ラノベの専門学校に通っていた

 これから大学に入ろうというこのタイミングで、3年間過ごした専門学校の思い出を振り返ろう(紹介しよう)と思います。3年と言っても、2年生の6月からドロップアウトしたので、実質1年半しか通っていないんですけど。
 もしこれからエンタメ系・クリエイター養成系の専門学校に進む方へ、特にラノベ作家やゲームのシナリオライターになりたい読者の方への、一つの参考にしてもらえれば嬉しいです。

ノベル学科

 私は実家が千葉で、東京の東側なら通学できるような距離だったので、学校選びはとても簡単でした。というより、逆にクリエイター養成系の専門学校は東京や大阪など、大都市にしかありません。なので、新潟や群馬から下宿して通学している人もいれば、中国や台湾など(主にアジア)の留学生も結構いました。
 イラストレーター学科、ゲームプランナー学科、3Dデザイン学科と並んでノベル・シナリオ学科があり、その専門学校は珍しく3年制を採用していました。3年制と言っても、取れる資格は他の2年制と同じ専門士です(私の次の代から4年制になって、大卒と同じ高度専門士が取れるようになったらしい)
 通称ノベル学科の1学年は、最初は25人くらいで、他学科から移籍してきたり、ドロップアウトしたりして、私の代でマトモに卒業したのは20人いたのかな……という感じです。
 ちょっと説教臭くなりますが、もし”小説家になりたい”とか”漫画原作者になりたい”とか考えている人がいたら、ラノベの専門学校に入るのは絶対にやめた方がいいです。
 まず、学費が高すぎます。私が通ってたラノベ学科は、別に大きな実験や実習がある訳でもないのに、1年間で150万円も学費を取られます。3年間で450万、そんなら適当な私文の方が安いまでもあるので、モラトリアムが長いのに加えても絶対にそっちの方がいいです。
 次に、大したことは学びません。テストもほぼありませんし、それ故に覚えなくても後々困らないモノはボロボロと記憶からこぼれ落ちていきます。
 私が専門で学んだことはほぼ皆無に等しく、唯一あるとしたら”取材”の授業で、自分の興味のある有名人や”箱モノ”と呼ばれる博物館や動物園に取材に行き、新聞記事風にレポートにまとめる授業でした。
 そこで普通は、いつも取材を受け入れてくれるお得意先の場所に行くのですが、「どうせ行くなら自分の興味のある方面で」と思ったので、私は鴨川シ―ワールドに行って、生態系保全部門の方に取材しに行きました。
 まあ、私はコミュ症なんで最初は緊張して吃りまくっていたのですが、講師のオバチャンが先方に対してグイグイ行っているのを見て、「営業の図々しさ」を学んだような気がして、一番印象に残っています。
 ただ、この授業は生徒の多くが「面倒」だと認識する類のモノです。かといって、本人がこの経験を生かそうとしなければ、一生使いません。
 
