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【ショートショート】計画結婚

「せーの」
 私たちはホテルのラウンジで設計書を交換した。
 私の名はユウジ。彼女はナオコ。
 結婚相談所で斡旋された初デートである。相談所からは登録済みのプロフィールのほかに、人生の設計書を作成してくるようにとのアドバイスを受けた。人生をともにするのだから、あまりにも設計の異なる人同士は無理ということらしい。
 私はナオコの設計書を見た。三十代で産業スパイになる。夫を巻き込み、技術の持ち出しに成功。バレたら海外に逃亡する。
 かなりレアだが、私の設計書も似たようなものだ。開発部の主任になる。技術を漏えいし、蓄財。のちに海外逃亡。
「気があいますね」
 というと、ナオコはにっこりと笑った。
「無駄がありませんね」
 それから、逃亡先はどこがいいかで盛りあがった。一番人気はドバイである。
 私たちは結婚した。
 夢の海外逃亡にそなえ、語学の学習もはじめた。
 十年たったが、私はまだ技術主任になることができず、ろくな技術を持ち出せない。妻は学習ばかりが進み、通訳の仕事を始めた。
 人生、ままならぬ。

(了)

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