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物価は上がっているようだが・・(2)

先日の投稿「物価は上がっているようだが・・」では、仕入れなどの企業間の取引物価(卸売物価)は上がっているものの、消費者物価は上がっていない現状について取り上げました。その後も、この傾向がさらに拡大しているという情報が散見されます。

例えば、11月13日の日経新聞の記事「インフレと向き合う(下)値上げできない日本」では、次のように説明されていました(一部抜粋)。

~~まるでワニの口のように企業物価と消費者物価の上昇率の差が開き、離れていく。これこそが日本経済が直面する苦悩だ。企業物価は記録的な上昇局面にある。企業物価指数は10月に前年同月比8.0%と40年ぶりの上昇率になった。エネルギーや金属・木材などが押し上げる。

ところが、消費者物価の上昇率は0%台に張り付く。川下の最終製品やサービスまで値上げが広がらない。企業物価を追いかけるように消費者物価が30年ぶりの6%台になった米国とは全く異なる風景が広がっている。

世界経済を揺さぶったコロナ禍だが、各国経済の実力はむしろ正常化へ動き出すいまの方が差が際立つ。米国では7~9月の個人消費はコロナ禍前の19年7~9月と比べて10%増えた。逆に日本の4~6月期は2年前より5%少ない。

そこにあるのは賃金が上がらない日本が抱える構造問題だ。経済協力開発機構(OECD)によると、過去30年で米国の名目賃金が2.6倍になったのに対し、日本はわずか4%増にとどまる。賃金が上がらないために需要が弱い。企業は原料高を転嫁したくてもできない。利益が伸びず、賃金も上げられない。この循環から抜けられない。

輸入物価指数はすでに前年比で4割高い。ここからの円安は、日本をいっそう貧しくすることになりかねない。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは1バレル80ドル台の原油価格や前年比で5%程度の円安が続くと、家計負担は年2万9000~3万5000円増えると指摘する。~~

30年で賃金が4%しか増えていないということは、消費税や社会保険料が上がったことを考えると、購買力はまったく上がっていないどころか下がっていることになります。この間、日本の国際競争力が下がり続けていることもうなずけます。

商品・サービスの価格を上げられないから賃金が増えないのか、賃金が増えないから消費が起こらず商品・サービスの価格を上げられないのかは、鶏と卵みたいな関係で、どちらが起点とも言えます。いずれにしても、そろって停滞し続ける負のスパイラルが回っていると言えます。このスパイラルが回り続けたまま卸売物価が上がり続けると、今まで持ちこたえていた企業の倒産が連鎖していくことが懸念されます。

「物価は上がっているようだが・・」では、私たちの事業活動の中で考えられることとして、次の3点を考えました。
・販売価格を上げることができないか模索する
・単に販売価格を上げるだけでなく、付加価値を加えた上で価格を上げられないか模索する
・工程を見直し経費で削減できることがないか模索する

上記などで余力を高めた上で、4つ目として次のことも挙げられるのではないかと思います。
・より多様な雇用形態を受け入れ、より多くの人を雇用する

その手がかりとなる示唆が、11月11日の日経新聞記事「漂う雇用(下) 若者苦境「もっと働きたい」」で、次のように説明されていました(一部抜粋)。

~~「カラオケ店が休業になった。働き場所がなくなって」。関東圏に住む男性(37)は新型コロナウイルスの感染拡大以降、デリバリー配達員の仕事で生活費をまかなっている。業務を受託する登録先が1つでは必要な収入を確保できず、今では3社の仕事を掛け持ちしているという。

失業率が3%前後で安定して推移するなか、急増したのが「もっと長時間働きたい」という追加就労希望就業者だ。21年7~9月期は222万人とコロナ感染拡大前の19年同期の1.3倍に膨らんでいる。目立つのが若い世代だ。

追加就労希望者は米国では「広義の失業率」に含まれる。失業者数とほぼ肩を並べる人数は、希望通りに働けていない人が表向きの失業率よりも多いことを物語る。

一方、ニーズが高い業種への労働移動は進んでいない。9月の有効求人倍率を見ると、医療や福祉の職種は1.6~3.6倍、建築・土木の技術者では5倍を超えた。資格や経験を必要とする専門職がほとんどだ。新たに出た求人と求職者で比較した新規求人倍率はさらに高く、人材が必要な業種に集まらない「ミスマッチ」が広がる。~~

人材不足と言われ始めて久しいですが、もっと働きたいというニーズは往々に存在しているというわけです。対応するための方法として、例えば以下などが考えられるかもしれません。

・職場の業務で、初心者でも任せられる作業を集めて、上記のような掛け持ち就業者に担ってもらう。
・そのうえで、専門職は資格・専門性が必要な業務に集中する。
・掛け持ち就業者が経験を積みながら勉強し有資格者となる。

こうすることで雇用を増やし、新たに賃金を得られる人が増えて消費が増えれば、消費者物価も好転していく流れになるかもしれません。

ところで、この消費者物価安・卸売物価との乖離はいつまで続くのでしょうか。以前、ある有力な投資家が次のことを言っていたのが印象的でした。

「異常は、長くは続かない」

バブル経済が崩壊したのも、バブルという異常な状態がいつまでも続かなかった結果です。普通に考えて、お金を貸しているほうが金利を払うマイナス金利は異常な状態です。何十年も物価停滞・金利ゼロが続くのも異常でしょう。世界最大の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)の動きにその兆候を見て取れるのではないかと感じます。

TSMCがソニーグループと共同で熊本県に新工場をつくるという話ですが、これはインパクトのある出来事だと思います。要因のひとつが、他国に比べて割高だった日本の製造コストが、一転して下がっていったことにあるでしょう。さすがにすべての製造業が国内回帰するとは思えませんが、日本の物価が停滞し続けるほど、現存する製造拠点も製造コストが割安になっていくということになります。その傾向が続けば、どこかのタイミングで賃金に還元されるはずです。

また、どこかのタイミングで観光などの国外渡航が世界的に再開されます。そのときには、日本国内外の物価差が開くほど、外国人・外国資本の流入圧力が強くなります。いつの時点になるのかはわかりませんし、他国に遅れての動きになることは必定ですが、物価停滞・金利ゼロなどの異常は、どこかで終わりを迎えることになるのではないでしょうか。

それまで、身の回りで今できることに取り組んでいくとしましょう。

<まとめ>
これまで以上に多様な雇用形態で、より多くの人を雇用するのもあり。


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