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daisaw33
【ショートショート】モレンド
その子育てロボットには名前がない。
ご主人様である坊ちゃんが名前をつけてくれなかった。
「おまえ」
と呼ぶ。
そのうち誰もが「オマエ」と呼ぶようになった。
オマエは学校の前で、坊ちゃんが出てくるのを待っている。
ほかの子どもたちは次々と姿を消していった。
坊ちゃんは逃げ出したのだとオマエは判断する。
オマエは坊ちゃんの行きそうな場所を探してまわった。
そのうち、モレンドの残量が三十パーセントを切った。いったん家に戻って補給しないと立ち往生してしてしまう。
オマエはご主人様の母親に通信を送った。
「そこで待っていなさい」
と返事が来た。
「いますぐモレンドを持っていくわ」
母親は自転車の荷物置きにモレンドを積んできた。
オマエの腰の蓋をゆるめてオレンジ色のモレンドを注ぎ込む。
これで空でも飛べる。
オマエは両足から炎を出し、空から坊ちゃんを探した。
みつけた。
急降下する。
坊ちゃんは、悪い仲間とモレンドを回し飲んでいた。
オマエは、悪人どもを叩きのめし、哀しげに坊ちゃんをみる。
「モレンドは人間の飲むものではありません。私のようになってしまいますよ」
「いいんだ。それでいいんだ。ぼくは人間なんかになりたくない」
オマエは坊ちゃんの口のまわりをハンカチで拭いた。ロボットなので涙は出ない。
(了)
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