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『極限のトレイルラン』160㎞を20時間で走る鏑木毅の持つ生命力

以前、何かのテレビ番組ではじめて鏑木毅さんのことを知りました。同時に、トレイルランニングという山の中を長距離走り続けるスポーツがあることを知りました。

今回読んだのが、日本を代表するトレイルランニングの選手である鏑木毅さんの本です。

山の中を何十時間もかけて160㎞も走るという、おそらくあらゆるスポーツの中でもトップクラスの厳しさを持つ競技なので、その選手である鏑木さんも超人じみた人なのだろうと思って読んでみたのですが、実際には、若い頃から陸上選手としては日の目を見ず、それでもずっと努力し続けてきた人なのであることが分かりました。

地道な努力をする姿勢や、選手生活の前半を公務員との二足の草鞋で過ごしたという点で、私にとっても学びが深かったです。

鏑木毅さんの選手生活やトレーニングについて書かれた『極限のトレイルラン―アルプス激走100マイル―』を紹介します。

執筆者 ふかやとしふみ
古武道師範、身体均整師(ボディデザイナー)。剣術を中心に武道・武術やさまざまなトレーニング、整体を実践する中で工夫してきた、体の不調改善、身体機能UPの方法を紹介しています。


鏑木毅が持つ頑張る力

1日で(正確には20時間程度)100マイル、つまり160㎞もの距離を走るトレイルランニングの大会があります。鏑木毅さんは、この大会での優勝経験があるほどで、日本でもトップの実力を持つ人です。

そんな過酷な競技を戦い抜く力は、どこから湧いてくるものなのか。

彼は、以下のように語っています。

意識を失うほどに疲労感に包まれる登りでも、自分を他者的な目線で捉えて「鏑木毅だったら、ここは歩かない、走るはず」と言いきかせます。すると体は、その意志に呼応して動き始めるのでした。

自分を他者のような目線で見て「彼なら諦めない」と言い聞かせるのは、本当に強い姿勢だと思います。

そして、このような方法で頑張れるのは普段から自分に厳しく努力を重ねているからなのでしょう。

こんな強い自信を持っているのは、彼が子供の頃から持久力や我慢強さを持っていたからで、それを強みにした成功体験を積んできたからのようです。自分の強さを認識し、それを活用し、磨くことで誰にも負けない強みにしていったということなのだと思います。

20時間走り続けるために身体を作り替えた

さらに、精神面だけでなく肉体面も、20時間を超える過酷な競技に耐えるために作り替えたのだそうです。

そのポイントは「体脂肪を使える身体を作る」ことです。

持久力を付けるポイントとは何か、一言でいうと「体脂肪を使える身体をつくること」です。もっと言えば限られた糖エネルギーよりも、膨大な体脂肪エネルギーを優先的に使えるように身体を変えていくことです。

人間は本来体脂肪を消費して活動する動物であり、現代人のように炭水化物を取り、糖質を代謝によってエネルギーにする動物ではなかったそうです。

現代人の生活では炭水化物を取るのが当たり前になっています。

しかし、糖質をエネルギーにするより体脂肪をエネルギーにする方が、実は圧倒的に活動し続けられるそうです。

例えば、糖質をエネルギーにした場合、人間が使えるのは2500キロカロリー程度。しかし、体脂肪をエネルギーにする場合、たとえば体重60キロの人の体脂肪が20%なら、体脂肪は12キロあることになるため、10万キロカロリーも消費することができます。

したがって、少なくとも長時間動き続ける競技では、体脂肪を使えるような身体の方が良いのです。

では、どうしたらそんな身体を作ることができるのでしょうか。

そのために必要なこととして、鏑木毅さんは以下のことをあげていました。

  • 体脂肪を使っては貯める、というサイクルを繰り返す
    このサイクルを続けることで、体脂肪が燃焼されやすい身体になる。

  • 運動強度が低いトレーニングをする
    運動強度が低いトレーニングとは、スローペースのジョギングなど。このようなトレーニングを積むことで体脂肪を燃焼しやすい身体になっていく。

  • 肉より魚を食べる
    肉より魚の方が燃焼されやすいため。

  • 炭水化物を控えめにする
    炭水化物を取ると、糖質をエネルギーとして使い、体脂肪が使われないため。

体脂肪を燃焼できる身体を作ることは、健康上も良いことのようなので、私も意識してみたいと思います。

過酷なレースから得たもの

鏑木毅さんは、160㎞も走る過酷なレースを完走し、優勝したこともあります。常人には考えられないような境地ですが、それは彼にとっても同じことで、レースの中で何度も心が折れそうになり、強烈な痛みに耐え、時には異常な精神状態になりながら完走しているのです。

つまり、精神的な限界を何度も超える経験をしているのですが、そんな中で彼が身につけた境地は、以下のようなものです。

富士登山競走に挑む中で得た、優勝以上に大きなもの。それは「これだけのことをすれば、こうなり、こんな見返りがくる」という、成功へのプロセスが確立したことです。

これは、鏑木毅さんがトレイルランナーとして初期に走った大会だったそうですが、これを完走することで、どのくらい努力すればどのくらいの成果が出るのか、肉体的に実感できたことが、その後のパワーになったことが分かります。

同種の経験は誰にでもあるとは思いますが、それを圧倒的な過酷さの中で得ることができたため、その後の人生を変えるほどのエネルギーになったのでしょう。強烈な成功体験になったとも言えるのかもしれません。

また、彼は負の感情もエネルギーに変えていったようです。

その思考のポイントは、「誰かを恨まない」ということです。苦い経験の中には、誰かへの恨みのようなものも当然あります。しかし、決してその特定の個人を恨むのではなく、自分の心に負った悔しさだけを考える。それを自分をステップアップさせるエネルギーに転換することがとても重要なのです。

負のエネルギーをプラスに転化するのは、頭では理解できても難しそうに感じます。でも、苦しい経験の中から「悔しさ」という感情だけを取り出し、それをエネルギーにするというのはできそうな気もしますね。

鏑木毅さんは、トレイルランニングを完走することで「鉄の心」も手に入れたと書かれています。

それはまさしく「鉄の心」でした。レースを経験し、その「心」を使うたびにさらに強くなっていく。心というものがまるで筋肉のようなものでできていて、筋トレを繰り返すことでどんどん増強されるようなそんな感覚に似ている気がしました。

この「鉄の心」に「楽しむ心」も手に入れたことで、さらに強くなれたそうです。

私も、古武道というまったおく異なる分野ではありますが、こんな「強い心」を目指しています。どんな分野の人からでも学べるものはあるし、刺激を受けて自分のエネルギーに変えることができるのだと、今回も強く感じることができました。

ランナー以外の方も、ぜひ読んでみることをおすすめします。

まとめ

私も自営業をしながら、自分の剣術の修業や指導にも取り組んでいる、二足の草鞋の生活です。

こんな生活をしていると、もっと良い環境が作れないものか、もっと剣術だけで生活していけないものかと葛藤することも少なくありません。

しかし、『極限のトレイルラン―アルプス激走100マイル―』を読んで、彼にように公務員とランナーという二足の草鞋を履きながらも、大きな成果を出している人がいることに希望を持ちました。こんな人の存在を知ると、もっと自分も頑張ろう、今の環境でも少しでも自分を良くする努力を重ねようと、とても前向きな気持ちになれるのです。


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