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【ショートショート】街ゆく部品

 パソコンの調子が悪い。
 ときどき不意に落ちる。CPUが限界なのか、接触があまいのか、それとも記憶装置に不具合があるのか。
 こんなときは部品を取り替えてみるに限る。
 私は玄関を出て、大通りに出た。歩道をいくひとびとを眺める。
 がしゃ。がしゃ。
 ジャンクロボットが歩いてきた。
 全身から部品がこぼれ落ちそうになっている。
「おーい、ジャンクー」
 と私は声をかけた。
「へーい。ご主人様」
 ロボットがステレオタイプな返事をする。
「こっちへ来てくれ」
 ジャンクロボットは懐中電灯からオーディオ部品、パソコンパーツにいたるまでありとあらゆる部品をくっつけている。一種の公共物で、自由に取ったり剥がしたりしていい。
「CPU、あるかな」
「ございます。左脇のあたりをご覧下さい」
「これは2025年製か。けっこう新しいな」
「あっ」とロボットがうめいた。
「それはいま利用中でございまして」
「なんだジャンクじゃなかったか」
「いいえ、ご使用いただいてかまいませんが、その場合は、わたくしをスクラップ置き場まで運んでいただけると幸いでございます」
 私はCPUを抜き取り、自分のパソコンにセッティングしてみた。パソコンは無事、起動した。
 問題の確認ができたので、CPUを取り外し、ジャンクロボットに戻してやった。
 ふっとロボットの目が開く。
「ここはスクラップ置き場でございますか」
「さっきの場所だよ。原因が特定できたから、もう行っていい」
「ありがとうございます。ご親切なご主人さま」
 ロボットはゆっくり立ち上がると、また大通りへと戻っていった。

(了)

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