008:夢は「叶うかどうか」ではなく「叶えたいかどうか」が大切
バリでの出来事の話をする前に、この時の私のがどんな状況・心境だったか少しお話します。
ホテルをオープンするという夢を叶えるためには、大きく二つの問題がありました。ひとつは建設資金、もうひとつはホテル経営のノウハウです。どうやったそれらの問題を解決できるのか。正直なところ、それらに関する具体的なアイデアは何ひとつありませんでした。
でも、そんな状態であったにも関わらず「将来ホテルをオープンしたい」と思った背景には、いくつかの理由がありました。
ひとつは、「一生かければ、もしかして実現できるかも知れない」と漠然と思ったこと。この時点ではホテルを作るためにいくら必要なのか?という具体的な金額も分からなかったので、具体的な期限を決めることもできません。でも、10年先、20年先という遠い将来なら可能かもしれない・・・と、どちらかというと「願望」に近い状態で思っていました。
もうひとつは、状況的には「達成できる」という根拠が何もなかったのに、心のどこかで「きっとできる」という確信のようなものがあったことです。
私の中に混在していた「どうやったら良いかわからない → だから無理かもしれない」という気持ちと「方法はわからない → でもきっとできるに違いない」という気持ち。この相反する二つの気持ちは、どちらかというと根拠のない「できる!」という思いの方が勝っていました。
自分の知らない、「自分の本当の力」を信じる
人には「自分にはこれができる」と自分で理解している能力と、自分でも知らない能力、すなわち「潜在能力」があります。この自分でも認識していない潜在能力は、自分自身が理解し、把握している能力よりも遙かに大きいものです。
「できるだろうか?」と考えるとき、人は自分の過去の経験や知識を総動員しますが、それでは潜在能力を使うことはできません。
私がたくさんの成功者から教わったのは、「大きな事を達成したいと思ったら、出来るかどうかではなく『やりたいかどうか』という基準で考える事」というものでした。人は、絶対に達成できないことや、叶えることが不可能なことに関しては、その達成を本気で信じる事はもちろん、達成した自分を想像することもできません。別の言い方をすれば、もしも達成をイメージできるなら、確率は低くてもそれが現実になる可能性があるということです。
私の場合も、その時の状況、知識、経験などから「ホテルを作れるだろうか」と考えれば「無理」という結論になっていたでしょう。でも、当時の私の心の中では、「できるだろうか」という思いより、「ホテルを作りたい」という思いの方が遙かに大きかったのです。
「昼の科学」と「夜の科学」
遺伝子工学の権威である村上和雄教授は、「科学的な大発見は、努力や知識といった『昼の科学』と、偶然や奇跡といった『夜の科学』によって成り立っている」という話をされています。その一例として紹介していたのがこんなエピソードです。
ヒト・レニンの全遺伝子解読を進めながらも上手くいかず壁に当たっていた頃、パリのパスツール研究所も同様の研究をしているという情報が入ります。実際に訪れてみると、彼らは既に一歩も二歩も先を行っている。
半ば諦めかけますが、帰国の途中でだまたま立ち寄ったドイツのビアホールで、偶然にも遺伝子工学の分野で世界のトップと言われた京都大学の中西重忠教授に出会いました。
日本でもなかなか会えない人なのに、旅先で、それもふと立ち寄ったドイツの店で偶然出会える不思議。そしてそれがきっかけで中西教授の協力を得られることになり、最終的に世界初のヒト・レニンの全遺伝子暗号の解読に成功したのです。
このような偶然の出会いや偶然の出来事は、自分で起こそうと思って起こせるものではありません。これこそが潜在能力のなせる技なのです。
その話を聞いて、私はこう考えました。
「私自身が理解している『私の力』では達成できない夢でも、潜在能力がフルに働いてくれれば達成できるかもしれない。具体的な手段は分からないけれど、とにかく達成を強く意図し、常に信じて行動しよう」
この時はまだ、そう思い始めていただけで具体的な行動を起こしていたわけではありません。しかし、そんな状況だったところに、それを後押ししてくれるような出来事が起こったというわけです。
私はいまでも、人生のターニングポイントのひとつは、この決断をした時だったと信じていて、「どうやったら良いかわからないことも、結果を強く意図することで達成できる」という経験はそれ以降も数え切れないほど経験しています。
「人生は思った通り」という言葉は、私の中では確信となりました。
読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。