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第42回Book Fair読書会~140字の刺激物~

久しぶりのBook Fair読書会、開催できました!

今回から、RUIさん配布の「本の帯テンプレート」がデビュー!

私もさっそく使わせていただきました。

今後もアイディアを出し合って、さらに楽しい会にできればと思います。

それでは、本と帯の紹介をどうぞ!
(カッコ内数字は参加してくださった回数。雑談・こぼれ話は、他の参加者さんの感想も含みます)

ヒロさん(21)→ターリ・シャーロット(訳:上原直子)『事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学』白揚社

【エビデンスもロジックも嫌いな脳】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉正しいことを言われても、人は動かない?この本では、認知神経科学の観点から、「事実に頼らない」説得術を考察する。

〈2〉人は、エビデンス(根拠)やロジック(論理)に基づいて反論されることを嫌う。
それは、頑固な性格や理解力ではなく、データを歪めて受け取ってしまう脳の問題である。

〈3〉人が互いに影響を与え合う時、はたらくのは事実よりも「感情」「欲求」。
その前提を踏まえ、どう他者を説得するか。特に営業職の方には刺さると思うし、一読の価値あり。

◆雑談、こぼれ話
・言い争いの度にデータを持ち出してくる人がいたら、この本を盾代わりにすればいい!?
・それぞれ、都合のいい他人の意見だけでタイムラインを埋めている人同士が攻撃し合う。感情に訴えれば定型文でも「いいね」が沢山つく。そう考えるとTwitter上の論争って不毛。
・ツイートは文じゃない。あれは140字の刺激物。

あまねさん(初)→朝井リョウ『正欲』

【「多様性」は清々しいほど”おめでたい”】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉あなたは「多様性」という言葉を簡単に使うけど、本当に何でも受け入れる覚悟がありますか__?
まさに「刺激物」なタイトルを含め、インパクトの強い小説。

〈2〉「自分の正義」を貫こうとする検事から、ある特殊な性癖を持つ大学生まで。
様々なスタンスの人物が現れ、視点は10ページ前後で入れ替わるが、章ごとに「山場」がある。

〈3〉正しくあろうとする欲と、社会で正しいとされていることへの疑問。読者は「本当にそれでいいのか?」と問いを突き付けられる。

◆雑談、こぼれ話
・朝井リョウさんは「放り投げ小説」の名手。結論を提示するのではなく、読者に問いかける。
・人のエグい感情が表現されているので、『何者』など他の作品で朝井作品に慣れてから読んだ方がいいかも。

RUIさん(2)→伊吹有喜『雲を紡ぐ』文藝春秋

【岩手の自然に抱かれながら 羊の毛糸が家族をつなぐ・・・
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう 宮沢賢治への憧憬にあふれた優しい物語」】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉壊れかけた家族が、ゆるやかに再生していく物語。
ここまでぶつかり合うのか、と思うほどの会話から、母と娘、また父と息子の確執が見えてくる。

〈2〉その展開を、盛岡の細やかな描写がつなぐ。例えば、羊毛を洗うところから始まる、伝統織物「ホームスパン」の工程。また、ゆかりの作家・宮沢賢治も集めていた鉱物。挿絵は全くないのに、色合いの表現が鮮やかに伝わってくる。

〈3〉好きな作中の言葉は「切れたって、つながる」「言はで思ふぞ、言ふにまされる」。もっと盛岡が好きになり、また行きたくなる小説。

◆雑談、こぼれ話
・巻末には参考文献の書名がびっしり。やわらかくて優しい話だけれど、丁寧な取材に裏打ちされたリアリティと、わずかな「毒」がある。そこが伊吹さんの魅力。
・小川糸さんとも作風が似ているが、読んで見ると確かな違いがある。RUIさんはどちらも好きで、コンディションによって使い分けているそう。

LauLauさん(12)→高原英理『日々のきのこ』河出書房新社

【きのこ幻想文学】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉ファンタジックな装丁(装画はヒグチユウコさん)と、翻訳家・岸本佐知子さんの推薦文に惹かれて読んだ。

〈2〉人間と、きのこ化した人間(菌人)が共生する世界。
美肌効果のある菌糸が浮いたきのこ温泉や、「欲」は残るが「性」はぼやける菌人の愛・・・読む人によって、ただ「怖い」と思うか、「この森に行ってみたい」と思うか分かれそう。

