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日本の工芸を元気にする "中川政七商店"

日本の工芸を元気にする!

これは約300年続く奈良の老舗"中川政七商店"の13代目が掲げている同社のヴィジョンです。中川氏は社内外でそのヴィジョンを明言していて、著書のタイトルにもなるほど。

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個人的にとても共感ができ、応援したいと思えるヴィジョンです。実際、僕の繊維産業に対する考えも少なからずこの言葉を影響を受けています。

今回は本書の内容と同社の活動を紹介させて頂きます。

工芸大国日本を目指して

日本の伝統工芸品の市場はこの40年間で激減しています。

1983年には5,400億円もの規模だった市場が、2003年には2,000億円、2,014年には1,000億円にまで縮小しています。

新興国で大量生産される安価な代替品に需要が奪われてしまったのです。このような状況は日本に限らず世界各国で起きています。

例えばドイツにある刃物の産地として有名な町では最も若い職人が70歳を超える深刻な高齢化に直面しており、存続の危機に直面しています。

いわゆるコスパが優先される時代に職人が生きにくいのはどの国も同じなのでしょう。

そのような中で日本の工芸を100年後まで維持/拡大できたら世界でも稀有な存在なり、世界中から需要があるのではというのが中川氏の考えです。

流通の出口をつくる

いいモノができても売れなければ会社は続かいない。

工芸を元気にするために重点的に取り組んでいることの1つが流通の出口を確保するための小売事業。自社ブランドのブランディングをしながら直営店を増やしていき、いいモノを売る場所を整えていっています。

また、直営店の拡大の他に力を入れているのが"大日本市"という展示会。

こちらの展示会も流通の出口のサポートの一環として行われており、出展料は取っていません。その代わりにサポートによる売上の一定料をもらう形式にしているようです。

一定料の割合にもよりますが、成功報酬型の仕組みなので出展に対するリスクが少ないのでメーカーにとっては助かる仕組みだと思います。

今年の6月にも開催され大盛況だった様子。いつか行ってみたいです。

産地に輝く一番星を

同社が小売と同じく力を入れているのがコンサルティング業。

自社ブランドを培ったブランディングマネジメントのノウハウを活用してメーカーの立て直しを図ります。

その代表例が長崎県の波佐見焼のマルヒロのマグカップです。カラフルなカラーリングがかわいいですね。

波佐見焼は長い間、有田焼の下請け産地として工芸を支えていました。そのため技術はあるものの、知名度が低いために下請けからの脱却が出来ずにいました。

中川氏のコンサルティングによってその状況からの脱却を果たしたのです。

本書には中川氏のコンサルティング料は月額25万円と新入社員の月給より少し高い程度に設定しているとあります。大手コンサルティング会社に比べると格段に安いはずです。

これはコンサルティングで儲けようというのが目的ではなく、日本の工芸メーカーに立ち直り元気になってもらうことを目的としているからです。

コンサルティングで成長したメーカーの商品を店頭で販売し、長い目で見て収益を得ようという仕組みです。

中川氏はこのように各産地の先頭を走るメーカーを育てていっています。

工芸に革命を

小売のサポートやコンサルティングを通して各産地に一番星ができたなら、そこを起点に産地全体を盛り上げていく必要があります。一社単独の成功では産地自体は変わらないからです。

しかし、その一社が産地のことを思って頑張っても「余計なことをするな」と足を引っ張られることもあります。そうすると「自分のところが良ければいいか・・・」と悪魔がささやくこともあるでしょう。

そんなことを乗り越えて日本の工芸を元気にするという1つの志にメーカーを集結させる構想です。(長くなってきたのでまた次の機会にでも)

本書冒頭にも"100年の計"とあるように日本の工芸を元気にするための同社の戦いはまだまだ続きます。

志に共感する1人のファンとして応援したい限りです。




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