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株式会社サンディアスの採用の本音について綴ってみる【後編】

「やる気」「熱意」で採用していたが…


「やる気」「熱意」三十路にさしかかろうとするまで、フリーターとして過ごした自分。
「ちるちる」をスタートする半年前まで「BL」をまったく知らなかった自分。
 
こんな自分が、弱小ながらもBL会社を15年以上継続できたのだから
「やる気」で仕事はできる、仕事の「センス」は磨けると思っていました。
 
そんなわけで最初に求人を開始したときは、BL知識がなくても「やる気重視」で採用を行っていましたし、「やる気」さえあれば、きっと誰でも何かできるようになる!「自分ができたのだから他人もできる」という思想がありました。
なによりこの考えを認めないと、自分の経験そのものを否定することになりかねません。が…正直なことを言えば、面接経験が足りないので、採用の基準として拠り所にできるのが「やる気」しかなかったのですが…。
 
記者募集では、好奇心旺盛かつ個性的で能力のある人材がいきなり集まってきました。
他に「BL記者」という募集求人などありませんでしたので、得体のしれない会社への警戒心より好奇心が勝った方が、弊社のドアを叩いてくれた方が多かったのでしょう。
そうした方々は「やる気」「実力」が伴っていることが多く、いわゆる「仕事ができる」方が多かったです。
まだこの時期は、社内完結する仕事ばかりでしたので、仕事ができる人は自分の裁量で自分のやりたいようにやっていました。

教えても上達しない人もいる


しかししばらくするとはっきり能力別に記者が分かれるようになりました。

細かいことを教えず放っておいても記事のアクセスが取れる方とそうでない方
そして教えてもなかなかアクセスが取れる記事が書けない方

 
2タイプの中間があまりなく、どんどん両極に分かれていき、その差が広がるばかりです。
記事がうまく書けない方に改善策を口酸っぱく言っても、まったく効果が出ない、または一回効果が出ても次は元に戻ってしまう。そんな状態が続くと、お互い気まずくなるだけなので、次第に何も言わなくなっていきます。
さらに記事でアクセスが取れる方は、企画のセンスがよく、かつ実務もこなせる方が非常に多く、記事とは違う仕事もどんどん任されていく。もう全面的に「できる人」「できない人」の差が広がっていくのです。
 
組織の中で、仕事を任せられる人、任せられない人の実力偏差があまりに大きいと、スタッフで協力しあうより、独立でそれぞれ個性を発揮したほうがよいでしょう。能力に差がありすぎる人がチームを組むとかえって機能しなくなるのです。
 
「仕事のできる人」「センスのある人」と漠然とこれまで説明していますが、目に見える現象からもう少し細かく定義すると、「仕事が自然に集まってしまう人」といえるのではないでしょうか。
逆に仕事を頼むことをなんとなく忌避されがちな人は「仕事ができない人」ということになります。
「仕事を頼みたくない人」のまわりには仕事が寄ってきません。仕事を頼むとかえって自分がチェックすることになり、手間が増えるからです。
頼んだ仕事の”戻し”(自分がやったほうが早い)”巻取り”(最初から自分でやった方が早い)が続出し、自分の手間が増えることが目に見えているので仕事を振りづらいのです。人手が欲しいのに仕事が振れない…という苦々しい局面となってしまうのは自然な流れかもしれません。
 
「仕事ができる人」から辞める現象というのは、他の人に頼みたくても頼めない(人間関係の比重よりも能力の比重)それを周りが気づかない孤立無援状態が無期限に続くことに絶望し耐えられなくなるからだろうと思います。
 
では実力が開かないように、教育の充実、様々な研修でなんとかする!とたいてい思いつくかと思います。
よりよい教育、研修を行えばみんな成長できる、育成体制が不十分だから実力が均一化しないのだ、という方がいるかもしれません。
しかしその仕事に必要な「センス」を持っていない人はその会社で「仕事ができる」ようになるとは思えないのです。

クビ続きの自分はセンスがあったのか?


