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「諦める」というのは「明らめる」こと

人間学入門(致知出版社)という書籍に掲載されている、渡部 昇一氏の記事を読みました。渡部 昇一氏は、日本の英語学者、評論家で、上智大学名誉教授だった方です。劣等感を味わいながらも学問と実践を究めていったその生き方には示唆があふれています。

「諦めるというのは、明らめるなんです。」
同書に出てきた言葉です。

「諦める」という言葉は、物事を途中で投げ出すかのような、ネガティブなイメージがあります。しかし、諦めるべきことを諦めるのは、自分の人生を主体的なものにするために必要な行動である。渡部氏のお話からは、そのように感じ取りました。

私たちが体験する出来事には、自分がその決定に直接関与できることと、できないことがあります。例えば、明日の天気がそうです。どんなに明日の天気を心配しても、自分の努力が天気の決定に影響を及ぼすことはありません。

他人が自分をどう思うかもそうです。もちろん、自分という人物を理解してもらうための努力は、相手が自分をどう見るかに影響しますし、努力で変えられる部分です。しかし、最終的に相手が自分に対してどんな感情を持っているかについては、自分の意思の範囲外であって直接操作はできません。

渡部氏は、自分が直接決めることができないこと、自分の意思の範囲外にあることは、諦めることが必要だと説きます。

自分がベストを尽くすべきは、自分が直接影響を与えられること、結果を変えられることです。諦めるべきことと、ベストを尽くすべきことを見極めるために、その物事がどちらに属しているのかを明らかにする必要があります。渡部氏の言葉は、このことを示唆しているのだと思います。

そして、自分の意思の範囲内にあることは言い訳をしないで、自分でやる。自分事としてベストを尽くすべきだと認識したことについては、徹底的に取り組む。自分に与えられた時間を最大限活用してこれ以上ないと言えるぐらいまでやりきる。大学時代の挫折を経たうえで、ご自身の人生を精一杯生きた渡部氏だからこそ、発せられる言葉なのだと思います。

自分にできることを最大限取り組む、その結果が最終的にどうなるのかは自分の意思の範囲外だから、直接思い悩むことはしない。必要な行動ながら、私にはなかなか実践できていなかったことを、同書からひとつ見出すことができた次第です。

この考え方は、選択理論心理学に通じるものがあります。アチーブメント株式会社の説明(HP参照)によると、次のようにあります。選択理論の視点で自分の行動すべきことを把握してそこに集中することは、日々の活動をよりよいものにしていくヒントになると感じられます。

選択理論は、すべての行動は自らの選択であると考える心理学です。

選択理論心理学
自らの行動を選択できるのは自分だけなので、自らの行動は他人に選択されないし、他人の行動を選択させることもできないと考えます。
そのため、問題が発生した時には、相手を受け入れ、自分との違いを交渉することで解決します。その結果、良好な人間関係を築くことができると選択理論では考えます。

外的コントロール心理学
従来の心理学(外的コントロール心理学)では、人間の行動は外部からの刺激に対する反応であると考えられてきました。
そのため、問題が発生したときには怒る、罰っするなどの強い刺激を相手に与えることで、相手を思い通り動かして解決しようとします。しかし、その結果人間関係は破壊されてしまいます。

同書で渡部氏は次のように語っています。恩師の先生に出合って開眼し、その後の自身の発展につながったというエピソードです。

骨の髄で願望が燃える時、天の一角から可能性が降ってくる。恩師の先生を見ただけで、脊髄の中で、いままで感じたことのないじんじんがきた

先日の投稿では、本物に出合ってしびれることが大切だということを取り上げました。

渡部氏のお話からは、本物に出合うことの大切さも感じた次第です。これまでの出会いの中でしびれた経験を思い出して自分を意識的に鼓舞したり、日々新たなしびれる出会いを求めて行動したりすることも大切にしたいと思います。

<まとめ>
自分の意思の範囲内にあることで悩み、行動する。

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