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年収を上げたいなら商流を押さえよ!事業会社・SI・SESって、なんだ?

覆面です。今回はIT業界において絶対に押さえておきたい「商流」についてです。
商流とは契約、お金の流れのことですが、IT業界においての商流を理解するのに欠かせないのが「事業会社(発注元)」「プライム(一次請け)SIer」「二次請けSIer」「SES」などの関係性です。
就活生はもちろん、特に下請けにいらっしゃる方こそ、この商流を理解せず転職をしてしまっているケースが多いのが実情です。
商流を理解しなければ、年収アップも実現できません。しっかり押さえて行きましょう。

(1)  事業会社って、なんだ?

まずそもそも案件を依頼する発注元の「事業会社」というものを理解しなければなりません。
事業会社というのはかなり定義が広いですが、簡単に言うと「自社でシステムやサービス、プロダクトなどを作っている会社」です。
大きくは
・「ネット系サービス(SaaSやECなど)」
・「物(実物がある)」
の2種に分かれていると思っておくと良いです。
自社で作っているものがWebサービスやECサイトかもしれませんし、SaaSの場合や何かしらのパッケージ製品かもしれません。
もちろん「プリンター」「自動販売機」「車」などの「モノそのもの」を作っている所も事業会社と言えます。
ということは「うちは事業会社でもありながらSIもやっている」という企業もあるということです。
分かりやすい例としては「メーカー」と呼ばれる企業がそうですよね。
富士通やNECなどはパソコンなどを自社で作っていますし(事業会社の立場)、SIもやっています。

この事業会社が、自社でそのサービスやモノを開発することを「内製化」と言いますが、大きな事業(サービス・モノ)になればなるほど全てを自社で開発するのは現実的ではありません。
事業会社の社員は「考える」ことに特化し、作ることはベンダーに任せる、いわゆる「ベンダーコントロール」になることが多いとも言えます。
※Webサービス系企業の場合内製化している企業が多いですが、とはいえほとんどの企業で何かしらのベンダーも入っているはずです。

つまり、特に就活生向けの注意点ですが「俺はゴリゴリプログラミングがしたいんだ!あまり話したり調整するのは得意じゃないんだ!」という人(田中君としましょう)が事業会社に入ってしまうと「あれ、自分では開発が出来ないの?」という事態になることが多い(もちろん企業によりますが可能性として)ということは理解しておきましょう。

ではプログラミングをしたい、技術をやりたい、という場合に真っ先に選択肢に出てくるのがどこかというと、上述した「ベンダー」と呼ばれるSIerです。
そこで次に事業会社とSIerの関係性を追っていきましょう。

(2)  事業会社とSIerとの関係性は?

例として「こんなECサイトを作りたい!」と事業会社S社が思ったとします。
自社で開発をするには人数や体制はもちろん、技術知見も不足しておりプログラマーとなると皆無、といった場合にまず依頼をするのが「SIer」です。
事業会社S社からSIer「A社」に直で依頼をした場合、このA社が「プライムSIer(直請け)」となります。

あくまで一例ですがよくある業務割り振りとしては
事業会社「S社」:ビジネスを考えフェーズとしては要件定義段階まで
プライムSIer「A社」:要件定義とPM
その下の二次請けSIer「B社」:設計や実際の開発(コーディング)
さらにその下のSES「C社」:開発の一部やテストなど
となる場合が多いです。

内製化をしていたり技術に長けている事業会社もありますが、通常はあまり技術に詳しい方がおらず実際の設計構築や開発などはベンダーに任せるケースが多いため、「IT技術部分は任せて」という形でプライムSIerである「A社」が案件を取りまとめるわけです。
とはいえこのプライムSIerも、自社で開発までやるかというと(やる企業もありますが)そうとは限らず、開発自体は「さらに下請けの二次請け・三次請けSIerなどに任せる」ということが、特に大規模のシステム開発案件などでは多いのが実情です。

