人口減少の今後を考える
12月14日の日経新聞で、「米中のGDP逆転せず ゼロコロナ余波、日経センター予測」というタイトルの記事が掲載されました。日経センターは毎年12月を目途に、直近の政策や経済情勢を織り込んだ最新の推計値を公表しているようですが、昨年までの予測から変わっているという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
今後の経済成長に対して長期的に影響が大きい要素は、人口動態です。
先日の投稿「社員構成の未来を想定する」では、出生率の低下が短期的には経済成長を加速させることを取り上げました。子どもという、1から人材育成する投資が必要な対象者数が減ることで、子ども1人に対する集中的な投資がエリア全体で可能になります。そして、20代以上の実質的な労働力人口が全人口に占める比率が高くなることで、エリア全体の生産性が高まるためです。
しかし、やがて人口動態の年代別グラフがスライドしていき、少ない母数の子どもが20代以上を形成していって人口減少が加速するようになると、全体の成長が止まるというわけです。日本の80年代までの経済成長とその後の経済停滞の一因を、このことに求めることができると思います。
そして、中国でも今後同様のことが起こり得るのを、上記記事は示唆しているのだと言えます。加えて、同じことはほとんどのアジア諸国で当てはまります。
日本以上に少子化が進んでいる韓国や台湾をはじめ、ベトナム・タイなども少子化が進んでいます。「世界経済のネタ帳」によると、1980年代には3を超えていた合計特殊出生率も、2020年でベトナムは2.05、タイは1.50です。既に長期スパンで総人口維持に必要な値を下回っています。
これと同じことは、基本的にすべての国に当てはまることです。そのうえで、米国や欧州の場合、移民の受け入れが挙げられます。以前からその国に住んでいる人の間で少子化というアジアと同じ現象が起こっても、それを上回る労働力人口とその子どもが流入し、トータルで人口が緩やかに増え続けています。しかも、そうした人たちは貪欲で労働意欲も旺盛です。このことが、米国や欧州で経済成長を続けることができている大きな要因のひとつのはずです。
アジア諸国の場合、欧米ほどの移民受け入れのマインドやインフラが整っていません。これからどれだけそうした受け入れができていくのか、あるいは韓国や台湾のような、国家戦略として特定産業・分野を育てていくような取り組みを成功させることができるのかが、今後の持続的な発展の有無を分けるひとつの要因になると考えます。
いずれにしても、今後中長期的に、日本経済と同様の構造的な低迷がアジア諸国でも起こっていく可能性は、想定しておく必要があると思います。
<まとめ>
人口動態に根差した日本経済の発展→低迷の現象が、アジア諸国でも起こっていく可能性がある。
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