 ここからは持論で申し訳ないのですが、私は小説なんて書く人間は「本当は脳内のアニメを具現化したいんだけど、絵が描けないから文章で妥協する怠け者」或いは「文章でしか自分の欲求を満たせない可哀想なやつ」だと考えています。 
 実際、ラノベの専門に進学するような奴は大半が前者です。
 絵が描けなけりゃ練習すればいい。大学に行く頭がなければ、努力して勉強して大学に受かればいいのです。文章を書くことは、数ある創作の中で最も手軽で簡単な手段ですが、最も道のりが険しく、苦しく、時間と、金と、精神を削る重い手段です。
 大体、自分の夢の為に遠回りを我慢できなければ、夢を叶える為の試練や苦しみにも耐えられる訳がないのです。
 世の中では「夢を叶える」「自分の好きを仕事にする」という甘い文句を謳う広告なんていくらでもありますが、まあ分かりやすく全て詐欺です。
 また、その業界に入った後、太字のような言葉で言いくるめられて偉い大人に搾取されるだけです。 
 後者の「文章でしか自分の欲求を満たせないやつ」という貶し文句でピキる人も、作家には向いていないと思います。私からすると、捉え様では褒め言葉だとも思えますが、もし執筆活動以外で欲求を満たしてくれる別の一面や活動があるのなら、そっちの方に専念した方がいいです。
 私は、執筆活動は少なからず自己陶酔があるモノだと考えていて、”文章を書く”という最も無駄な活動をする理由を、自分の考え方で「恥ずかしさ」「後ろめたさ」をはね退けて誇れるぐらいの哲学を持たなければ手を出してはいけないと勝手に思っています。 
「自分は当たり前に受け入れてもらえる」と、社会で一定の成功を収めたいい大人で急に小説を書き始める人がいますが(私の父親)(キッツイ)そういう人に限って、思考のアクロバットに誘った途端にキレ散らかして、ありもしない自己陶酔の夢の中にひきこもるモノです。
 もし、私が「小説家になりたい」と相談を受けたら、「なら、二番目に好きなモノを極めながら目指せ」と言います。ありがちなアドバイスで「働きながら挑戦すれば?」という文句があって、それに近いように感じますが、私自身安易にそんなアドバイスをされてピキった過去があるので、もう少し詳細に説明します。
 まあ想像がつくように、もし小説家になれなくても、二番目に好きなモノを極めれば、そっちの方で食っていけるかもしれないからです。私の考えではあくまで「ワンチャンあるよ」というスタンスで、「食いっぱぐれない為に、やりたくない事もやれ」と言うつもりはありません。
 ただ、出来るだけ金になる、社会に通用するモノの方が安心だとは思います。ただ、なるべく創作などギャンブル性や効率が悪いモノ、特に”小説だけ”というのはやめた方がいいと思います。
 そして、先程の「努力」の話にも通じますが、二番目に好きなモノを極められるだけ努力出来るなら、一番好きな執筆活動にも同じだけ努力が出来る証明でもあるし、たとえ執筆活動が実を結ばなくても、二番目に好きなモノを極めた経験は決して無駄にはならないです。なんなら、その二番目が良い小説のネタや、作家としての強みにもなります。
 小説に限らず、創作全般に言えることかもしれませんが、発想やアイデアが一番大事だと思われがちですが、結局は如何にインプットをして、膨大な積み木の山から欲しいモノを取り出して、さらに切ったり磨いたりしたモノを、美しく組み立てるかだと思います。
 資料集めの大前提として、様々な知識と社会経験を積んだ方が良いのは明確で、その機会に恵まれるのも勿論大学の方が多いと思います。
 専門の講師や業界のお偉方が「ゲームやアニメが好きでこの仕事を選んだ人は、意外と仕事が出来ない、つまらない人間が多い」と言っているのを聞いた事があり、”好きを仕事にする”エンタメ業界こそ、エンタメとは関係ない属性を取り入れる多様性が求められているらしいです。
 また、これは本当に私個人の思想なのですが、創作やエンタメのネタにするにしても、コンテンツに対して誠実に向き合う、リスペクトを持って扱う為に、生半可な気持ちでつまんで金にするのは、それを本業にしている方々に失礼ですし、あまりにも無責任だと思います。
 専門の知人には、資料調べもせず、取材もせず、性同一障害の人のラブコメを書こうとしている奴がいたり、ミリタリー・戦争モノを書いていた奴もいました。
 いや、世の中の多くのラノベ作家などは、これが当たり前で、自分の経験からではアイデアが賄いきれないのかもしれませんが、生態系保全や自然教育活動に参加していた私は、フィールドワークを疎かにすることを認められませんでした。
 現に私の話で、ラノベ学科から系列校の生物系学科に転学することも、なんなら今流行のホ〇サピやらお〇ち〇んゆーみたいなYoutuberになることも可能でしたが、前の記事の努力コンプレックスもありながら、やはり大学で学び、研究を通して”自然”や”生き物”に対して誠実でありたいと考えたから、わざわざ大学受験をしたのです。
 では、そこらの野食・採集系Youtuberや環境系エンターテイナーは誠実ではないのかと言えば、私はそうだと考えます。確かに、彼らは自然や生き物やネットリテラシーに対して、よく調べたり、専門家にもコンタクトを取ったりして、非常に気を使って活動してますが……。
 私は、エンタメにはどうしても「金にする為にコンテンツを探す」意識がついて廻り、自然や生き物の存在が”人間都合の世界”に引っ張りだされている、利用されているように感じるのです。
 かなり過激な物言いになりますが、どんなに気をつけていても、「金にする為に」という人間都合で物事を扱う限り、Yotuberも開発業者も同じようなモノだと考えています。
 確かに、彼らの動画は面白いですが、諸手をあげて歓迎する気は起きないので、自分は”消極的アンチ”だと思っています。
 まあ、話は脱線しましたが、エンタメにも、創作にも、それなりの覚悟と誠実さが必要だと、それが倫理でもあると私は考えるのです。

