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「都市とモビリティ 〜自動運転車時代の都市を考える〜」メモ(トヨタ「Woven City」をきっかけにver)

トヨタが静岡県裾野市にコネクティッドシティである「Woven City」の計画していることを発表しました.これをきっかけに自動運転と都市の関係を考える機運が出てくるといいですね.ということで2018年5月29日に書いた自動運転と都市についてのレクチャーメモを少し加筆して再掲載します.

先週金曜日5/25に自動運転とまちづくりについてのレクチャーを拝聴してきたので,簡単に備忘録.自動運転の議論が建築・都市でも盛り上がるといいな.

(2019.08.26追記)
ご著書が出てましたので、気になる方はこちらを


モビリティとは

人や物が物理的に行き交うこと.情報の移動(通信)も含む.
都市における交通とは,ヒトのカラダの循環器系のようなもので膠着すれば,ヒトは死ぬ.なぜなら,「交通」とは人間の社会生活に伴って発生する社会現象
→人間の生命のためには必要な要素だから.
そのためには,長生きできるカラダ(持続可能な都市)は血流(交通)をよくすることが大事,とのこと.


日本のモビリティの歴史

古来,支配層には移動をよしとしない政治的文化があった
→物や人の出入り制限で、伝統・秩序の保持や軍事防衛を行なっていた

時代が進み,明治政府は鉄道政策を重視した,ただし,道路整備は置き去りにされた
→明治政府は,近代国家の中で鉄道網を優先した.なぜなら,産業革命の影響もあり,鉄道が文明開化の象徴となったので

戦後の道路整備とモータリゼーションの狂騒
→1956年のワトキンス・レポート(国連)のなかで,「日本の道路は信じがたいほどに悪い,工業国にして、これほど道路を無視してきた国はない.」と酷評されている

敗戦のため,航空機の開発を制限したため.日本では航空機製造の分野が発達せず,技術者の多くが車産業に流出し,日本の自動車産業の成長を支えることになった.


自動車社会がつくった街の姿

●都市を埋め尽くす駐車場,都心の一等地にも駐車場が必要になった→あまり良い空間ではない
都市や街が自動車社会の仕組みに合わせてつくられるようになった
●「交通戦争」は「高齢社会」でさらに...
→交通事故の増加,年間4,000人亡くなっている←阪神淡路大震災と同じ人数
●「通勤」の「地獄化」が起こった.
公共交通のなかで「孤立化する」人びとが出てきた←移動空間の殺風景化


自動車の普及は都市の姿を変えた

●道路拡幅や都市高速道路の整備
●駐車場整備
●郊外型ショッピングセンターの台頭など(郊外における自動車社会)

都市の歴史は「自動車との闘い」の歴史であった
●中心市街地への自動車流入の抑制
→鉄道などをいかに進化させるか
●住宅街,自然景観保全,歴史的地区への流入
●公共交通の維持
をどうするか?
要は使う人々が「未熟」だった.車を「賢く」使えばよかったのでは?


これまでのモビリティの価値とは?

究極の移動の姿は,「どこでもドア」,「孫悟空の筋斗雲」
→すぐきてくれてすぐ移動できる.役目を終えたらどこかに行ってくれる
「移動」自体に価値はない,と考えられてきた
「速い」「安い」「快適」が,移動の価値を測る


しかし,モビリティの価値は変わってきている─時代は,公共交通復権策へ

建築家がデザインするモビリティ
→ヨーロッパや欧米などではある.日本でも少し出てきた

モビリティの価値観が変わりつつある

「ななつ星in九州」「東北新幹線 グランクラス」も
→新幹線vs航空機 「4時間の壁」戦争の末に現れた掟破りの発想.

「安い」「速い」が変わってきている→「高い」し「遅い」など移動がリッチ化してきている


モビリティが「Cool!」な時代はくるか?

モビリティを楽しむ,という価値観の醸成
速い,安い,快適(苦痛じゃない)からの脱却

「モビリティ」が目的,「モビリティ」は楽しい
と思ってもらうこと
日本には駅前商店街,駅ビル,駅ナカの成功モデルがあるので,うまく利用されたし.
お座敷列車や超豪華列車も重要

都市と一帯で「移動を楽しむ」→「移動空間」と「都市空間」の一体化


自動運転社会の兆し

まちづくり政策は「コンパクトシティ」へ
→自動運転とは逆行してる流れ
→沿線に人を集める(コンパクトシティ),でも自動運転が普及するとあまり関係なくなる

自動運転のブームは4回目(最初は1957年?)→1990年代のブーム─愛知万博の自動運転

愛・地球博では道路に機器を埋める方法が試みられた
→それを展開するとなると日本中の道路すべてをやり替えなくてはならず,金がめっちゃかかるから,やらなくなりました


じゃあ,なぜ自動運転の機運がまた高まったの?

