「気候退職」を考える
6月7日の日経新聞で、6月2日付 英フィナンシャル・タイムズ記事「「気候退職」企業の心構えは 若手確保は行動が大事」が紹介されていました。企業が環境問題へどう対応するかが、従業員の退職に影響を与えると説明している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
私が就職活動をしていたころは、環境問題への取り組みを就職先の会社に対する評価にするなど、自分も含めて周囲では皆無でした。
「〇〇世代」という括り方が必ずしも適切とは限りませんが、若手世代ほど環境問題への意識が高いということは、いろいろなところで指摘されていることです。環境問題に対する取り組みの有無が、その企業に対する評価の重要な要素となり、今後もさらに重要性が高まるというのは、間違いない方向性だと思われます。
個人的には、同記事の調査で、東南アジアの若手のほうが西欧・北米より環境問題への意識が高いという結果が出ている点が驚きでした。
私は、約20年前に数年間、東南アジアから来日した皆さんと集中的に仕事でご一緒したことがあります。当時来日した人たちですので、エリート層の部類に入る人材です。そのころ一様に聞いていたのが、「環境のテーマは大切でこれからさらに問題になると思うが、国として優先されるは産業振興。人々もあまり環境への意識は高くない」という反応でした。当時の記憶による勝手な先入観をもっていたため、同記事の結果に驚いてしまったわけです。
もちろん、国や地域によって環境問題への取り組みと成果に差があります。それらがある程度進んでいる国や地域での回答と、まったく進んでいない国や地域での回答とは、重みが異なるとも言えます。そのうえで、同記事の著者も意外だと言っているということは、東南アジアでの回答結果が以前の傾向とは異なる内容になってきていると言えるのだと思います。
「企業に環境問題への取り組みを期待する」といったトーンを超えて「行動を起こすよう強く求める」と踏み込んでいるのが印象的です。「東南アジアで気候変動対策の行動を起こすよう自分の勤め先に強く求める割合が、Z世代66%、ミレニアル世代71%」という事象は、(これも先入観かもしれませんが)西欧や北米のみならずおそらく日本よりも高いのではないかと想像します。
同記事からは改めて、次のように認識すべきなのだろうと感じました。
・自社としての環境問題への取り組みに納得してもらえるかどうかが、今後ますます、消費者や取引先から支持されるかどうかに加えて、従業員から選ばれ続けるかどうかにもつながってくる。
・東南アジアをはじめとした他国のほうが、その傾向が顕著である可能性がある。
6月19日の日経新聞では、2023年度飲食業調査で、外食企業の44%が24年度以降に海外出店を拡大する意向を示していて、前回調査から大幅に増えたと紹介しています。日本で人口減少、少子高齢化で外食の需要量が減っていくことを見越して、内需産業から外需産業への転換を進めていく必要のある背景を受けての動きです。
例えば、日本国内の事業活動でこれまで一般的な感覚として運営してきたやり方が、国外に出たときに不十分で、想像以上の環境対策を求められるという事象もあり得ます。今後上記などの動きが加速する中で、さらに留意しておくべき点になりそうです。
もちろん、国内の事業活動においても同様です。国内外の投資家や取引先から一層の環境対策を求められてくる可能性もあります。外国人従業員から自社の環境対策に対する疑問や苦言を呈される場面が出てくる、なども今後あるのかもしれません。
<まとめ>
環境対策の取り組みが、従業員から選ばれかどうかの理由になり得る。