ふみなるのnote

キリスト新聞のライター。カルト化したキリスト教会に約20年いました。吃音症がなかなかし…

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キリスト新聞のライター。カルト化したキリスト教会に約20年いました。吃音症がなかなかしんどい。映画やドラマやアニメの批評もします。

マガジン

  • 賛美を取り返したい

    教会で賛美を歌えなくなってから、また歌えるようになるまで

最近の記事

【映画評】『バッドボーイズ RIDE OR DIE』

 『バッドボーイズ RIDE OR DIE』を劇場鑑賞した。  シリーズ4作目にしてウィル・スミスの復活作。前作と直接繋がっており、マイクの息子やAMMOのメンバーが再登場する。シリーズ初となるスカイ・アクション、FPS感覚の戦闘場面、臨死体験を経てスピリチュアルに目覚めるマーカス、家族ができてパニック発作に襲われるようになったマイクなど、見所が多い。それぞれのキャラのサイドストーリーも豊富で、それでいてテンポ良く2時間にまとめられている。  前作で暗殺されたハワード警部

    • 「悪魔」に会ったことでもあるの?

       聖霊派系の教会にいるとよく「悪魔」の話を聞く。  「悪魔」は狡猾にクリスチャンを堕落させようとしてくるらしい。そして信者でない人がクリスチャンになるのを全力で阻止してくるらしい。他にもこんな言説を聞いた。  「悪魔は自分の存在を隠す」  「悪魔など存在しないと人間に思わせようとする」  「稀代の嘘つき」  「聖書の言葉を巧妙に使って罠を仕掛ける」  「悪魔の攻撃は霊的であって物理的ではない」  界隈で有名な書籍『思考という名の戦場』は、「人間の思考は常に悪魔との交戦状態

      • セクシャル・マイノリティの声を聞く

         2024年6月16日(日)、ジュンク堂池袋本店で『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシャルのこと』と『トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら』の出版記念トークイベントに参加した。充実の1時間半だった。書籍だけでは感じ取りにくい、リアルな声やニュアンスに触れることができたと思う。印象に残った点と、そこから考えたことを以下にまとめておく。 ※本稿はイベント内容を網羅したものではない。本稿内容に不適切な部分があるとしたら、その責は筆者のみに帰する。 マイノリテ

        • 【映画評】『オールド・フォックス 11歳の選択』

           試写会で『オールド・フォックス 11歳の選択』を見た。  一般庶民が株の売買に沸く1990年前後の台湾。タイライとリャオジエの父子は、そんな時流に乗ることなく慎ましい倹約と貯金で家を買おうとしていた。けれど物価上昇の煽りを受けて目標を断念せざるを得ない。そんなとき知り合った事業家のシャに「他人を思いやるな」とアドバイスされ、父と正反対の生き方に触れた11歳のリャオジエは、大いに葛藤する。彼はどちらの生き方を選ぶのか。  タイライとシャの間でリャオジエが揺れ動く構図は、天

        【映画評】『バッドボーイズ RIDE OR DIE』

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        • 賛美を取り返したい
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          【映画評】すぐ隣の「違国」 『違国日記』

           試写会で『違国日記』を見た。  同名の人気漫画の実写版。共生することになった伯母(新垣結衣)と姪(早瀬憩)の、すれ違いと歩み寄りの日々を丁寧に描く。  当然ながら30代の新垣結衣でも10代少女に戸惑ってばかりで、互いに明らかに「違国」の存在。使う言葉が微妙に違うし、互いに予想外の反応をする。少し前に話題になった50代男性と20代女性の恋愛など、これを見るとやはり現実的でないし一般的でもないと再認識する。  ひとつ気になったのは新垣結衣が裕福な人気作家で、引き取られた早

          【映画評】すぐ隣の「違国」 『違国日記』

          理想のクリスチャン家庭像に殺される

           「クリスチャンどうし導かれて祝福のうちに結婚し、子を授かり、家族で教会に仕え、こうして笑顔に満ちた幸いなクリスチャン家庭が立て上げられていくのです」  という理想が当然のように語られる割に、その「幸い」を体現する夫婦や家庭がごく稀なのがキリスト教会の現実ではないか。牧師家庭からして、元気そうに見えないケースが少なくない。  むしろ子どもが病んでしまうとか、妻が病んでしまうとか、表面的には楽しそうだけれど実はこんな深刻な問題がありましたとか、そういうクリスチャン家庭の話ば

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          『関心領域』に向けるべき関心とは

           映画『関心領域』を見た。  アウシュビッツ強制収容所の隣に住むナチス将校と家族の、一見平凡な暮らしを延々と描く。合間に聞こえる悲鳴、立ち上る煙、銃声のような音。それらが今まさに行われている虐殺のしるしだと観客は知っている。将校と家族も知っている。しかし誰も何も言わない。「すぐ隣で起きている大虐殺に全く無関心でいられる人々」を描くのが本作の肝だからだ。タイトルの『関心領域』に違和感を覚えた。『無関心領域』にすべきだったのではないか、と。  将校と家族の生活にドラマチックな

          『関心領域』に向けるべき関心とは

          教会に入ってくる海外情報の罠

           「シナイ山でノアの方舟と思われる巨大建造物が発見された!」  「まだ公開されていないが、契約の箱がイスラエル某所で発見され、研究されている!」  「板門店(北朝鮮と韓国の軍事境界線)付近で和解の祈りが捧げられ、政府関係者の動きが変わった。国境が開く日は近い!」  それらの情報に私たちの教会は歓喜した。方舟発見は聖書の記述が正しいことを意味するし、祈りによって朝鮮半島が統一されれば「神の国」の実現に一歩近づく。さて、契約の箱には何が入っているのだろうか?  海外の宣教師が

