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無力さを感じながら、手足を動かし続けられるのだろうか? 気仙沼を訪れて、底上げと出会って

東日本大震災の時、僕は中学3年生で、東京に住んでいた。
気仙沼を覆う想像もつかないような津波、漏れ出した重油が引火し、文字通り火の海になる。
そうした光景がテレビの向こうから見えていて、
しかし僕にとっては、全く理解が及ばず、テレビの世界のことだった。

気づけば12年が経ち、原発の処理水の海洋放出というニュースが流れるこの夏に、遠いから、時間がないからと、いかない理由を積み重ねていた被災地を訪れる機会に恵まれた。
しかも、震災から程なくしてボランティアとして気仙沼入りした大学生たちがつくった、NPO法人底上げの副理事である、斉藤 祐輔さん(以下ゆっけさん)に当時の様子を話していただきながら案内をしていただいた。
その中で感じた問いが冒頭である。

気仙沼に入った時に感じた違和感は、錆びた建物がないということだった。
自分は瀬戸内海の島に住んでいるので日常的に見るのだが、港町は潮風に当てられて錆びた看板や建物が目立つのだ。
アスファルトもかなり新しく、だからこそ、本当に全てが流されたのだと感じた。

12年前、津波の被害があったとはとても思えない風景だった。
向こう側から津波が押し寄せてきた

ゆっけさんが、「気仙沼に来たとき、ここは瓦礫の山で、ひたすらにそれを片付けていて、被災した方々は、若者が来てくれたから、すごく喜んでもらった。でも1日頑張っても1mくらいの瓦礫をちょっと動かすのがやっとだったし、被災した人たちの炊き出しを分けてもらったりしながら、何やってるんだろうと無力感をひたすらに感じていた。」と話していた。
何者でもない中で、何のために生きていくのか?ということをひたすらに考えながら、一方で目の前でやらなくてはいけないことは毎日増え続けていく。内外の人、セクターが様々な反応や行動を起こしていく中で、当たり前のように賛否が湧き上がる。
正直想像もつかない状況だなと聞きながら考えていた。

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館は、津波によって被害を受けた高校の中に入りながら、津波の威力を見ることができる。例えば、4階の教室に流されてきた車がそのまま展示をしてある。

校舎の4Fは10m以上はある
ちょうど回っている時に他の来館者の方が、多分気仙沼出身の方だと思うのだが、写真の資料を子どもと見ながらこんな話をしていた。
「当時は撮らないでくれとずっと思っていたけど、今は残してくれて本当にありがとうって思う」
教室の様子。ゆっけさんはここが伝承館になる前に来たことがあるそうで、
これでもだいぶ片付けられたとのこと。

やはり、来てみなければわからないことばかりだと思った。
伝承館の中にはいくつかの映像資料があり、もし来た際にはそちらもぜひみて欲しい。
僕の場合は、時が経ち忘れかけている平穏の尊さを改めて痛感した。面白いとか気持ちいいとか、勉強になったとか、そういうポジティブな感情は湧かないけれど、行けて良かったと心から思った。

東京から引っ越してきて常々感じるが、人が未来をコントロールできるなんて、到底思えない。
そうした中で、僕たちは何ができるのか、どう在れるのだろうか?
きっと、僕がみたものよりも遥か壮絶な現実を突きつけられる中で、
それでもゆっけさんをはじめとする底上げのメンバーは、手足を動かし続けたと話していた。
その姿が、在り様が、関わる人に勇気を与えてきたのだろうなと思う。
何より僕がそうだ。自分が参っていた時に、顔がすぐ浮かんで一緒に何かをやりたい、というより、ゆっけさんなら一緒にやってくれそうと勝手に思っていた。

ゆっけさんはいつも自然体(というよりヘラヘラしていて)でネジが飛んでいると感じる。
というか底上げの人は大体ヘラヘラしていることが多い。超リスペクト。

底上げの人は全然取り繕わない。普通に失敗するし、普通にはしゃいでるし、普通に接してくれる。そして、誰の話でも、一生懸命聞いてくれる。
多くの人が、積み上げてきたものや実績が多いほどに、どこか萎縮させてしまう雰囲気を放ってしまう。
でも、彼らは相当に積み上げているにも関わらず、いつだって気安い。
それは、多分、無力さを痛感しながらも諦めなかったからなのかもしれない。

底上げの行う事業は、そうした震災の体験の中で、目の前の計り知れないものと向き合い続けながら生まれたもので、
今回自分たちは、彼らの行うSOKOAGE CAMP(以下CAMP)という、元々は大学生向けとして行なっているプログラムを、今回は社会人向けバージョンを企画するところから一緒に取り組ませてもらった。

後編ではそこで感じた違和感を書き留めたいと思う。

後編に続きます。

今回の体験について、9/3(日)19:00〜
こちらでお話しします!ご興味のある方はぜひ!


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