〈3〉『所々のきのこ』『思い思いのきのこ』『時々のきのこ』と章が進むにつれ、人間より菌人の割合が増えていく。でも不思議と”侵略されてる感”はなく、とにかくシュールな作品。

◆雑談、こぼれ話
・挿絵は無いけど、子どもでも読めるかな?絵本や児童文学でも、人じゃない何かに「変身」する話は支持されている気がする。
・デザインと設定の両面で、ほのぼのとした幻想文学にも、ディストピア小説のようにも感じられるギリギリのライン。

じゅんさん(4)→アントニイ・バージェス(訳:乾信一郎)『時計じかけのオレンジ 完全版』ハヤカワepi文庫

【私は人か、時計じかけか】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉池袋のブックカフェ『梟書茶房』で出会った本。1962年発表の英国文学で、(1971年に)映画にもなった。
この『完全版』では、(アメリカでの出版時に削除されていたため?)映画化されなかった「第21章」が収録されている。

〈2〉15歳の少年ギャング・アレックスは、盗みや破壊などやりたい放題。ある日、警察に捕まった彼は「ルドヴィコ療法」にかけられる。
それは、投薬と暴力映像により、犯罪に吐き気をもよおす「善人」体質にさせられる更生だった・・・。

〈3〉教誨師の「善は選ばれるべきものであって、選ぶことができなくなったとき、その人は人であることはやめたのだ」という言葉が印象に残る。
自由意志で選ぶのではなく、押し付けられた善は、本当の意味で善なのか?と考えさせられた。

◆雑談、こぼれ話
・自分の為す善は、誰かにとっての悪となりうる。そして、アクリル板越しにこんな話をすると「面会」感が半端ない。
・「ドルーグ(仲間)」「ハラショー(素晴らしい)」など、若者の間で飛び交う独特のスラングも本作の特徴。覚えたらつい使いたくなる?

こーせーさん(34)→恩田陸『図書室の海』新潮文庫

【ふしぎな話 こわい話】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉『夜のピクニック』『六番目の小夜子』の番外編が収録されているなど、恩田陸ファンにはたまらない短編集。

〈2〉とあるカフェの店員が、客に「ちょっとずつ毒を入れた水」を飲ませていた。傍目には真っ当に映る彼女が、裏で抱えていたものとは・・・(『国境の南』)。

〈3〉爽やかな気持ちになりたいと読み始めたけど、全然スッキリしなかった。『図書室の海』は深海でした(笑)。でも、意図せず恩田陸さんの新しい世界を知って、良い出会いをしたなと思います。

◆雑談、こぼれ話
・短編集の”表題作じゃない方”が映画(ドラマ)化→限定デザインの帯がつき、作品名も変わったような印象になる。
・吉本ばなな『キッチン』や瀬尾まいこ『卵の緒』など、A面・B面のある小説が面白い。だけど、「A面・B面(カップリング、両A面)」ってもはや死語!?

ふっかー(42)→矢萩多聞『本とはたらく』河出書房新社

【心の内側にも、外側にも、縁側をつくる。】

◆本の紹介、帯の解説
〈1〉子どもの頃は”本嫌い”だった装丁家が、本作りの現場で感じたことを綴る。
中学をやめ、家族でインドに住んだ頃のエピソードなど、自伝としても読める一冊。

〈2〉帯の裏に書いた、好きな言葉→「宇宙は原子ではなく、物語でできている」(インドのNGO「カタラヤ」代表)
「どの神さまも信じていない。お祈りを楽しんでいるんだ」(著者の祖父)

〈3〉「本は縁側みたいだ」という著者の言葉に共感を覚えた。本は人が出会い、語るきっかけになる。本のまわりにはいつもにぎわいがある。
その本によって成り立つ読書会も、読者にとって縁側のようになれれば。

◆雑談、こぼれ話
・『本とはたらく』は単行本(ソフトカバー)ながら、ページを開いて机に置いても本が閉じない。独特の装丁が読みやすい!
・本の「デザイン料」は、どのように支払われる?

参加してくださったみなさん、本当にありがとうございます!!

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