学校生活

 話を本筋に戻しまして、クラスの様子や雰囲気を振り返ります。
 男女比は半々で、ド派手な陽キャはいません。みんな、中学高校サブカルオタク陰キャをやってたような連中ですが、髪を派手な色に染めている奴が何人かいます。男で長髪を後ろに束ねているやつもいます(ジェンダー差別とかそういうのじゃなくて、別に顔が良い訳じゃなく特別な理由もないのに男のそれも陰キャオタクが髪伸ばしているのは個人的にキショと思う。そんで、学年に1人は絶対いる)
 変な奴……はいません。いや、ラノベの専門に入る時点で変ではあるのですが、話が通じないレベルのキ〇〇〇はいません。みんな普通です。ただ、話題がアニメかラノベしかない、娯楽しかない、なるべく脳みそでカロリーを使いたくない集まりです。
 私は専門で5~6人ぐらい男の友達が出来て、彼らをDiscordに誘っていつもつるんでいましたが、高校時代の友達と比べて明らかに話せるジャンルが少なく、話題のレベルを落として喋っている意識がありました。
 そして、突出して小説の才能がある人もいませんでした。まず、才能があったら専門なんかに来ていません。
 私も小説(文章)の才能はありません。形式だけ物語の一方的なお気持ち表明しかできず、情景を鮮明に思い起こさせる耽美な表現や比喩が特に苦手で、端的に直接的見たままの描写と、皮肉にまみれた文体で読者を不愉快な気分にさせることだけが得意です。まあ、最初からそんな文章が評価される訳がない事は分かっていて、そんならまだ健気に読者のチンチンに奉仕している彼らの方が偉いです。
 年に一度、学内で小説のコンテストがあるのですが、5万字以上の中長編小説を仕上げてくるのは、学年20人のうち半分くらいで、マトモな出来は5人いればいい方です。一応、校内順位が出るのですが、下半分は読むのが苦痛なくらいで、上位も読んでいて毒にも薬にもならない、元々ラノベが好きではない私の偏見もありますが、少なくとも「さて、頑張って楽しみましょうか!」という親切心を持って読み続けた挙句、後に何も残らない作品を読もうとは思えなかったです。
 ボロクソ言う私も、1年生の時にコンテストに作品を提出したのですが、一応学年では一番高い評価をもらって、学内では上級生を押しのけて4位でした。しかし、上級生や同級生の作品を三年間読んでも、成長とかクオリティの差がよく分かりませんでした。
 学内コンテストの上位10名はそれぞれの講師から講評がもらえて、全国の系列校も含めたコンテストに出されるのですが、その年の最優秀賞は学内コンテストで私の次に評価が良かった同級生でした。
 これは負け惜しみでは絶対になく、確かに自分の作品に大きな粗があった事は認めるのですが、学内コンで4位で上にくだらない上級生の作品が鎮座していたり、評価が一つ下の同級生が受賞して、私の作品がかすりもしなかった辺り、やはりコンプライアンス的に弾かれたのだろうなと思いました。
 そりゃあ、作者の境遇に近い人間が、無敵の人になって最終的に小学校の運動会を襲撃する話を高く評価してしまったら、学校の看板に傷がつくのは避けられませんし、過激な内容は一種の反則技みたいなモノで、地道に読者の期待に応えようと頑張っている作品を優先するのは当たり前です。
 どうせ学内コンで賞をもらっても、将来が約束される訳でもないので何でもよかったのですが(←すっぱいぶどう)
 一つ心残りがあるなら、2年,3年生は進級(卒業)制作に参加できなかったことでしょうか。
 同人誌ではなく、ちゃんとした製本作業を通して、自分の作品の本を作らせてもらえる課題があるのですが、やっぱ自分の作品を本にするのってどのような形であれ作家の夢じゃないっすか。
 人によっては、同じ学校のイラストレーター科の生徒に依頼して、表紙を描いてもらったり、最近ではAI生成で横着している人もいました。
 個人的に、AIイラスト自体はまあ「魂がこもっていない!」と思うぐらいですが、ラノベ作家がAI生成に頼るのはもうプライドが無いんかなと思います。

講師について

 ノベル学科の講師は、現役の作家が多かったです。
 ただ、素人に名前を言っても絶対に知らない、本当にクリエイター界隈という広い世界の片隅で名が売れている程度の人や、アニメやゲームの企画の裏方と呼ばれる人たちです。決して、質が悪いとは言いませんし、腕や頭は確かなんだろうなあという感想です。
 ただ、講師たちは少なからず「生徒を騙して稼いでいる」自覚があるのではないかと、私は思っていまして、授業態度や口ぶりから何となくそんな雰囲気を感じます(私の邪推が過ぎるかもしれない) 
 謂わば、専門学校にとって生徒は学費というお金を払ってくれる”お客さん”なので、怠惰な学生を叱ったり、講師も高いレベルを生徒に要求せず、無理に鍛えようとしないのです。
 そんな講師の雰囲気は、この動画を観れば何となく伝わるかもしれません(私の専門はここまでひどくはなかったですが)

