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「自己採点は20点」この半年で見えた、副業プロジェクトの光と影【PMI奮闘記#9】

副業人材の力でM&A後の企業を再生させる──それが「継人(つぎびと)プロジェクト」です。外国人材派遣・紹介の株式会社ヒューマンアールに集結した多彩なメンバーが、それぞれの強みを生かして売上拡大に尽力しています。

2024年も折り返し。連載9回目となる今回は、半年間の総括をテーマにお届けします。この期間、ヒューマンアールは着実に派遣・紹介人数を増やし、介護分野への参入にも乗り出しました。地道な積み重ねと挑戦が、事業の可能性を広げています。

そうした手応えが感じられる一方で、継人メンバーとの関わりには課題も浮上。事業拡大と社内リソース、社外連携のバランスを取る難しさに直面しているようです。

経営の黒字化が目前に迫る中、このジレンマをどう乗り越えていくのでしょうか。舵取りを担う代表取締役の丸山直幸氏に、この半年の振り返りと今後の見通しを伺いました。

(文責:田原未沙記)


事業は順調に拡大!派遣・紹介ともに人数が増加

ヒューマンアールの外国人材派遣・紹介事業は、この半年で大きく前進しました。その要因の一つには、年初から導入された「個別タスク制」があるといいます(詳細はこちら)。

丸山「継人プロジェクトでは、一人ひとりにタスクを割り当てる体制に切り替えたことで、弊社の施策にハマりしっかり機能してくれました。すごく助かりましたね」

半年間の成果の中でも際立っているのが、新規事業である特定技能人材紹介のスタートです。

丸山「特定技能の新規事業が走り出したことは、やはり一番大きなトピックですね。第一号が決まってから、順調に人数を増やし、少しずつ軌道に乗りつつあります」

最初の人材紹介先は、グループ企業が運営する長野県のカフェでした(2名)。それを皮切りに、都内の飲食店や長野市内のホテル、箱根の旅館など、紹介枠は現在8名まで確定しています(うち4名はすでに稼働開始、残り4名も人材提案中)。

丸山「当初は7月頃からの増員を見込んでいましたが、現時点ですでに8名が動き出しているので、とてもいいスタートが切れたと思っています」

また、既存事業である技人国人材の派遣も順調に拡大中。昨年11月末から6月までの間に、派遣人数は8名から14名へと増加しました。

このように、最近ヒューマンアールの勢いが加速しているのは、2024年4月に入社した新メンバーの存在も大きいといいます。

丸山「彼女の行動力と業界の知見が存分に発揮されていると感じています。1年越しの営業活動が実を結びそうなタイミングで、最後のパスを決めてくれた場面もありました。頼もしい新戦力として、いい連携が取れていると思います」

「関わりが薄れてしまった人も…」副業プロジェクトの現実

売上拡大に向けて順調な様子を見せる同社。一方で、継人プロジェクトの進行には大きな課題も感じているようです。

丸山「継人メンバーの活動には『濃淡』が出てきているのも事実です。濃く関われている人もいれば、連絡が取りづらくなってしまった人も……。4月の年度替わりに伴い、部署異動や別会社への出向など、皆さんの状況にも変化がありますから。

関わりが薄れてしまうのは残念ですし、どこかのタイミングでしっかり方向性を示さなくてはいけません」

さらに、社内の動きが活発化するほど、継人メンバーへのフォローが手薄になってしまう現状を明かしました。

丸山「我々は小さな会社ですから、目の前の課題が変わるたびに、どうしてもそちらに引っ張られてしまいます。最近は営業活動が本格化して、お客様のもとへ足を運ぶ機会も増えてきました。

そうなると、継人プロジェクトに時間を割く余裕がなくなってしまって。メンバーの皆さんには申し訳ないと思っています。これは私自身の課題です」

ヒューマンアールにとって黒字化は喫緊の課題です。そのため、利益につながる案件の獲得を最優先で進めなくてはなりません。もちろん、継人プロジェクトも同じく売上拡大を目指していますが、副業人材という性質上、社員のペースやタスクとは当然違ってきます。

社内の動きと継人プロジェクトをどう連動させ、どのようにバランスを取っていくのか。そこが悩ましいジレンマになっているようです。

この半年間に対して、経営者としての自己評価を尋ねると「20点、もしくは30点」という厳しい点数を口にしました。

丸山「やっぱりまだ赤字で、利益を出せていないのは事実ですから。とはいえ、自信をなくしているわけではありません。ここから70点、80点分の伸びしろがあるということ。気を引き締めて取り組んでいきます」

介護分野参入や地方創生セミナーなど、新たな挑戦へ

現在ヒューマンアールは、特定技能の対象分野を、宿泊・飲食に加えて介護にも広げ、参入に向けて動き始めています。

丸山「介護分野も含めて、紹介人数を年内に30人まで増やしたいと考えています。今は、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームといった、施設型の介護サービスを提供する事業所にアプローチしているところです」

同社の強みは「おもてなし人材」の派遣・紹介。人手不足が叫ばれる介護分野において、思いやりと気配りに長けた人材のニーズは特に高く、大きな商機が広がっているでしょう。

また、特定技能とインバウンド需要を掛け合わせた、ユニークな企画も進行中とのこと。求人を獲得する新たなアプローチとして、今年の夏休み以降、長野県の温泉旅館でセミナーを開催するといいます。現在は、各施設のニーズや課題をヒアリングしている段階です。

丸山「『雇用から生まれるインバウンド需要』をテーマに、温泉施設の皆さんに向けて提案させていただく予定です。

例えば、長野の温泉エリアでインドネシアの人材を多数採用すれば、自然とインドネシア人のコミュニティができる。すると今度は、インドネシア人の観光客も訪れやすくなる――こうした好循環を生み出せば、地方創生にもつながるはずです」

このセミナーはヒューマンアール単独ではなく、共催で実施するといいます。実は、丸山氏が以前「長野スタートアップスタジオ」で支援した方が、現在インドネシアの送出機関で働いているのだとか。そのご縁から偶然、今回のタイアップが実現したそうです。

さらに先日、大型案件の話も舞い込んできました。ホームページ経由で、計100名ほどの派遣依頼について問い合わせがあったのです。

丸山「100名規模となると我々だけでは対応が難しいので、他社と一緒に提案しているところです。ヒューマンアールからは20名程度を目標に、これから進めていきます」

明るい兆しが見える中、継人プロジェクトとの連携についても、あらためて前向きな姿勢を示します。

丸山「大型案件や新規案件は、工数の見通しが立てにくく、なかなか継人プロジェクトのタスクには落とし込みにくい。でも、我々の既存タスクを継人メンバーにサポートしていただく、そんな協力体制も選択肢の一つだと考えています」

1年以上にわたる継人プロジェクトでは、社内の体制や状況、また副業人材側の環境も日々移り変わっていきます。副業での参画とはいえ、レベニューシェア型(収益を分配する成果報酬型)の有志プロジェクトである以上、モチベーションや心境の変化もあるでしょう。

キックオフ時の想定とは異なっているかもしれません。それでも、事業そのものは間違いなく上向きの軌道に乗り始めています。

プロジェクトが区切りを迎える今年9月には、どのような結末を迎えるのでしょうか。まだまだ目が離せません。

なお、継人プロジェクトは、TRANBI副業部(無料オンラインコミュニティ)の有志メンバーが中心となって進めています。経営や副業にご興味のある方は、この機会にぜひコミュニティにご参加ください!


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