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家庭洋裁の不都合な真実から「ごみゼロ」を目指すゼロウェイストなお裁縫の可能性を考えた

ごみを出さないという意味の、ゼロウェイストな洋裁の手順書に沿って、こんなスカートを作りました。アシンメトリーなバルーンのちょっと面白い形で、鮮やかなグリーンのダブルガーゼで作ったから、これからの季節、休日のお洋服としてはこれもありですかね?なんでこんなのを作ったのかの背景を、写真の下につらつら書きます。

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家庭洋裁の不都合な真実

自分で自分の服を作ることが、サイズ感や自尊心などの個人の課題だけでなく、社会課題の解決につながると言えたらいいのに、と考えたことがありました。アパレルの大量生産大量廃棄問題の解決であるとか、少数民族の奴隷労働問題とか。自分サイズで自分の服を作って、大切に着ることが1つの解決策になればいいのに、と。

しかし、そう言い切るには、もやもやと引っかかることが、ありました。言葉にしてみると、それは大体、こんな感じです。

・ 実は、自分で服を作れるようになると、面白くてたくさん服を作りすぎてしまう
・ たまに型紙屋さんのパターンがよくなかったり、フィットせず似合わず着ない服ができてしまう
・ 自分でも、色々と実験したく、技術が追いつかないことも相まり、変なものを結構作ってしまう
・ 気になった生地もたくさん買いすぎて在庫を抱えてしまう
・ そして何より、生地の切れ端、端切れがたくさん出てしまう

着物のように、生地を切り刻むことはミニマムにして、端切れを出さず、もし気に食わなかったり、飽きたりしても、また縫い直せるようにできれば。。。と、考えていて出会ったのが、ごみゼロを目指す、ゼロウェイスト(zero waste)型紙の世界です。

ゼロ・ウェイストなお裁縫の世界

基本的には、ほとんど端切れの出ない洋裁のパターンや手順書が、ゼロウェイスト何々として売られています。インスタでも時々、ゼロウェイストな〇〇を作ったよ、という投稿が流れてきます。ゼロウェイストな型紙に特化した、独立系洋裁型紙屋さんもいくつかあるし、専門的に研究して書籍まで出している人もいるようです。自分の備忘がわりに、いくつか気になっているところを順不同で集めてみました。

今回のClair Skirtの手順書の著者 Liz Haywoodさん Zero Waste Sewing という本も出されています。

Cris Wood Sews  初心者向きな感じ

Holly McQuillan ゼロウェイストなファッションの研究者にみたい。同じ著者のプロジェクトがモードな感じもして素敵

Holly McQuillanさんの5年くらい前のプロジェクト ゼロウェイストな無料のPDF型紙がいくつも配布されています。ここのWrap Dressは作ってみたい。

Elbe TextilesというところのMaynard Dressもたまにインスタで見かけます。

こちらのGather Dressやコートはちょっと作ってみたい。

(番外編)そもそも森南海子さんの手縫いの本やリフォームの本がゼロウェイストお裁縫の先駆けかもしれない。

今回のゼロ・ウェイスト型紙の特徴

今回のスカートはEtsyで販売されていたClair Skirtという名前の説明書で、つくりました。型紙はなく、説明書の通り、布を測って直接切っていくだけ。裾とウエストを丸くくり抜いた生地をズラしてつなぎあわせて、アシンメトリーなシルエットを作っています。ウエストを丸くくり抜いたらそれがポケット布になる仕掛けの他、自分サイズのウエストで作れ、ジッパーまで付いている、という思ったより凝った作り。

140cmのW幅の生地を想定されている説明だったのに、手元にあるのは104cm幅のダブルガーゼだったので、出来上がりが同じ形になるよう、切り方を考え、布を継いで作りました。

ゼロ・ウェイストなお裁縫でも残るもやもや

しかし、ゼロウェイストな型紙にしたら私が感じていた家庭洋裁の不都合な真実を何もかも解決というかというと、そんなことはない気がします。そもそも、着物や古来からの世界の伝統衣装は、貴重な生地を少しでも無駄にしないようにとゼロウェイストなデザインが主流でした。そこから、一人一人の身体にフィットしてより綺麗に見せる洋服を作るべく、身体のカーブに合わせて布を切るようになり、端切れが出るようになったのでした。

つまり、ゼロウェイストな型紙は現代的な型紙で作られた服が一度は解決した問題を、あえて解決しないことでゼロ・ウェイストを実現している、ことがあるように感じます。

今回のスカートに関しては、同じ用尺なら、Merchant & MillsのWorkbookに載っていたソルトマーシュというスカートのほうが好みだなあ、と感じたりしました。

また、手順書やパターンによっては、ちょっと無理してゼロウェイストにしている部分があったりもします。今回のClair Skirt、実は裾を切り抜いたりして余った生地で作れるバッグと帽子の作り方も説明書に入っていました。バッグと帽子を作って初めて本当に端切れゼロになるのですね。しかし緑色のバッグや帽子はさすがにいらない気がする、と思って作りませんでした。このスカートには、白いトップスとカゴバッグを合わせたいでしょう。被るなら、麦わら帽子な気がします。

ゼロウェイストをどう取り入れていくか

ゼロウェイストな型紙や手順書は、面白くて知的好奇心をそそられるので、ついつい作りたくなります。しかし、体型の悩みなどを解決してくれる保証はありません。これで、作ったけど着ない、となると本末転倒です。ゼロウェイストな型紙で作るときは、あえて鮮やかな色のリネンやダブルガーゼなどで、SDGs的な主張のあるお洒落として休日に着ると決めて、作っていこうかな、と思います。

一方で、ゼロウェイストにこだわらず作りやすくてスタイルよく見える型紙を、また探索していくのだと思います。

ハイゲージな布帛に対抗できる表面感のニットのホールガーメントを作れる家庭用編機があれば全部解決なんでは、と思ったりもします。

ただ、今回、あ、普段から布を継いでもいいんだ、もっと服に継ぎ目が入っていてもいいのでは、と感じられたのは収穫です。ゼロウェイストじゃないパターンの服を作るときも、どうすればもっと少ない生地で作れるか、考えたいと思います。ではまた。


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