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【ショートショート】笑う少年

「わ、笑った!」
 叔父さんが尻餅をつきながら、ぼくを指さした。
 ぼくは叔父さんのマヌケな姿にちょっと変な声が出ただけなんだけど。
 公園に父母が駆けつけてきた。
 知らない男の人と一緒だった。
「ぼくは新聞社で記者をしている。すこし話を聞かせてくれるかい」
 母の顔を見上げる。うなずいている。
「うん。いいよ」
「君、もう一度笑える?」
「笑う?」
「おかしくもないのに無理かあ」
 「第二世代、はじめての笑顔」というニュース記事が出た。
 お父さんになにが書いてあるか、教えてもらった。
 戦争が終わって、人はすっかり数を減らした。貴重な子どもは第二世代と呼ばれ大事にされたが、なぜか揃いも揃って無感情になっていた。
 ぼくはどこに行っても、
「笑った子だ」
「笑った子だ」
 と指さされた。
 ある日、きちんとした服装をしたバリーさんとカメラを持った男の人がやってきた。彼らは、ギネス記録という雑誌の記者だそうだ。
「福岡くん、私たちは世界一を認定する者だ。今日ははじめて笑った少年を認定したい。さあ、笑ってみて」
 あのへんな声のことか。
「できません」
 とぼくは答えた。
「それは残念」
 バリーさんはぼくに背を向けた。なぜかうしろは裸でお尻が剥き出しだった。
 ぼくはまたへんな声が出た。
 すかさず、カメラマンがシャッターを押した。

(了)

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