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イタリア車のポジショニングに学ぶ

先日、ドイツ系の自動車販売店の役員とお話する機会がありました。その時のお話がとても印象的でした。
同店も例外ではなくコロナ禍の影響により、販売が落ち込んでいるそうです。自動車業界で売れにくい時に聞く「販売奨励金」策も拡充しているものの、今回はいつになくやはり厳しいとのことです。

そして、消費者にとっての車の位置づけに話が及びました。

「日本車は壊れない。ドイツ車も壊れないけど敢えて言えば日本車が勝る。イタリア車は壊れる。しかし、すごいと思うのが、イタリア車を買う人は、みんな壊れる前提で買っていくことなんです。だから、うちは日本車とは勝負できても、イタリア車とは勝負にならない。」(多分にこの方の主観が入っています。また、イタリア車を悪く言うつもりはありません。)

イタリア車は壊れるのを前提にして買う、すごいことだと改めて思いました。フェラーリ、アルファロメオ 、マセラティなど、イタリア車には特有の世界観があるなどと言われますが、その方の言葉を借りると、「壊れるのが分かっていて買う」わけです。日本車に対しては、全く通用しない前提でしょう。しかし、売値は日本車よりはるかに高いのです。

「ニュータイプの時代」(山口周氏著)では、車のポジショニングについて以下のように説明しています(「意味がない」というのは少しきつい言葉ですが、そのまま引用します)。「役に立つかどうか」「意味があるかどうか」の2軸で考察すると、論外である「役に立たない×意味がない」を除き、3つの象限に分けられます。

役に立つ×意味がある:主にドイツ車
役に立つ×意味がない:主に日本車
役に立たない×意味がある:主にイタリア車

「役に立つ」は、移動手段としての機能です。他方、「意味がある」は、メーカーや車にまつわる歴史・ストーリー・象徴・デザインなどその車だからこそ得られる味わいです。「瞬時にものすごいスピードが出せる馬力」が公道で役に立つとは思えませんし、地響きするようなエンジン音も同様です。しかし、イタリア車がそれを備えていることで、意味を成していると言えます。

冒頭の役員のお話は、他社商品・サービスの意味をコピーすることはできない、自社商品・サービスの意味を育て上げた会社は強い、ということを示唆しているでしょう。だからこそ、イタリア車は価格競争に巻き込まれることも少ないでしょう。他方、役に立つかどうかを勝負の軸に立てていると、いずれ価格競争に巻き込まれていきます。機能の良さはコピーがしやすいからです。

これからは、ますます「意味」が価値を高める時代になってくるでしょう。その商品・サービスの持つ意味の希少価値次第では、高い値付けも可能になります。自社商品・サービスが顧客にとってどんな意味を成しえるのか、マーケティングの観点で見つめなおすのに、イタリア車の例はヒントになると思います。

<まとめ>
役に立たなくても意味があれば売れる。

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