サンタさんからの贈り物

「なんだこれは!!!!ふざけるのもいい加減にしろ!!!!」

クリスマスイヴの日の会議室に部長の怒鳴り声が響き渡る。




今日はクリスマスイヴ。
そんな事は社会人にはもちろん関係なく、今日は月1の大切な戦略会議の日。
数十人の者が会社の会議室に集まって、今月の反省会兼来月の打ち合わせだ。

部長が入ってくる。
声を発さなくても分かる。明らかにイライラしている事が。
バーコード頭の髪の毛をポリポリしながら歩いてくる。ご機嫌ななめの合図だ。
今月の売り上げがよろしくなかったんだろう。

部長がホワイトボードの前に立つ。
何かを書こうとしたとき、部長は気付いた。ホワイトボードに小さなクリスマスツリーの落書きに。
部長の怒鳴り声が狭い会議室に響き渡る。


「今から大事な会議だというのにこんなくだらない落書きをしたのはだれだ!正直に言ってみろ。」

皆が皆、自分ではないというアピールかのように周りをキョロキョロする。

その時だった。社内でもあまりしゃべってるのを見たことがない新入社員の山下が言った。

「あの~この落書きサンタさんからの贈り物なんじゃないでしょうか?」

部長は一瞬固まり、しばらくして大きく息を吸い込み言った。
「はっ!?」

山下はすかさず言う。
「だから~クリスマスイヴにも頑張って仕事してる僕達へのサンタクロースからのささやかなプレゼントなんじゃないでしょうか?」


部長は大きく目を見開いた。
こいつ正気なのか?という疑いの目だ。
山下の発言は聞こえてなかったかのように、ホワイトボードのツリーを勢いよく消そうとした時だ。

「部長!本当にサンタクロースからの贈り物だったら消しちゃうともったいないですよ。せめて今日くらいは消さずにおいときましょう」

経理の宮本さんが言った。部長のお気に入りの女の子だ。

部長はバーコードの頭をポリポリしながら消すのをやめ、そのまま会議を始めた。
ホワイトボードには部長の書いた【来月の予算】の文字。
その横には小さなクリスマスツリーの絵が。

「ツリーの絵じゃなくて予算を持ってきてくれよ」
部長のボソッと言った一言で、会議室に笑いが。



明日はツリーの横にサンタクロースも描こうかな。

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