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【試し読み】『子どもと大人の主体的・自律的な学びを支える実践』中谷素之・岡田涼・犬塚美輪(編著):「はじめに」より抜粋

◎自己調整学習研究が応用されている多様なフィールドを、最新の研究とともに紹介◎学校教育、スポーツ、医学教育等幅広い年齢層を対象にした教育現場で応用されている自己調整学習。各現場で行われている研究・実践を具体的に示す教師・指導者に役立つ一冊。

『子どもと大人の主体的・自律的な学びを支える実践--教師・指導者のための自己調整学習』が、9月1日に発売しました!
自己調整学習のアイディアが活かされているさまざまな現場を紹介している本書。学校関係者はもちろん、スポーツや習い事の指導にあたる指導者の方々、独学に興味のある方、社会人学生として大学院で学ぶ方など幅広い方に手に取っていただきたい内容になっています。

●編者からのひとこと●
 「自己調整学習って聞いたことはあるけど、実際には何をするの?」本書はこのような、「自己調整学習をどう実践するか」に焦点を当てています。新たな学習指導要領でも、「自己調整力」は主体的に学習に取り組む態度をとらえる主要な観点であるとされ、自己調整学習の考え方は教育施策の上でも重要な役割を果たしています。
 本書を通じて、「学習の何を、何のために、どのように指導し、どう評価するか」といった自己調整学習の実例、好例が多数示されています。教科学習や語学学習、スポーツやICT、医学教育などの豊富な実践領域を通じて、“自律的な学習者”を育てる実践と研究へと読者の皆さんをいざないます。                      編者代表 中谷素之

ここでは試し読みとして、「はじめに」から一部を抜粋して公開します。
続きが気になる方は、ぜひ全国の書店・ウェブストアからお求めください!
(本書の詳細はこちら。各種ウェブストアにもアクセスできます)

*本記事は2021年9月1日発売『子どもと大人の主体的・自律的な学びを支える実践』から該当部分を転載したものです。

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●はじめに●

自律的・主体的に学ぶ力:自己調整学習へのいざない

1.現代社会の激変と主体的に学ぶ力
 21世紀を迎えて20年あまり,われわれの暮らす社会,世界は,以前よりよいものになったのでしょうか。便利になった,あるいは以前はできなかったことができるようになった面がある一方で,社会の分断とよばれるような格差や,持続する社会・地政学的な不安,そして今般のパンデミックに代表されるグローバルな公衆衛生の危機など,簡単に肯定的な回答をすることはできないでしょう。

(・・・中略・・・)

 複雑化・多様化した教育環境を取り巻く状況では,刻々と変化する情報に左右されるのではなく,いかに必要な情報を調べ,取捨選択するとともに結びつけ,自ら課題解決するか,という主体的な学びが中核的な重要性をもちます。それには学習者自身が,学びのエージェントであり,学ぶことは自分でコントロールし,自律することが可能なのだ,という信念をもつことと,それに基づく支援が欠かせません。

(・・・中略・・・)

