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何を評価対象とするか

先日、ある企業様で人事評価制度の見直しの検討に同席する機会がありました。社員の評価結果がより的確に出てくるよう、評価基準を変更しようというものです。

同社様では、成果と、成果を生み出すプロセスの両方を評価対象としています。設定した目標に対する達成度(成果評価)と、行動や職能の発揮度合い(行動評価)の組み合わせです。目標は、学卒社員、中堅社員、管理職等の社員等級のどこに位置するかと置かれた部署や業務の状況に応じて、期毎に適切なものを設定します。行動評価では、社員等級に応じて、会社として求めたい行動や職能の発揮レベルが定義されています。

そして、等級に応じて各評価結果の処遇への反映度合いが異なる設定になっています。イメージとしては、成果評価:行動評価で、若手社員が3:7、中堅社員が5:5、管理職が7:3のような割合です。同様のルールになっている会社も多いのではないかと思います。

同社様での検討で話題になったのは、「このルールは果たして妥当なのだろうか」ということです。この問いには決まった正解がなく、会社のポリシー次第ということになると言えます。

上記ルールが、同社様を含めて多くの会社で採用されやすい理由は、次の通りと考えられます。

・学卒直後や経験年数がまだ少ない若手社員は、成長ステージとしてまずは確実に仕事を覚え、組織の考える正しい行動を身につけることに集中してほしい。貢献ということについては、自立して設定した課題を達成し成果を生み出すまでいかなくても、上長や先輩社員の指示命令した課題や作業を引き取ることで行ってくれれば十分である。

・経験年数を積んでいくに従って、具体的な成果貢献を求めていく。特に管理職に対しては、成果を生み出すプロセスよりも、何を達成してくれたのかの成果を基本的に評価対象の軸とする。

妥当な考え方とも言えますが、この考え方に対して3つの視点から問いかけてみるべきだと思います。ひとつは、成果とは何かということです。

最終的な成果指標は、売上高や利益額など、財務に直結するものとなります。財務的な指標に至るまでに、多くのプロセスがあります。営業活動で例えば、商品・サービスの告知→告知した相手に対するコンタクト→電話や訪問→提案→交渉→受注→売上高といった流れがあります。この流れのうち、どこまでが「行動」でどこからが「成果」なのかは、定義次第という側面があります。

例えば、受注に至ったものしか成果としてカウントしないという考え方もあれば、提案までこぎつけたことは(売上高という財務指標に影響をもたらさなくても)お客さまとの関係性を発展させたとして、一定の無形の成果としてみなすという考え方もできます。成果評価の対象となる目標設定に、受注件数・金額等に加えて提案できた件数まで網羅されていれば、提案を意識した活動がより促されるかもしれません。

逆に、提案が評価対象に含まれていない場合、訪問した結果すぐに売上化するのが難しそうな状態だと判断すれば、その相手とコミュニケーションをとるのを途中でやめて、別の相手にターゲットを集中するなど、対応の丁寧さが損なわれるかもしれません。

一方で、提案件数が成果としてカウントされることによる弊害もあり得ます。それが処遇に何らかの影響を与えることで「なんでもかんでも適当な提案をして件数のカウントにねじ込む」ような行動が誘発されると、相手先にとっても迷惑で本末転倒な評価の仕組みとなってしまうかもしれません。

提案が目標設定の中に組み込まれていなくても、成果に至るプロセスのひとつとして、別のところで評価することもできます。例えば、行動評価の中で提案に関連することが評価項目として明記されている、提案に類する活動をどれだけ注力し丁寧に行ったかなどをみる項目が存在する、などがあれば、そちらで評価することもできるでしょう。

もっとも、評価対象になっていなくても普段の活動に反映されていればよくて、それが理想かもしれません。例えば、上長のマネジメントの中でそうした活動を促したリフォローしたりする、会社の理念や価値観を浸透させ本人の自覚によって適切な行動がとれるようになっている、などです。

そのうえで、例えば提案という活動に組織としてこだわり、社員に積極的な行動を促したいのであれば、評価対象として明確化するのは組織マネジメントの一環と言うことができます。

評価割合をどうするかという狭義のルール設定もさることながら、そもそも何を成果とし何を評価対象とするのかといった考え方の整理・共有のほうが、より大切だと思います。

続きは、次回以降考えてみます。

<まとめ>
何を成果とみなすかは、組織の定義による。

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