荒んだ心を癒してくれたのはポケモンだった話
心が荒んでいた。1月中旬、涙目になりながら2月に会おうと楽しみにしていた友人たちに「今回は延期します」というメッセージを飛ばした。やっと会えると思ったのに……!どんなにPCの画面越しで会話を重ねても実際に会えることはこの上なく嬉しいからだ。「実際にお会いしましょうね……!」何度、この言葉をこぼしただろうか。それほどまでに楽しみにしていた。
それだけではなかった。
「ふみーの撮った写真の雰囲気良いよね」
昨年末、Facebookメッセンジャーの通知音が鳴った。戦友である港区のワルキューレからだった。何年か前、共通のコミュニティにで意気投合をして、今でもふとしたタイミングで近況報告をするほどだった。今でも『価値の提供』を意識しながら、物事に取り組む姿勢は彼女から学んだ。
だからこそ、個人的にやっている写真の感想をもらったとき嬉しくなり、すぐさま東京に行く予定をつくった。彼女が今まで生きてきた中で、自分史上最高の写真を撮影して喜んで欲しかったから。
しかし、状況は日に日に変わっていくのだった。例のウイルスの影響で感染者数が増えていく。ニュースを見るたびにやるせない気持ちが積み重なっていった。
それだけではなく、昨年10月から転職活動をしているのだが思うようにいかず、最近では書類選考すら通らなくなったのもあった。
「もういっそ、リフレッシュするか……」今、気合いを入れ直してもうまくいかないように感じた。
Twitterのタイムラインを覗いてみると、「Pokémon LEGENDS アルセウス」というゲームが発売されるとのことで、「そういえば、昔ポケモンをやってたなぁ」と思いながら、外出が難しい時期になるだろうと思い、自宅でポケモンを買って楽しむか。とつぶやいていたのだった。
小学生の頃、ポケモンが大ブレイクした世代であったため、新シリーズが出るたびに購入して遊んでいた。ただ大人になるにつれて、ゲーム以外のものに興味が移り、20代前半に全てのゲーム機を古本市場に持っていきゲームから卒業したのだった。売ったお金は洋服やバックパックに変わったのだった。
あれから、10年の月日が経つ。
日曜日の昼下がり、ヨドバシカメラ梅田店にいた。ニンテンドーSwitch、ニンテンドーSwitch有機EL版の2つを見比べながら、首を傾げどちらにしようか悩んでいた。
幼い頃は、ゲームがある!これにしよう!と即断即決できたのに歳を重ねると目の前で一度、必要なものなのだろうか?と考えていた。その場に10分近くいたのだから、相当迷っていたのだろう。
「これにしよう!」と決めたのはニンテンドーSwitchだった。お目当てのポケモンはあったのだが、そちらは前もってAmazonで注文をしていたので、ゲーム機だけの購入となった。
取り外しのできるコントローラー、HDMIケーブルを繋げばTVでもゲームが楽しめる。屋外でも屋内でも楽しめるゲーム機になっていたのだ。10年もの間にすごい進化をしていた。驚いたのはZボタンの位置である。ニンテンドー64をやっていた人ならわかるかもしれないが、3Dスティックの付いたコントローラーの裏側にある。そんなボタンがあった。
Switchは違った。本体と繋げたコントローラー左右に「ZR」「ZL」とあるではないか。正直慣れるまで時間がかかった。習うより慣れよ。そんな感じでゲームを最初からはじめた。
幸いにも共通の趣味の知り合いがいたのも大きかった。
その人に「是非、アルセウスやりましょう〜!」とリプをいただいたときからもう決めていたのだろう。
Instagramにて進捗報告をした。この可視化をするということが、より一層のめり込むキッカケになった。フィールドを進めていくと野生のポケモンが主人公に気がつき襲いかかってくる。ポケモンを出そうとボタンを押すのだが、間違えて全く関係ない道具を投げていた。モンスターボール、木の実、無駄にしたのは数知れない。
早く移動ができるライドポケモン(乗り物)を手に入れたときも、勢いよく橋を渡った。スティックが少し斜めになっていたのか、ものすごいスピードで川に飛び込む。この展開で溺死したプレイヤーも多くいたのではないだろうか。そんなことを考えていた。
育ててレベル上げをする。今回の作品は捕獲をしても、倒しても経験値が付与されるシステムのため、戦闘に出してないポケモンもレベルが上がっていく。時間のない現代社会にも配慮されていたように感じる。姿、カタチも、出来ることもどんどん増えていく。トントン拍子でストーリーが進んでいった。
ウチのゲンガーがデカイ!(普通のサイズの倍近くある……)
エーフィが可愛い!(偶然にも得意分野に秀でた性格だった)
Switchにあるスクショ機能を使い「これは……!」と思えるものを撮っていく。趣味でカメラをやっているのも関係していたのだろう。一瞬一瞬を噛みしめながら楽しむ。ここまでは順調に進んでいたのだが、急ブレーキがかかる。
「あと、10匹がどうしても捕獲できん……!」
特別な条件下でないと出現しないポケモンも数多くいた。「運」要素もあった。どうしても見つからないポケモンを攻略サイトを参考にしながら、お目当てのポケモンを捕まえるために何度もアクセスをした。
自分と同じくゲームをクリアするためにアクセスしている人がいると思うとサイトのPV数も凄いんやろうな……(遠い目)
昔、攻略本を購入しないとわからないことも多々あった。
自分も初代ポケモンの攻略本を本屋で買ったこと思い出す。
便利な世の中になったなと感慨深いものを感じた。
9匹……! 5匹……!
残り3匹……!2……!1……!
どんどんポケモン図鑑が埋まっていく。
先週の火曜日。
いろんなタイミングが重なり、あれよあれよと伝説のポケモン「アルセウス」まで辿り着く。
アルセウスとの戦いに勝利した瞬間をすかさずスクショした。
気がつくと購入してから3週間ほど経過していた。
子どものときと同じように純粋に楽しんでいたのだ。気に入ったポケモンを育て、経験値を積むことで出来ることが増えていく。その成長がとても愛おしく感じた。
一度負けてしまっても、再び挑戦するために修行をして経験値を積み、次は負けないようにする。当たり前のことなのだが、ポケモンを通じて考えさせられたのである。
「2月末までにはクリアしたい……!」と心で決めていた。
1996年2月27日『ポケットモンスター 赤・緑』が発売された日である。
間に合った。ポケモン生誕日までになんとか図鑑を埋めることができたのだ。
もうすぐ2月が終わる。1月中旬の荒んでいた気持ちはもうそこにはなかった。
ポケモンが癒してくれたのだと思う。
春はすぐそこまできている。
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