3.自己調整学習実践の諸領域:本書の構成
 本書は,発達の段階によって,主に児童期・青年期を念頭に置いた第Ⅰ部「子どもの自己調整学習を育てる」と,主に青年期後期と成人期を対象とした第Ⅱ部「大学生・成人の自己調整学習の支援」の2部からなっています。
 第Ⅰ部「子どもの自己調整学習を育てる」には,6つの章があります。
 第1章「基礎的な学習習慣の形成」において,基本的な学習態度の形成上欠かせない「学習習慣」に焦点を当てています。自己調整学習の循環モデルに基づき,学習習慣の質を高めるためには適切な方略が重要であること,そして家庭での学習習慣形成にかかわる宿題や,予習・復習という自主学習の効果に関する実践的な知見が提案されます。
 第2章「科学的思考の支援」では,理科教育の中心的課題である「科学的思考」を促すための指導・支援ついて,メタ認知の視点から議論します。メタ認知を促す,学習の振り返りの指導において,振り返りの目的を意識し,視点を明確にすることで,深い理解や自己効力感を高めるといった自己調整的な学びに結びつくことを示します。
 第3章「仲間関係の中での学びと自己調整学習」では,学校でかかわるクラスメイトや仲間との間で,学ぶ様子を手本にしたり,相互に学ぶ資源としたりするなどの「ピア・モデリング」の効果と実践について論じます。学習において仲間に疑問や質問をするなどの「学業的援助要請」も,仲間関係での学びをよりよいものにするうえで重要な方略であり,それには教室環境や教師の指導が重要な役割をもつことが提起されます。
 第4章「物語を読むことをスタートとした読解教材づくり」では,文章読解教材を中心に,テキストの内容を理解し深く考える「テキスト探偵」の単元が紹介され,自己調整的な読解方略獲得のための指導法が議論されます。動機づけの自己調整,方略知識,そして認知の自己調整の各側面で,「テキスト探偵」というユニークな視点から,文章読解における教材づくりや指導のあり方が詳説,展開されます。
 第5章「特別なニーズのある子どもへの支援」では,発達障害のある子どもの自己調整学習支援について考えます。自己調整的な読み方略の支援,そして作文のための支援について,具体的な学習支援の研究例を踏まえ,ツールやシートなどを用いた支援の「しかけづくり」が提案されています。
 第6章「ICTを自己調整に役立てる」では,ノートパソコンやタブレット端末などの情報通信機器を用いた自己調整学習の支援・促進の方法について論じられます。
 第Ⅱ部「大学生・成人の自己調整学習の支援」は5章から構成されます。
 第7章「大学生に必要な自己調整学習スキルの育成」では,大学生が自ら学ぶためのスキルとその支援に焦点を当てます。大学のコースをとおした自己調整学習支援の実践や,教室における評価に自己調整学習のサイクルを位置づけるCA:SRLモデル,そして個人内だけでなく共調整や社会的に共有された調整のモデルをとおして,大学生における協働的な学びを介した自己調整学習スキルの支援が議論されます。
 第8章「第二言語の自己調整学習」では,グローバルなコミュニケーションが求められる今日,第二言語習得における自己調整学習の役割について論じられます。学習者の適性や動機づけ,また学習における仲間からの支援,モニタリング,発表などを通じて,習得に至る自己調整の過程と実践が案内されています。
 第9章「自己調整学習をスポーツへ応用する」では,スポーツ領域における自己調整学習の貢献が論じられます。目標設定や動機づけ,イメージ法などによるパフォーマンスの向上,スポーツの持続を支えることによる健康増進への寄与,そして自己調整を促す指導や環境のあり方について,スポーツ領域の数々の実証研究に基づいて紹介され,議論されています。
 第10章「大人が学び続けるためのシステムづくり」では,成人以降の学習における自己調整学習の貢献という観点から,インストラクショナル・デザインの理論およびeラーニング(electronic learning)における仕組みづくりについて議論されます。通信教育やオンライン大学などの生涯学習の場において,先延ばしやドロップアウトを防ぎ,能動的に学びに取り組むための自己調整学習スキル(目標設定や経験や実生活との関連づけ,そして方略の振り返りなど)が強調されます。そこでは学習システムやICT はもちろん,教員・メンターや友人の役割が重要であることが示されます。
 第11章「プロフェッショナルの学び:医療領域からの提案」では,医学教育に焦点を当てた自己調整学習の理論と実践を紹介します。日々進化する医療の知識や技術の習得・活用には,主体的・能動的な学びが欠かせません。旧来の記憶中心・情報志向型のカリキュラムに対して,学生主導型選択学習のカリキュラムを導入することにより,未知の疾患の自己学習における動機づけ,省察,学習方略の点で,より自己調整的に学習を遂行していることが示されています。
 これらの2部構成,全11章からなる多様な領域とその実践は,現在の自己調整学習研究の実践的応用を捉えるうえで,重要な柱となるものといえます。

 2020年そして2021年と,未知のウイルスが世界を襲っているパンデミックは,われわれがこれまで自明のものとしてきた社会経済活動や経済発展のあり方が,必ずしも最適解ではなかったことを示す警笛だったのかもしれません。これからも未知の課題に向き合い続けるであろうわれわれ,そして子どもたちが,持続可能で豊かな社会を形づくるためには,人が自分自身に対して客観的に,謙虚に振り返ること,そして自ら自身の学びを止めない,自律的な学びの姿勢や行動が必要となるでしょう。自己調整学習の理論と実践は,そのような予測の困難な時代におけるよりよい学びを理解するうえで欠かせないものでしょう。

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