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【ショートショート】相席

 レンガ造りのかわいい建物。蔦の絡まった窓が開いている。
「いいね」
 と彼女と顔を見交わし、喫茶店のドアを開けた。
 こちらを向いたマスターに指を二本突き出し、
「二人ですけど、大丈夫ですか」
 と聞いてみる。
「相席になりますが、よろしいですか」
「はい」
 私たちは窓際のテーブルに案内された。
 珈琲とカフェオレ、そしてパンケーキを注文した。
 不思議なのは、二人掛けの席であることだ。どこが相席なんだろう。
 彼女が首を傾げた。
「ここ、喫煙可だっけ」
「いや、禁煙って書いてあったよ」
「じゃ、これなんだろう」
 彼女が指さしたのは、古めかしいアルミ製の皿だった。
「灰皿だね。どうして置いてあるのかな」
 注文の品を持って来たマスターは、
「お待たせしました。あ、お会計ですか」
 と言った。
「えっ」
「いえ、こちらのお客様で」
 ふたつ重なっていた灰皿を表裏にして重ねる。
 ふわっと浮き上がった。
「あ、UFO」
 マスターはポケットから平たい機械を取り出した。UFOが黄色い光を発すると、機械はピロンと音を発した。私たちの知らない決済方法だ。
 マスターがうなずくと、UFOは窓の隙間からすいっと出ていった。

(了)

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