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「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか

図書館内には蔵書検索用のPCが何台かありますが、ときどき利用者が検索結果表示画面を開きっぱなしで行ってしまうことがあります。
見つけしだい画面をクリアしていますが、図書館員としては、利用者さんがどういうキーワードで検索したのか気になって、つい見てしまいますよね。

ある日、学生さんと思しき人が例によって画面を放置したまま本を取りに行ってしまったので、見ると「歴史」というキーワードで検索していました。
全項目で「歴史」と入れると、当然「○○の歴史」みたいなタイトルの一部に含まれるものや「△△歴史学会」や「歴史××社」といった出版者名までヒットするので検索結果は数万件になっていました。

私なら、検索結果が数万件になった時点で「だめだこりゃ」と別のキーワードでやり直すか、検索条件を追加して絞り込みをかけるでしょうが、その学生さんは迷わず一番上に表示された結果をクリックして、その本を取りに行ったようです。

これには、ちょっと考えこんでしまいました。

推測ですが、たぶん先生から「図書館で任意の歴史の本を1冊借りて読み、レポートを書くように」といった課題が出たのではないでしょうか。

じつはこういう検索方法を目にするのは珍しいことではなく、「芸術」というキーワードで芸術の本を探したり「日本」というキーワードで日本について調べたりする人はよくいます。
もちろん検索結果が数万件でも、最初に表示された本が奇跡的に運命の最適な一冊、という可能性もあるので一概に間違いとも言えませんが、確率としてはかなり低そうです。

もしさっきの学生さんが「歴史の本はどこですか」と尋ねてくれていたら何ができただろう、と想像してみます。
「歴史の本はたくさんありますが、具体的なや時代や地域の指定はありますか。それとも歴史一般の概論書的な?」といった質問から始めて「じつは先生からこれこれこういう課題が出て…」という情報が引き出せればその先はいろいろな展開が考えられます。

①「時代や地域を限定したくない」ということであればNDCの「201(歴史学」や「204(歴史エッセイ)」「209(世界史)」の棚を案内して選んでもらう

②「好きな歴史上の人物とか、興味ある時代は?」と聞いてみて、たとえば「戦国武将とか関心ないけど次の大河ドラマはちょっと興味ある」ということなら詳細検索の件名項目に「平安時代 貴族 歴史」と入れてみるとこんな本も出るよ、とか。

あるいは「紫式部」や「藤原道長」といった人物名で検索もできますね。

③「○○史を知るための〇冊」みたいなブックガイドもたくさんあるので、それを紹介して好きなものを選んでもらう。

まあそういうやりとりがめんどうだからレファレンスカウンターに来なかったのでしょうし、レポートひとつにそこまで手をかけたくないというのもあるでしょう。
ただ検索結果トップの本は私が見る限り読みやすいものではなかったので「手っ取り早く課題を終わらせたい」という観点からも最適ではなさそうです。

冒頭の「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか、の答えはたぶん「全員同じ情報に到達する」です。

知り合いで教員をしている人が「学生に課題を出してネットで調べさせると、みんな同じ情報を持ってくる。それもなぜか基本でも重要でもないものを」と言っていましたが、おそらく検索エンジンのアルゴリズムで上位に表示される情報なのでしょう。

先生としてはバラエティ豊かな選択をしてほしくてあえて課題図書を指定しなかったのでしょうが、結果的に同じようなレポートばかり読まされることになってしまったかもしれません。

かと言って例の学生さんを追いかけて「もしもし、さっきの検索結果で本当にいいんですか」と聞くのはどう考えても余計なお世話でしょうし…難しいところですね。


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