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【ショートショート】イタズラ電話

「もしもし」
 知らない番号から電話がかかってきた。
「はい」
「ジュンコちゃん?」
「違いますけど」
 ガチャ。通話はいきなり切れた。
 たしか、ジュンコって言ってたな。オレが男の声で電話に出たので驚いたのだろう。
 意味不明の電話はそれからも断続的につづいた。
 ある日、オレはついに原因を摑んだ。
「なんでこの番号を知っているんですか」
 と聞いたら、
「公園の公衆トイレで見たんだよ」
 と答えた男がいたのだ。詳しく聞くと、場所を教えてくれた。
 「パパになりたい人電話して。純子」という落書きのあとにオレの携帯番号が書いてあった。悪質なイタズラである。オレは落書きを消したが、不審電話は鳴り止まなかった。
 犯人は場所を変えて、落書きをつづけているらしい。
「もしもしジュンコちゃん?」
「違うわよ。失礼ね」
 あれ。私、なんか口調が変わってないか。
 私は落書きを消して回ったが、埒があかない。
 とうとうスマホの電話番号を変更した。これですっきりするかと思ったが、その翌日も、と電話がかかってきた。あたしはぞっとした。
 こわごわ通話ボタンをタップする。
「もしもし、ジュンコちゃん?」
「だったらなによ」
「おじさんと遊ばない?」
「失礼しちゃうわ」
 あたしは勢いよく通話をオフにした。

(了)

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