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『「絵になる」まちをつくる ~イタリアに学ぶ都市再生~』を読んで

「絵になる」というのは美学だと思っている。その価値観はそれぞれだが、こだわりを持つことでそれは達成される。一方で、こだわりたくともその裁量の範囲が狭ければ残念ながら「絵になる」ものを実現するのは大変に難しい。そう思っている。

古都と言われる京都でも鎌倉でも美しい寺社仏閣は残るが、その周りは現代的な建築や高層ビルが映り込んでしまうなど必ずしも「絵になる」状態を作り出せていない。仮に僕が外国からの訪問者だとして、日本に昔ながらの情景をイメージして来訪した場合は落胆してしまうこともあるだろう。

その意味では日本は隙間や余裕が少ない。だから限られた土地や空間にどんどんと建物を建てる。それはそれで仕方ない側面もあるのだけど、このスタンスで「絵になる」状態を作り出すのは大変に難しい。個々に好きな色、高さ、形を選んで建ててしまえば、統一感を作り出すのは難しいからだ。

もう1つ気になることはまちとまちの切れ目がないことだ。まちとまちの境目はあるが、住宅やビルが途切れることは都心部ではほぼないのではないだろうか。まちとまちの間にスペースがあれば、そこに公園や広場に散策路、自転車や人の通行しやすい道だったり色々な活用方法が生まれてくるのだが、限りある土地を細かく活用してしまった結果、大きな絵図が描きにくい状態を生んでいるように思う。だから、日本で「絵になる」状態を作り出すのは本当に難しいと思う。

では、「絵になる」とは具体的にどんなことを指すのだろうか?

以下、読書感想として2箇所ほど触れてみたい。

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「絵になる」まち(P.83から引用)

中世、ルネッサンス、バロックと、時代によって工法は異なるものの、イタリアのまちは「見られる」ためにふさわしいつくりをしていることに間違いはない。それこそ、ファッション雑誌や映画の舞台にもなるような、美しい「絵」を私たちに楽しませてくれるのである。
 一方、近代的な都市の中で写真を撮ろうとしてもなかなか「絵」にならない。日本のどのまちでもいい。思い浮かべていただければ分かると思う。これは、派手な広告・看板が目につきすぎること、建物の材料やデザインが貧相で画一的であること、建物の高さ・大きさが不揃いで、街並み全体としての統一感に欠けること、などに拠るものだろう。


まちの「ビジョン」や「世界観」(P.94から引用)

統一感のある都市、調和的で美しい、「絵になる」まちをつくるためには、①時代や地域的特殊性を超越するような壮大なビジョンを描いて構想するか(古代・中世)、②人間に絶対的な影響を与えるような何ものか(超越存在)に帰依するか(中世)、どちらかの方法が必要になるといえよう。 (中略) また、効率・機能・利便性を向上させるための単なる手法論に終始しており、世界観とは無縁である。だから、近代都市計画では、都市や風景をつくることはできないのである。


ヨーロッパに行くといつも思うことがある。

それは教会を中心に広がる広場、そしてその街並みの美しさと旧市街を保存していることだ。これこそが「絵になる」であり、美学である。翻って日本はどうか?細分化したまちづくりを行なったため、広場は難しいかもしれないが、まちの中心とは行かずとも、立派な建築の寺社仏閣は多数ある。その周辺の家並みの外観の色味の統一をするだけで随分と印象は変わるはずだ。

2016インスブルク


香港の話

山を走っていると、突然、その向こうに高層ビル郡がニョキニョキと映えている。これでもかという細長いビル群を建てた街並みとその裏側に広がる山々。これはこれで香港らしさだ。エネルギッシュな都市部、その対極としての側面を持つ、変化に富んだ山。これぞ香港という感じがして「絵になる」と思う。

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「絵になる」は1つではない

矛盾するように聞こえるかもしれないが、美学や個性に1本筋の通ったものがあればそれはそれで「絵になる」と思う。日本では?個々のまちでは?それぞれに答えがあるはずだ。繰り返しになるが「絵になる」ことは美学であると思う。また、明確に打ち出せばまちの誇りにもなりえる。そんな街が増えたらいい。

この本を読んで色々なことを考えさせてもらった。


【今後の予定】
6/20(日)ジュニアトレイルランニングスクール〜逗子のローカルトレイルを走ろう〜
9/26(日)第6回NAGANO Jr TRAILRUN in 富士見高原
10/17(日)第13回TOKYO Jr TRAILRUN兼-U15ジュニアトレイルランチャンピオンシップ

11/7(日)逗子トレイル駅伝2021兼U-12ジュニアトレイルランチャンピオンシップ

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2021-05-12 07.45.23のコピー


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