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教訓ありのファンタジー小説。ミヒャエル・エンデ『モモ』を読んで。

ふと海外文学が読みたくなって、毎度近所の横浜市立図書館で借りてきました。ミヒャエル・エンデ著『モモ』。やはり児童書コーナーにありました。平日ということもあり、子どもたちは図書館に一人としていなかったので入りやすかったです。

さて、『モモ』は1974年にドイツ児童文学賞を受賞した、知る人ぞ知る児童書の名作。あらすじは、人々の時間を奪う「灰色の男たち」にヒロインである少女「モモ」が立ち向かうお話です。※以下少しネタバレあり

モモは浮浪児ですが、持ち前の人柄から、近所の人々からは慕われていました。友達と遊んだり、ゆっくりお話をしたりと、平和な毎日を過ごしていたころ、ある日街に「灰色の男」が現れます。彼らは人々に、時間を貯蓄することをすすめ、それに同意したものは自分の「無駄な時間」を極力減らすように務めることになります。

街は次第にせかせかと余裕のない様子になり、人々はつねに時間を気にし、生産的でないと思われることを徹底的に排除するようになります。

そんな中、モモは時間を司る「マイスター・ホラ」という人物とその仲間であるカメの「カシオペイア」とともに、人々の時間を奪う「灰色の男たち」に立ち向かいます___


物語のあらすじはこんな感じ。以下自分の感想。なんと言ってもまず、

1.モモが魅力的。

 ヒロインのモモは、皆から慕われるとても魅力あふれる人物なのですが、その魅力の理由が、とても詳細に記述されているのです。モモは驚くほど人の話を聞くのがうまく、人々はモモと一緒にいるとつい長話をしてしまいます。モモは、話を聞くためになにか特別なことをしているわけではありません。ただじっと相手の目を見つめ、耳を傾けるのです。こういうひたむきで素直なモモだから、こんなにも皆から、そして読者から慕われるのでしょう。

2.「時間」について考えさせられる。

 時間は一人24時間しかありません。それなのにこの物語では、時間を節約しようとせわしなく動く人はどんどん時間が奪われ、なくなっていきます。普通は逆ですよね。時間を無駄にしないよう意識しているひとが、実は時間に縛られ、自由に生きることができないという逆説…

時間を気にしすぎたり、生産性を重視したりする様子は現代の我々にも当てはまるかもしれません。今一度、人間らしい時間の使い方について考えるべきです。この自粛期間は絶好の機会かもしれません。

3.児童書特有のやさしい語り口が癒やされる。

 何度も言いますが、これは児童書です。語り口がとっても優しい。もちろん小さな子どもでも読めます。おそらくある程度の年齢になると、子供向けの文章なんてなかなか読みませんよね。むしろ大人が読むべきと言いたいくらい、とっても癒される、かつ教訓たっぷりの児童書です。ぜひ読んでみてください。

最後に、作中に出てくる名言をいくつか紹介しておきます。



「時間こそが人生そのものなのです。
そしてそれは心の中にあります。

時間を節約しようとするほど
生活はやせ細ってしまうのです」


「ちいさなモモにできたこと。

それはほかでもありません。相手の話を聞くことだけでした。」



「人間はじぶんの時間をどうするかは
自分できめなくてはならない。」



たまにはスマホから離れて、ゆっくり児童書でも読むのはどうでしょうか。

では。


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