●画像解析技術の向上
●人工知能の発達
●高精度なロケーション測位技術の発達
●米国IT企業の台頭とイノベーティブな活動→法規制をぶち破る存在
●国際競争の激化
→日本は2025年までのロードマップで自動運転の開発の国際基準レベル4を目指している(レベル4=特定のエリアで無人走行が可能)

あんまり報道で注目されないけど,結構実証実験やってる


新しく登場したモビリティサービスの潮流

「売る車」モデルからの脱却
EUで成長する乗り捨て型のカーシェアリングサービス

→シェアモビリティの台頭

究極の自動運転社会へに至るには?
●サービス
●売る

かの自動車の保有形態の変化が関係する


一旦,モビリティの4つの未来へのシナリオ

●プレミアムカーが自動運転機能を搭載
●SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が街路を席巻
●ロボタクシーに移行
●ライドシェア革命


じゃあ,自動運転は都市を変える?

交通政策研究者たちの見解
●米国の車の90%が自動運転になれば道路の交通容量は2倍
●都市内の自動車が90%削減。ただし走行距離は増加。
●車の平均寿命が短くなる。
こういうことは日本ではあまり言及されていない?

都市部では,シェアードモビリティが普及して常に自動運転車が稼働し,人が待つことなく移動できる世界が出現,とか言われている.

日本でも,国土交通省が,車線数の削減(自動車間距離の削減),駐車場スペースの制限など言ってる.
シンガポールや北米では未来の社会が描かれている.自動運転を切り口にいろんな情報発信してる.

でも結局,自動運転で歩行者空間が増えて,緑化する,とか→だいたいみんな同じこと言ってる.

ここが特に議論されてほしい(未来の都市の姿)


一般消費者は自動運転をどう思っているか?

3,000人にアンケート→欲しいは4割

SNS上での評価
●自動運転の「ない」,と「テクノロジー」の議論しかない
●日本にはあんまり話題がない...未来志向の話がない
●事故を起こした,Googleが開発を諦めた,とかネガティブばっかり反応してる


自動運転を普及させるためには?

日本人:価格
ヨーロッパ:サービス
国民性の違い!

事故が減らなきゃいけない,と日本政府の人は言う
事故ったっていいじゃん!と欧米の人は言う
国民性の違い!!(事故はもちろんよくない)

インタビュー調査してみると...
●運転するのが好き
●いらない!
とか

→つまり自動運転は必要性の問題ではない.ヨーロッパの人は,だから「サービス」として提供しなきゃいけない,とわかっている
日本は技術の話ばっかり...だから広まらない...


そもそも自動運転がどんなものかイメージを持ってもらうことが重要!
「サービス」を強化することが重要!


トヨタのモビリティ革命

そこで,トヨタが2018年のCESで発表した新しいコンセプトカーがちょっと面白そう(ここら辺は筆者の私見です).

どういうものかというとまずは下の動画をご覧くださいませ.

自動運転車にさまざまなサービスを付加し,モビリティを耐久消費財ではなくサービスとして提供する,という,まあありそうといえばありそうな提案なんだけど,それがビジュアライズされて公式に発表されたということは大きな意味を持つのだろうなと感じる.

つまりトヨタのような一時代を築いてきた会社が自動車産業においてハードウェアではなくソフトウェアに舵を切ろうとしているということを意味している.
このことによって自動車はインターネットのようなヴァーチャル空間やデータを通して都市とも深く密接に関わることになる.これまでの時代,都市はいかに自動車をさばくかということに腐心してきたように思えるが,これからの時代には都市と自動車のようなモビリティがインタラクティブに作用しあうことになる.都市において「移動」は重要な要素であった.その「移動」のあり方が変わることによって都市も必然的に変わっていく.

自動運転車が走行データではなく都市のデータまで収集し始めることにより,ますます私たちの世界はデジタライズされていく.デジタライズされていった私たちの世界はより虚構化されていく.私たちはモノにお金を払うのではなく,サービスや概念のような実態に価値を感じるようになる.快適なサービスを実現するためにはより詳細なデータが必要となり,パーソナルなデータがデジタル化される.一人一人の物語が都市に影響を及ぼし,世界に影響を及ぼすようになっていく.
あらゆることがサービス化されていく社会になっていくのだろうか.


─バーチャル都市(2020/01/08追記)

「自動運転車を理想的に運行するには、街中にセンサーを張り巡らせて、人と車の情報を常に収集・活用する仕組みの存在が望ましい。」

これをするにあたり,画像解析技術と処理のための機械学習の精度が向上して,ある程度は外部センサーを使用しないインサイドアウト方式でできる部分も出てくるようになったけど,やはり本気でやるにはそれでは情報が足らず,理想はあらゆるパラメータを含んだ都市すべての三次元モデルを用意して,そこで並行して走らせたりするとか必要になってくる.
ただ,それを既存の都市でやろうとするとなるとまずデータはないわ,建物のバラエティは多様すぎるわ,権利関係大変すぎるわでそれなら一からつくった方が良い,とはなりそう(ある程度はできると思うけど,たとえば,下記記事の静岡の事例など).

まだ音声聞けてないけど,ツイート見る限りはバーチャル上の都市も立ち上げるらしいので,プロセスが設計段階からどのようになってくかが注目すべき部分になってくると感じられる.


自動運転によって

・都市の姿は変わる!
・都市・建築の専門家が,もっと活発に議論をした方がいい!
・自分ごとにすべき!

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