つまり「事業会社S社がシステム開発を依頼し、プライムSIerのA社が要件定義やPMを行い、二次請けSIerであるB社が実際のコーディングなどを請け負う」案件となるわけです。

先ほどの例として「俺はプログラミングをゴリゴリやりたいんだ!」という田中君がプライムSIer「A社」に入ってしまうと、もちろん部署によってはゴリゴリプログラミングが出来るかもしれませんが、通常はプログラミング自体はあまりできない可能性が高いと言えます。
つまり商流としては下になってしまいますが、むしろ二次請けのSIerである「B社」の方が田中君にはマッチしていた、ということも起こりえるわけです。

ではさらにその下の商流に位置するSESとは何でしょうか?

(3)  SIとSESの差って、なんだ?

SESとはSystem Engineering Serviceの略、と言っても何のことか分からないでしょうから極論でまとめると「工数派遣」のエンジニアのことです。
先程の案件で二次請けSIerB社が開発自体を行っていますが、ある部分の開発や、テストフェーズなどで人的工数が足らない時に「ここだけお願い」という形でお願いしたいというケースは当然起こり得ますよね。
その際に労働力を提供してもらうのがSES「C社」となります。

ではSIとの差はなんでしょうか?
SIの場合には「納品」が義務となります。
プライムSIerA社の「案件終了」というのは、事業会社S社から依頼されたシステムを納品して契約完了です。
二次請けSIerB社の「案件終了」というのは、プライムSIerAから依頼された「システム開発」などを完了し納品して契約完了です。
一方でSESのC社は「工数派遣」です。
例えば1か月分の工数として派遣されているため、納品義務がありません。
ある種「終わらなくても良い」「その工数範囲でやれることをやる」のがSES契約でもあります。

先ほどの田中君の例で言うと、SESの場合には確かに開発や手を動かすことは出来るためマッチするかもしれません。
SESの企業の場合には未経験者も雇うため研修や資格補助などもある場合が多いですし、その意味では良いと思います。
ただ「コア」なプログラミングが出来ず案件の全体像が見えない場合が多いため、その後のキャリアとして就職時にいきなりSESを目指すというのは個人的にはお勧めできません。
なぜか、という説明のためにも、次にSIとSESの「越えられない壁」についてまとめます。

(4)  SIとSESの「超えられない壁」

SIerA社やSIerB社とSESのC社の責任感の差とも言える、案件終了のタイミングはどう変わるでしょうか。
SIerA社やSIerB社は納品義務があるので、いくら多くの時間働いたとしても納品できなければ案件成功とは言えません。
何とか期限内に納めようと時に時間をいとわず案件にあたることもあるでしょう。
(この辺りはPMの腕の見せ所でもありますが、だからこそ「山がある」と言われますし「炎上案件」と言われる事案が発生しうるわけです)
逆にSESは、納品義務が無く時間単価で動いているため、ある種作業者、雑用で終わってしまう可能性もあります。
「終わってなくても帰れる」ため残業時間は少ないかもしれませんが、責任は無いため案件のコア部分に関われるかと言われると、一部の方を除き「N o」と言われるのが一般的な見解です。

この責任感の差が「超えられない壁」として立ちはだかります。
もしSESの方がプライムSIerに転職したいと思っても、プライムSIerA社にいる方のように全体を見ながら、納品を考えながら案件を成功させようという動きをしては来なかったため、そのハードルは非常に高いと言えるでしょう。
そのためSESの方が「プライムSIerに行きたい!」と思ったとしても、まずはSESを脱する(二次請けSIerなどを目指す)ことを第一に考えた方が良いとも言えます。

つまり例の田中君を覆面がキャリアコンサルティングする場合、あくまで業務内容だけを追い将来のキャリアも考えるならば「二次請けSIerであるB社」が合致している、とお勧めすると思います。
もちろん業務内容がすべてではないでしょうし、希望の優先度などもあると思います。
その優先度の基準としてどなたであっても外せないのが「年収」ですよね。
そのため最後に年収について追っていきます。

(5)年収が高いのは、どこだ?

