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YouTubeに学ぶ意識の技術としての「合気」について

今回のnoteは、意識の技術としての「合気」について、前回の記事も踏まえながら考察していきます。


ここ数年、YouTubeで合気武道に関する動画が多数出てきています。
そして、今まで色んな流派や他武道の伝承などで散在していた知識が、YouTubeというオープンな場で刺激し合い、多面的な合気の像を写し出しているようです。

①中心意識の鍛錬

そのなかで、個人的に一番興味深かったのが、「秀徹空手道」さんの動画です。

いきなり空手なのですが、塩田剛三先生や肥田式強健術の本を参考に工夫された中心意識の鍛錬方法が素晴らしい。

結局、足と腰が大切なのだ。
自然に腰に力がはいるような体にならなければいけない。(「透明な力」p186)

中心意識の鍛錬については、「透明な力」に上記のようにあり、具体的には「合気道の奥義」に様々な記述があります。

「合気道の奥義」

腰の筋肉、腹の筋肉が太く発達しなければならない。(p355)

合気を使う体は糸を張ったように使う。どこまでも糸をピンと張ったように連続していく。それをそうでないように見せて使う。(p357)

自然体。足幅は肩幅よりやや狭く、自然な形がもっとも理にかなっているので速く動ける。腹にサッと力をとり足に力を入れず体を捌く。(p65)

すべて腰が基本となる。木刀を振るときに腰で出る。腰に応えるように出なければならぬ。(p98)

木刀は肘を伸ばし、先端に力が集中するように振る。(p100)

秀徹空手道さんの動画にある、「仙骨を入れて、胸を引き立てる」という意識は、上記の合気の体の鍛錬や意識に近いと思われます。

実際、佐川幸義先生の突きや蹴り、掴み、剣先の威力は軽くみえても凄まじい重みがあったそうです。
そしてそれらの現象は、こういった鍛錬を積み重ねた結果だったのではないかと考えています。

特に、胸部の意識を引き上げると同時に丹田と脚に押し下げる方向の意識を生み出し、その結果相手に当たる末端に驚くほど力が集中できるという上下の意識を同時に使う発想は、今後合気の力を生み出すための研究を進めていく鍵になると思います。

(追記)この胸骨を引き上げと骨盤の引き下げ理論は、「月刊秘伝 2003.9月号」の日野晃先生の特集に詳しく解説がありました。(抜粋版はこちら
具体的な動作についてはこちらの動画で確認できます。

9/7追記

秀徹空手さんの基本姿勢に関する動画がリニューアルしたので、リンクを更新しました。

以前の動画の内容について、10年以上お世話になっている整体の先生に確認したところ、ちょうど今回の動画で説明があったように、「仙骨のある部分だけを反らせるのではなく、背中を壁に沿わせるようにから真っ直ぐ伸ばす感覚に近いのでは?」と指摘を受けました。

実際にやってみると背部だけでなく、下腹部にも軽く力が入った感覚になり、顎が自然に引かれた姿勢になります。いわゆる肥田式の腹背同圧のような感覚なのかも知れません。

この感覚で、「佐川幸義 神業の合気」にも出てくる合気体操(合気の鍛錬)を行うと、体幹に物凄く響く感覚が出ます。

特に四股と蹴り、揚げ手、腕立ては別物の鍛錬になるのは興味深いです。

②「力の吸収」と丹田の意識

次に興味深かったのは、塩田剛三先生のお孫さんである、塩田将大さんのチャンネルです。

そのなかで、養神館 龍の安藤毎夫先生と
阿吽会の阿久澤稔先生の動画は、丹田の意識と「力の吸収」について踏み込んだ解説がありました。

前提として、①の中心意識の鍛錬が必要ですが、鍛錬がある程度できていれば、丹田の一点に敵の力を集めて吸収し、相手に返すことが出来ることを、実際に解説実演されているのはとても貴重です。

そして佐川幸義先生の高弟である、小原良雄先生の記事にも近い記述があります。

「月刊 秘伝2019年2月号」

四方の力を一点に集中させることで均衡、釣り合いを保った後に、「内部感覚をもってその力を吸収・分散させる(p27)

"引く勘"による合気で三方からの力を体の内部一点へ集めた沈身で抜き、一瞬にしてその力を体之合気で返し、三人を弾き飛ばす。(p34)

これは多数捕を一瞬で飛ばす体之合気の原理の一端ではないかと考えています。

③体の外の「イメージ」

その他、私自身が体験してきたイメージを使う技術に近い動画もありました。
やわらぎ道さんの一心館 須一和晃先生の動画と、②と同様塩田将大さんの日野晃先生の動画です。

須一先生は「念いの力」という表現をされていますが、日野先生の動画を合わせて観ると

自分の身体感覚の意識を延長させて、そのイメージ像がある地点に技を掛けている

ことが分かります。

特に日野先生の体操による身体意識のコントロール手法は、自分の後頭部付近から前方へ回り込み、相手に自分の身体意識が到達しています。

これは「合気完結への旅」にも、同様の表現があります。

ぼくの後頭部から紫色のオーラが、もやもや広がっていって相手をしていてくれる人のオーラ(中略)の中に、モニョモニョモニョと侵食していき、(中略)そうすると相手の身体が僕の思いどおりになる、そういうものが合気(p19,20)


ただ、この身体外の意識を使った技術には、私の経験上相手との相性があり、空手などの純粋な武道をやっている方には掛かりやすいのですが、相手を遮断するような意識の強い方には掛かりにくいという特徴があります。

そのため、この身体外の意識コントロールも合気とするなら、佐川幸義先生も

「合気でできることは、力と技とでも同じことができなきゃいけない」、だから両方できてやっと一人前だ(「合気完結への旅」p26)

とおっしゃっていたとおり、力と技(合気の力とそれを生かす角度やタイミングなどの技)も同時に修得しておく必要があると言えます。

④意識の技の要点と雑感

合気の研究は20年以上になりますが、体験するしか修得できないことが常識だった武術が、遠隔地にいながら色んな流派の方の刺激をいただいて、発展できる可能性が出てきたことは驚きであり、とても楽しみな動きです。

今まで本や雑誌の連続写真やDVDなどもありましたが、他流を友好的に体験し合うコラボ企画などは今までほとんど公開されていませんでしたので、素晴らしいことです。

今回、意識(イメージ)の技術の視点で「合気」に関する考察しましたが、一番大切なのは「思い込む力」だと思います。

不思議なもので、意識を使う技術は100%出来ると思い込まなければ出来ません。

ここのハードルを超えるためには、やはり一度は今回掲載させていただいた動画の道場や先生方を訪ねて、体験させていただくことが早道です。

しかるべき方法で連絡を取って、ご訪問や体験なさってください。

この記事が、皆様の武道をさらに深めていただくきっかけになれば幸いです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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