【ショートショート】遠征

「地球？」
　オレは首をひねった。
　話をよく聞いてみると、銀河の端の端にある太陽系の第三惑星だという。
　へえ。うちの御先祖様のお墓はそんなところにあるんだ。
　一億年以上墓参りに行ってなかったので、「墓じまい」をおすすめされてしまった。
「どうすればいいんですか」
　と銀河寺の住職に聞いてみる。
「墓をぶち壊し、遺骨を取り出して処理してもらわねばなりません」
「墓というのは地球のことですか」
「うむ」
「処理というと」
「宇宙空間に散骨するのが手間がなくていいでしょう」
　仕方なく、オレは墓じまいの遠征隊を組むことにした。
　なんと二億五千年ぶりの訪問である。
「船長！」
「なんだ」
「地球に文明が生まれております」
「えーっ」
　たとえどんな幼稚なものでも、文明を消去するには、役所の許可がいる。
「面倒なことになってしまった」
　これも墓参りをさぼって掃除をしてこなかったオレの責任だ。オレは墓じまいをあきらめた。
「掃除もできなくてごめん」
　御先祖様に謝った。

（了）

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