【ショートショート】白いブラウス
カツコは湯上がりにバスタオルを巻いてドライヤーで髪を乾かしていた。ふと気がつくと、白いブラウスを着ている。
「あれ、いつの間に。ま、いいか」
ジーンズを穿いて買い物に出る。
そろそろ衣替えの季節。
大衆的な衣服店で薄手の靴下を見ていると、ぱっと手品のようにブラウスが消滅した。
「きゃあっ」
カツコはあわてて近くにあったブラウスを手に取ると、レジへと向かった。
店員のおばさんが、
「あらあら」
といった。
「支払いはあとでいいから更衣室で着てらっしゃい」
「ありがとうございますっ」
そして、怖い話を聞いた。昔この街にはブラウスの縫製工場があったそうだ。火事になって、たくさんのブラウスが焼けてしまった。
ブラウスの幽霊が出始めたのは、それからだそうである。
裸の人間に取り憑くのだ。
「べつに悪さはしないのだがね」
とおばさんは言った。
「突然成仏するのだけが迷惑だねえ」
(了)
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