自分の仕事を振り返ると、30代まで自分のセンスを活かせない仕事ばかりしていたように思います。
一番最初のバイトはラーメン屋でしたが、勤務態度が怠惰で1ヶ月でクビになりました。その後、コンビニ、塾、居酒屋のバイトをしましたが、クビにこそならなかったものの、戦力には程遠かったと思います。大学を卒業してフリーターとして勤めたプリントショップでも勤務態度がよろしくなく3ヶ月でクビとなりました。
こうやって書いていると、とても履歴書に記入できる内容ではないことがわかります。
その後、道路の舗装バイト、地ビール屋バイトを経て上京することになるのですが、ここでやっと自分の「センス」に合う仕事を見つけることができました。
 
前編の冒頭でも書きましたが、えっちな雑誌を作っている会社に30代手前で入ったのです。が…。しかし実は私はここでも入社3ヶ月で解雇すれすれのまったくダメ社員だったのです。
そんな私の転機になったのは、あるレポ記事を自発的に執筆でした。自費で勤務時間外に勝手に企画実行したものでしたが、入社以来ダメ社員認定されていた社長にほめられました。驚きました。今回の成果物に対しては社長も能力を認めざるを得ず、首の皮一枚で会社に繋がったのです。
 
その件で仕事に対して初めて手応えを感じ、水を得た魚のように自発的に仕事をしていきます。
読者の反応もよく雑誌の売上も伸びていきました。その後はほとんど自分の提案で特集記事が組まれていくことになり、自信もつきました。
 
自分にとって逆風の環境であっても、持ち前のセンスがある方は、そのセンスをある程度センスを発揮できる機会は訪れるし、これまでの評価と異なり、同僚、上司も認めざるをえない場面はきっとあるのではないかと思います。
最初は仕事ができなくても、徐々に前よりもできることが多くなる。隠れた能力が開花しつつある。ひょんなことから適正のある仕事がわかる。
ということがあります。
自分の場合は、記事を当時の社長に認められたことがきっかけとなり、血栓が取れ血流がめぐり、フリーズしていたシステムが再起動して、本来の自分を取り戻したという感覚でした。

熱意と教育は対処療法どまりで終わる


世の中には「できるようになるまで教えろ、できないのは上司の熱意が足りないからだ」「社内教育のやり方がよくないからだ」みたいな言説をよく見かけますが、これは会社がスタッフに常に働きを行えば、スタッフが習慣づけられ、気づきが起こって変化が起こる、という考えが基本にあると思います。
しかし私の体験から考えると、特定の場面では習慣づけられはしますが、もとから気付くセンス、システムを持っていない方の場合は、応用が効かないので、日々新しく遭遇する場面でその教育効果が発揮されることはほとんどないでしょう。
「熱意で補填する」「社内教育のあり方」で一定程度まで改善はできますが、あくまで対処療法レベルで終わってしまうでしょう。
 
やはりその仕事にあった「センス」を持っているがいないか、の見極めが重要なのです。

過去の自分を全否定


こうした「採用」への心境変化が起こった要因を考えてみました。
実は自然にそうなったというのが正直なところなのですが、無理やりこじつけて考えると前編でも語った昨今のBLブームが最大の要因です。
創業以来ゆるゆるマイペースで創業メンバー中心の身内会社経営をしてきましたが、BLブームになったことで、他社がどんどん参入しはじめ、マイペーススタイルは許されなくなってきました。
拡大成長を目指すか、マイペースで衰退していくか、二者択一を迫られることになったのです。
衰退よりは成長を目指したいと思いますので、自分も気が進まないながらその道を選びました。
自分のやりたい仕事を気が向く時にやってきましたが、本格的に経営者として立場を意識して仕事をせねばならず、遅ればせながら会社経営の勉強し、その実践を行い、データとして蓄積させていきました。
会社の成長にもっとも効果が大きいはなにか……・
これまで試行錯誤した結果、やっとたどり着いた結論は「人材」。これに付きます。
ビジョンとか戦略とか資金とか知財とか先見性とかいろいろ要因がありますが、弊社のようにある程度会社が形作られてきたら、「仕事のできる人」に入っていただいて、活躍していただく!に尽きるということになります。
 
多くの経営者が本や動画でみなさんが「人材」の大切さ語っていますので、ここに来て当然のことを言うなと思われる方も多いかもしれません。
しかし最近まで自分はこう思っていました。

「仕事ができる人」が集まっても肝心の仕事がなければ本末転倒ではないか、それに「仕事ができる人」が入ってきて仕事の効率はよくなるかもしれないけど、売上が直接上がるわけではないじゃないか、と。

ところがなんの因果関係があるかわかりませんが、仕事が入ってくるようになりましたし、売上が上がるようになりました。不思議です。
「仕事のできる人」に入っていただくために「採用」に力を入れなくてはいけない意味がここで初めてわかりました。

自分のようなマイペース人間を一般モデル化して、「やればできる」という思想に寄り添っていたのは、過去の自分を甘やかす行為だったのかもしれません。
 
前編を書き終えてから心理的にひとつ区切りがついたような気がしましたので、株式会社サンディアスの採用の本音について綴ってみました。
自分ネタは前編だけで終わることが多かったので、後編が書けて本当によかったです。


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