなることを心より願っています。

ロゴマーク?

正確に言うと、「ロゴマーク」という言い方は誤りです。先に挙げたNTTの例で言うと、二重丸が「シンボルマーク」、「NTT」という文字が「ロゴタイプ」となります。今は、正確ではありませんが、両方とも「ロゴ」と呼ばれる事が多いです(欧米でも logo と呼ばれています)。組み合わせとしては以下の3種があります。

1. ロゴタイプ+シンボルマーク
2. ロゴタイプのみ
3. シンボルマークのみ

通常は 1. か 2. でしょう。ソニーやパナソニックなどは 2. ですね。3. を選択する所は極めて珍しく、ナイキやマクドナルド、アップルなどごく少数です。よほど知名度に自信がないとできない芸当です。

1. の場合、ロゴタイプはシンプルなものにするのが普通です。シンボルマークがあり、かつロゴタイプも凝ったデザインにしてしまうと、大抵はバランスが取れずゴチャゴチャした感じになりがちです。2. の場合は、文字に色々装飾を施してもいいでしょう。

ロゴの語源

元々は活字活版印刷時代、活字 movable type で頻出する「The」などの単語をいちいち組むのが面倒だったので、その単語をひとつの活字に鋳込んで作って作業時間の短縮を図ることがあり、この単語を鋳込んだ活字をロゴタイプ logotype と呼んでいました。これが語源となっているようです。

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※写真は Wikimedia より

参考文献

コーポレート・アイデンティティ戦略
中西元男著
日本における CI/VI 開発の第一人者・PAOS の中西元男氏の著書。NTT の CI 開発に携わり、松屋銀座やケンウッドなどを CI を用いて立ち直らせたその手腕は素晴らしいの一言。すでに絶版なのが残念ですが、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

事例で学ぶブランディング―ランド―のデザイン戦略大公開
ランドーアソシエイツ著
数々の世界的な企業のブランディングを手掛けるランドー Landor のその手法を学べる本です。







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沖縄在住フリーランスのグラフィックデザイナー、Webフルスタックエンジニア、カリグラファー。 https://feoh.design/

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