もちろん、一般的には年収も上の商流の方が高くなります。
SESのC社よりはSIerの方が、二次請けSIerB社よりは一次請けSIerA社の方が高いことが多いです。
発注する側の事業会社が一番高いかと言われるとそうとは限らず、事業会社S社として「システムリリース」の予算を持っているだけのため1社員がもらえるかというとそうではないです。
あくまで参考ですしその企業の年収レンジにもよりますが、事業会社の上のランク(いわゆる30代以上、課長手前などの方)であればプライムSIerのPMクラスと同等レベルの額の場合が多いです。

ざっくりまとめると以下のようなレンジです。
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■一般的大手事業会社の場合
課長手前の方が800万台、課長になると1000万超えになることが多い
■プライムSIerの場合
課長代理クラスがやはり800万~900万弱、課長になると一気に1000万を超え1200万レベルになることも多い
■二次請けSIerの場合
「課長でも700万台から800万台」ということも多く、部長やその上のランクになっても900万台(1000万には届かない)というケースもある
■SESの場合
通常は400万から600万レベル(課長になっても600万台など)が頭打ちになるケースが多い
※一部、フリーランスに近い契約やその技術の超スペシャリストとして単価の高い案件に入れている極稀な逸材であれば800万以上という方もいる
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※「私は二次請けSIerにいるけど1000万以上もらっているけど?」というような方もいらっしゃいますので、あくまで一般論として優しい目で見てください。

いかがでしょう。ここまで書くと「え、皆が憧れる1本(1000万)越えってそんなに少ないの?」と思われるかもしれませんが、えぇ、少ないです
ここ数年は転職していきなり1000万超えという方も徐々には増えてきましたが、上述の通り「年収レンジの高い企業で、課長レベルでいきなり入らないと1000万は超えない」んです。
となると転職していきなり部下を持つこと(下手するとプロパーで20年その会社で働いているようなおじさんを入社早々評価する立場)になるため、通常の会社はそこまでリスキーなことはしません。
いわゆる「課長代理(1~3年ぐらい活躍してもらって問題なければ課長になれるレベル)」で入るのが限界になるため、転職して実現するのに無難なのは「800万台」などになるケースが多いということです。

もちろんいきなり上のランクで入る方もいらっしゃいますし、そういう方は発信の仕方などもうまく、発言力もあるため「1000万以上で転職って普通に出来るんじゃないの?」と思われがちですが、現実的にはそんなに簡単なことではない、ということを最後に補足しておきます。

就活生の例である田中君についてまとめると、もし田中君が「30代などで1000万を達成したい!」という野望があるならば「プログラミングをゴリゴリやりたい」という希望条件を下げるか思い切って捨てて、ある種諦めて「ベンダーコントロールやPM,調整などをやる」プライムSIerを目指した方が良いです。
ただ人には向き不向きがありますから、覆面であれば「まずは無理せず二次請けSIerでしっかりと、やりたいプログラミングをやって力をつけて、その後もしPMや調整などにも興味が出てやりたいと思った時に転職を考えれば?」とアドバイスすると思います。

いかがだったでしょうか。
また機会があれば分かりやすく具体的な企業名を挙げて、年収レンジや具体的な案件毎の企業間の関係性なども書いていきたいと思いますが(さすがに無料公開はできないと思いますが…)、今回は一般的な商流について、年収と絡めてまとめてみました。

これから就職活動をする、という方は、受ける会社がどの商流に位置しているのかをしっかり調査し、理解の上受けていってください。
これから転職活動をする、という方は改めてこの商流を理解の上、企業選定をしていって頂ければと思います。

よろしければ「スキ」やフォローを頂けると嬉しいです。覆面でした。

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