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国境を越えて賃金が魅力的な場所で働く

12月24日の日経新聞で、「円安の今こそ海外で働く ワーキングホリデー申込件数2倍 外貨建て給与魅力的に」というタイトルの記事が掲載されました。賃金が相対的に日本よりも高くなった海外で就業を希望する人が増えているという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

海外で働く意欲を持つ日本人が増えている。オーストラリアのワーキングホリデーのビザ申請件数で日本人は21年7月~22年6月で前の年同期比2.4倍の約4600人。留学支援などを手掛けるウィッシュインターナショナル(東京・新宿)によると、円安が急速に進行した今年6~10月のワーキングホリデーへの申込件数は豪州を中心に1~5月に比べ2倍で推移し、一段と人気が高まっている。

ワーキングホリデーや留学の支援サービス「スマ留」を運営するリアブロード(東京・新宿)でも22年10月のワーキングホリデーに関する相談件数が約370件と前年同月比4倍に急増した。コロナ禍前の19年同月比でも2.9倍の水準だ。同社を通じてカナダに留学した男性は日本食レストランの調理で週5日1日あたり10時間働き月6000~7000カナダドル(約58万~68万円)を稼いでいるという。「物価も高いが日本に送金するメドもたてている」とする。

米インディードの求人検索データで、日本在住者による海外の求人サイト検索件数は22年10月中旬に、コロナ禍前の19年同期比約2割増えた。通常は8月や正月など長期休み中に検索比率が上昇するが、10月時点での上昇は異例で集計可能な18年以降で過去最高水準だ。

米国やカナダが人気の検索先で、豪州のワーキングホリデー目当ても多い。パートタイムとして検索する人も目立ち、「従来海外に職を求めてきた高度人材だけでなく、看護師や運転手など、現場労働者の検索が増えている点も特徴的」(担当者)という。

海外企業が割安な日本の働き手に目を向けるケースもある。国をまたぐテレワークの支援サービスを手掛ける米ディールでは、日本人を求める米新興企業からの依頼が急増している。9~11月は円安が進行する前の3~5月に比べ6割増の日本人の働き手が米国企業などの業務に従事している。「円安で海外企業による人材需要が加速している」(中島隆行カントリーマネジャー)という。

日本から豪州や北米に出稼ぎに行っている日本人に関する記事を、時々見かけるようになりました。私たちにとっての出稼ぎと言えば、以前は外国から日本に来るのが一般的なイメージでしたが、今では日本人が国外に出稼ぎに行くのも一般的になってきているようです。

上記を参照すると、いわゆる社員としての雇用でなく、パートタイムのような形態であっても日本で社員雇用されるより賃金が高い求人もあり、節約次第で相応の額を貯金できる環境であることが伺えます。

前回は、大幅賃上げを行うファーストリテイリングの事例を取り上げ、高度なスキル人材がますます国境を越えて行き来するようになり、人材の獲得競争と生き残り競争が激しくなるであろうことを考えました。それに加えて今後は、高度なスキル人材だけではなく、時給労働者も同様のことが起こってくるのを示唆していると思います。

働く人にとってはチャンスが広がると言えます。現地に行き雇用される形態以外にも、日本に居住しながら国外が本拠地の企業にテレワークで雇われるという形態も増えるはずです。

中国が61年ぶりに総人口の減少に転じたと報道されています。

先日の「人口減少の今後を考える」で考えた通り、アジア圏は移民の本格的な受け入れができる土台が整っていない地域が多くあります。そのような地域にとっては、テレワークで国外の人材を雇用し戦力化するという動きは、有力な方法になるはずです。

特に中国は、国内の労働人口が今後急速に減っていくことが予想されるため、その形態での雇用が増えていくことも想定されます。欧米圏含めて、良い条件での求人が増えていくようになれば、働く側にとっては雇用の選択肢が広がります。今後はますます、言葉の壁を超えることが課題になるでしょうし、言葉の壁をクリアできる人材にチャンスが広がると想定されます。

企業側にとっては、国外の人材を引き寄せる機会が広がる一方で、国内の人材については国外企業ともさらなる獲得競争を行うことになると想定されます。国内の人材に訴求し続けるために、賃金等の労働条件や、企業としての魅力を打ち出せるよう一層の取り組みが求められそうです。

賃金等では、国内の賃金統計や業界各社のベアの動きを参考に、自社の求人条件を決めることがこれまで一般的でした。しかしながら今後は、特にIT企業など国境を越えやすい業界を中心に、国外企業の条件をより意識しなければならない環境になってきたと言えそうです。

<まとめ>
国境をまたいだ人材の募集と応募が、ますます一般的になる。

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