          教会に入ってくる海外情報の罠

          「どっちもどっち」じゃない

           信徒が牧師から受けたハラスメントを告発するようになって久しい。被害者ははるか昔からいたはずだが、SNSの発達がそれを一気に可視化させたと思う。それまで声を上げられなかった被害者たちが語り始めている。「宗教2世問題」もその文脈で登場した言葉だ。  そしてここ最近、逆に牧師が信徒から受けたハラスメントを告発するケースも増えている。牧師が被害を受けた話は私も以前から聞いている。確かに教会で起こるハラスメントは、牧師から信徒へ一方通行で行われるものではない。  聖霊派や福音派が

          「どっちもどっち」じゃない

          「牧会が大変で……」と嘆く牧師に耐えられない

           「牧会が大変で……」と嘆く牧師に違和感がある。  いわゆる「扱いづらい信徒」や、「問題ばかり起こす信徒」がいるのは分かる。実際苦労しているのだろう。その感情は否定しない。  けれどその「大変で、」の中身は、例えば「婚前交渉しても良いと考える若者を説得するのが大変で、」とか、「疑問や批判ばかり訴えてくる信徒に答えるのに苦労してて、」とかだったりする。どこが大変なのですか? と正直思う。他人の考えや価値観を一方的に変えようとするあなたこそ、相手を困らせているのではありません

          「牧会が大変で……」と嘆く牧師に耐えられない

          『失われた週末』で失われたのは

          『ジョン・レノン 失われた週末』を映画美学校で試写した。  ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた約18ヶ月間の、「失われた週末」と呼ばれる時期に焦点を当てたドキュメンタリー。ジョンの個人秘書兼ヨーコ公認の恋人だったメイ・パンが、「私の物語」として語る。  本作はポール・マッカートニーとの再会や息子ジュリアンとの再会、ソロ活動の様子など、この時期のジョンを知る上で貴重なエピソードが溢れている。まさに「失われた」ものがよみがえった形で、ビートルズのファンなら大いに見る価

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          『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていい

           キアヌ・リーブス主演の大人気シリーズ『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていいと思う。ネタバレすると4作目でジョンが亡くなるので、物理的には終わっている。続編は作れない。けれど制作側がその気になれば「実は生きていた」ことにできるし、5作目が公開されれば既成事実になる。そうなれば誰も文句は言えない(もっともファンの多くは続編を歓迎すると思うけれど)。実際、続編の企画が始動していると聞く。  私は本シリーズを全部見たし全部好きだ。1作目は控え目だったけれど、2作目(『チャプタ

          『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていい

          ルッキズムの何が問題なのか

           最近よく耳にする「ルッキズム(いわゆる外見至上主義)」は、誤解されたまま使われている傾向があると思う。  この概念の影響で各種ミスコンが廃止になったことから、「美醜を競うのはNG=美しさにこだわってはいけない」と取る人が少なくない。それは部分的に正しい。けれど個々人が「綺麗でいたい(綺麗の基準は様々)」と願って実行するのを止めるものではない。  ルッキズムが問題になるのは、例えば採用面接で明らかな「容姿採用」がまかり通るような事態。以前、某派遣会社が登録者本人に伏せたま

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          『オッペンハイマー』映画評

           3月29日(金)公開の『オッペンハイマー』を試写し、キリスト新聞に映画評を寄稿した。下記リンクから全文読めるので紹介したい。  残念ながら本作にも原爆軽視の傾向がある。広島と長崎の被害を描写しなかったのもそれだ(詳しくは記事を読んでいただきたい)。PRの段階で、同時期に公開された『バービー』とのコラボ(「バーベンハイマー」)がミーム化したのも恐るべき事態だった。欧米の人々に少なからず原爆軽視の風潮があると思われるからだ。  アメリカに住んだ経験のある人に聞いたら、ドッジ

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          障害、障がい、障碍……?

          障害の社会モデル化  障害を「障害」と書くか「障がい」と書くか「障碍」と書くかについては、様々な意見と立場がある。私個人は「障害」と書くべきだと考えている。なぜなら障害は「社会モデル」で考えるべきで、かつ現にこの社会に様々な「障害」が発生しているからだ。「害」の字を使わないと、その深刻さやダメージがうまく伝わらなくなってしまう。  社会モデルにおいて、障害とそれにまつわる困り事は、障害者本人の責任でなく、そういうふうに構築された(健常者専用に設計された)社会の責任だと考え

          障害、障がい、障碍……?

          同性愛指向をめぐる「サイドB」への違和感

          ※書評ではありません。  いのちのことば社から、いわゆる「サイドB」を標榜する書籍『罪洗われ、待ち望む 神に忠実でありたいと願うゲイ・クリスチャン 心の旅』(ウェスレー・ヒル 著)が刊行された。原著は十数年前に刊行されている。なぜ今翻訳されたのだろうか。日本におけるNBUSの動きや、それに対する反発、そして「第三極」として現れた「ドリームパーティ」との絡みを考えてしまう。  「サイドB」は同性愛指向をめぐる「問題」の、一つの解答として紹介されている。  (ただしここでいう

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