【映画評】飛行機の中でサメに襲われる 『エア・ロック 海底緊急避難所』
飛行機の中でサメに襲われる映画を試写した。
『エア・ロック 海底緊急避難所』だ。
メキシコに向かうイギリスの飛行機がバードストライクに遭って墜落し、海底に沈む。幸いコクピット側が前傾したため、尾翼側に空気が溜まってエア・ロック状態になる。生存者は7人。酸素が持つ数時間の内に救助が来るだろう、と一時は楽観するものの、機体の亀裂からサメが侵入し、決死の脱出を余儀なくされる。
91分と短尺なためコンパクトにまとまっている。サバイバルものにありがちな人間どうしの裏切りや、自分だけ助かろうとする自己中ムーブがない。むしろ皆で助け合い、「こいつ死ぬだろうな」と思わせるレイシストは反省し、誰もが他者を思いやる心を忘れない。人間関係がドロドロしないパニック映画は珍しいかもしれない。
上手いのは、頼りになる人物が早々に退場する点だ。だから知識も経験も少ない若者たちが中心になって、失敗できない選択を幾つも選ばなければならなくなる。その点は青春映画っぽい。
パニック映画の特徴は生存者が次々と死んでいく点だ。本作も例に漏れない。思うに「生き残りやすいキャラ」と「死にやすいキャラ」の定番がある。前者は例えば聡明な女性や子どもや動物。後者はクズや自己中、隠れてセックスする2人、過度の臆病、頼れる大人、非の打ちどころのない正義漢、などなど。本作がそれに倣うかどうか、ぜひ鑑賞して確かめてほしい。
もちろんサメ自身は襲う相手を選ばない。これから食べる人間の肌の色や階級や性格など気にしない。しかし物語である以上、サメを操るクリエイターが、誰が死んで誰が生きるか決めている。そこには何かしらの色眼鏡や偏見が働いている可能性はある。なぜこのキャラは死んだのか。なぜこのキャラは生きたのか。そういった視点でパニック映画を見るのも面白いかもしれない。
もう一つ、本作で初めて知ったのが「サメは○○に弱い」という豆知識だ。本当かどうかは分からない。それを試すような事態にならないことを切に願う。
『エア・ロック 海底緊急避難所』は8月16日(金)公開。
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