 あと、やはり講師の先生方は大学出身が多かったです。
 文学賞を受賞して作家になった方もいれば、”小説家になろう”で高く評価されて出版を経験し、本業の傍ら副業で専門の講師をしている方もいました。
 余談ですが、某なろう出身の講師は、SAOの作者やゼロ魔の作者と友達で飲みに行った事があるらしく、その繋がりは2ちゃんねるの絵描き板だと言っていました。
 どうやら、あの時代(2000年前後)のクリエイター界隈は、2ちゃんやお絵描き掲示板で交友関係を深め、その後に成功を収めた人が多いみたいです(ゼロ魔の作者が早死にした理由と、ハーマイオニーが好きだったみたいな話を何度も聞いた) 
 あと、守秘義務で何の作品に参加したか言ってはいけない(ぼかしながら教えてくれたりする)講師もいたので、クリエイターになっても名前が残らない仕事も沢山あるみたいなので、これから志望する人はあんま夢を見ない方がいいかもしれませんね。

就職について

 最近、マトモに卒業する連中と飲み会へ行って、同級生の就職先を訊いてきました。
 まず、私が通っていた頃の講師の話も含めてしますと、ラノベの専門は”就職”は出来ます。ラノベ作家になれた奴は誰もいないらしいですが。
 一応、就職のメインはゲーム会社で、「この授業を真面目に頑張れば、初任給20万を超えるゲーム会社に就職できる。それから20代のうちに月収30万を目指せ」と豪語していた先生もいました。
 ですが、話を聞く限り、ゲーム会社に就職する奴は20人のうち5人いないらしく、ほとんどが普通に事務職やら、工場勤務やら、全然専門と関係ない職に就くらしいです。
 個人的には、皆大作家になるつもりで専門入ったんじゃねえのかよと思ったのですが。年一の学内コンですら頑張れない連中なので、所詮エンタメにかける覚悟と情熱もその程度のモノみたいです。
 そして、これはノベル学科に限ったことではないのですが、専門を卒業した後にVtuberになった奴も結構いますし、ここ数年で急激に膨張したVtuber業界の裏方として就職した奴もいました(無名事務所で初任給26万だってすごいわね)
 また、ゲーム会社と言っても、下請けの下請けだったりするので、実際のランクとしてはどうかわかりませんが、大体ポートフォリオを提出して面接を一回するだけで合否が出るらしいので、そこらの大学生よりは各段に就活は楽そうです。
 私も現役なら、春から大学4年の歳なので、同級生の就活事情を見聞きしてはいますが、大学生の就活はあまりにも大変になりすぎだと思います。本当に働きたくない……。私が如何に働きたくないかは、また今度語ろうと思います。

小説家を目指すにあたって

「ドロップアウトした奴が何を偉そうに」と思われるかもしれませんが、今まで散々偉そうに語ってきて本当に今さらですけども。
 先程も申し上げた通り、もし小説家になりたかったら、二番目に好きなモノを極めてください。
 私の話で恐縮ですが、私は専門に通っている間に、環境保全活動に携わって、高いモチベーションを持って進路を変えることが出来ました。生物系以外にも趣味はありましたが、作家を志していた時は「”生物系”もわかる作家」というアイデンティティを持ち、生物屋を志している今は「”創作”もわかる生物屋」としてアイデンティティを持てています。
 また、私は作家の夢を諦めた訳ではなく、自分の一番と二番が入れ替わっただけで、今この文章を書いているように、一番の環境保全の活動と同じくらい熱量を持って精進している最中です。
 まあ、私の場合は専門に入った頃から既に真っ当な「作家になりたい」願望はなく、文章をただ自分の気持ちを伝える手段として割り切って考えていたので、今年中にけじめをつけたら、小説を書くのを辞めようと思っています。
 もし、この話を読んでもまだラノベの専門に入りたいと言うなら、私は時間を用意して何時間でも何日でも滾々と「やめとけ」と説得します。作品を持ってきてくれたら、全て読んで無料で添削とダメ出しをして、そんで「ラノベなんか書くな」と言います。すんげえ面倒くさくて嫌な奴だと思われるかもしれませんが、恐らくあなたの行く専門には、これほど熱量を持って接してくれる大人はいないと思います。
 
 最後に、改めてこの記事を読み返すと「過激なこと言ってんなあ」と思って怖くなってきたので、情けなく言い訳の言葉を置いて締めたいと思います。

 これらの文章は、全て著者の独断と偏見によるモノで、現実の団体や人物には一切関係がありません。
 読者の皆様方は、これらを真実だと鵜呑みにせず、一資料として捉えて、信じるか否定するかはご自身の責任で判断してください。 
 
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
 


 
 
 
 




   

 
 
 
 
  
   
 


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