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多様な働き方を認めるコアレスフレックスが男性育休100%を生んだキャッチネットワークさん

前回の記事では、大企業、大和証券グループ本社さんの取り組みをまとめてみました。

大きな企業でなくても、男性育休の取得率100%の企業もあります。
そこにも、ヒントになることがありそうです。

男性育休の取りやすそうな企業
第4回
株式会社キャッチネットワークさんです。

従業員200人、育休100%

キャッチネットワークさんは、愛知県の西三河地方にあるケーブルテレビの会社です。
従業員数は約200人で、これまで取り上げてきた企業に比べると、規模の小さな会社です。

規模の小さな会社では、従業員数が少ないため、育休を取得しようとする人の業務の引き継ぎや分担がしづらい環境にあります。

このような環境でも、キャッチネットワークさんでは、子どもの生まれた従業員の全員が、育児に伴う休職や休暇を取得しています。
2015年度以降、100%が続いています。

働き方改革の3つの大枠

キャッチネットワークさんが目指しているのは、従業員が男女の区別なく、定年を迎えるまで成長し、活躍し続けることのできる会社です。
このような会社を目指し、働き方改革を進めています。
働き方改革の大枠は、従業員の意識変革、制度の変更、環境の変化です。

■従業員の意識改革
意識変革の具体的な取り組みのひとつが、男性の育休取得の推進です。
子どもの生まれた男性に対して、本人、上司、総務課の三者面談を行うようにしました。
面談では、育休中の業務の割り振り、育休取得による給料の変動の資料が示されます。
この資料をもとに、どうしたら育休を取得できるかを考えます。
このような面談があることで、育休を取得することで生じる大きな不安を減らすことができます。
特に、自分の担っている仕事を誰かにやってもらうことで迷惑をかけてしまうのではないかという不安は、この面談によって払拭されるようです。

■制度の変更
キャッチネットワークさんには、それまでの制度を変更したことで、多くの従業員に利用されるようになったものがいくつかあります。

一つ目は「思いやり休暇」制度です。
この制度は、失効した有給休暇を最大20日間積み立て、本人の傷病、家族の育児、看護、介護に利用することができるとするものです。
法定通りならば、最大40日となる年次有給休暇。
加えて、育児にも使える20日分の「思いやり休暇」。
「思いやり休暇」を育休の代わりに利用すれば、育休中の収入減を回避することができます。

二つ目は育休取得期間の変更です。
育休取得期間を1歳6カ月まで、または1歳の年度末までのどちらか長い期間、と変更しました。
法定通り1歳の誕生日の前日までとなると、0歳児から保育園に預けなければなりません。
1歳の年度末まで育休が取れれば、1歳児から保育園に預けられるようになります。

三つ目、育短期間を小学校就学の始期までに。
子どもの生活を整え、健康な体を作るために、とても重要な育短。
法定通りならば、3歳の誕生日前日まで。
小学校就学の始期までとなれば、延長保育の必要もなくなります。

四つ目、コアレスフレックスタイムの導入。
コアタイムのない4時間のコアレスフレックスタイムを導入しました。
始業と終業を自分で決められるのです。
9時に保育園に送ってから出勤し、15時のお迎えのために退勤することができるのです。
コアレスフレックスタイムに対応するための環境も整えています。
フリーアドレス、テレワークができるようクラウドシステムを整えました。
RPAを活用し、単純作業に人材を割かなくてすむようにしています。

多くの変更のなかで男性の育休取得に貢献した制度は

キャッチネットワークさんは、様々な制度変更を実施しました。
これらの制度変更の中で、男性の育休取得に最も貢献したのは、コアレスフレックスタイムだと考えます。

コアレスフレックスタイムは、男性の育休取得に、直結する制度ではありません。
では、なぜ、コアレスフレックスタイムが最も貢献した制度だと考えるのか。
なぜなら、コアレスフレックスタイムは、育休取得できる状況の人だけが恩恵を受ける制度変更ではなく、どの従業員も自分の働き方を変更できる恩恵のある制度だからです。

つまり、子どもが生まれたことで特別な扱いを受けるのではなく、それぞれの家庭の事情や個人の事情に応じて働くことのできる環境が整っているということになります。

多様な働き方を認める土壌があるからこそ、男女関係なく、対象者の全員が育休を取得できているのだと思います。

育休取得した人の業務を誰が担当するのか

キャッチネットワークさんの育休は、育児休業だけでなく、有給の育児休暇も含んでいます。
男性の多くは、最大20日間の「思いやり休暇」制度を利用していると推測されます。
20日間全てを利用すれば、約1カ月。
1カ月程度であれば、1人の従業員が担当していた業務を、周りの従業員でフォローしあい、耐え抜くことができるかもしれません。

キャッチネットワークさんでは、育休前の三者面談で、業務の割り振りが行われます。
この言葉から推察すると、育休を取った従業員の業務を他の従業員で割り振っていることになります。

物理的な時間に余裕のある職場では、他の従業員で業務を割り振っても大きな負担を感じないことでしょう。
大きな負担はなくても、できることならば代替の人材を確保してほしいと思うのが、従業員の本音でしょう。
しかし、業種によっては、代替の人材を確保することは難しいことです。

今後、高齢者雇用安定法による70歳までの雇用が求められるなかで、65歳以上の経験豊富な人材が増えてきます。
65歳以上の経験豊富な人材を、育休だけでなく、介護、看護、療養の代替に活用できるようになる。
そうなれば、数カ月、数年単位で育休を取得しようと思う男性が増えてくるのかもしれません。


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2021年6月14日「男性育休の取りやすそうな企業(4) ─ 株式会社キャッチネットワークさん ─」からタイトル変更しました。

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