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管理職になりたくない人(2)

前回の投稿では、日経新聞の記事で紹介された「役職者になりたくない人が8割」についてテーマにしました。なりたくない理由として「責任の重い仕事をしたくない」(51%)が挙げられていましたが、管理職にならずとも、何をしても責任はついて回るし、自己成長が必要という視点について考えました。

2つめの視点は、管理職人材の市場価値が今後高まるのではないかということです。

言うまでもなく、物の値段は主に需要と供給の関係で決まります。人材市場についても同じです。今日現在であれば、エッセンシャルワーカーと呼ばれる職種の一部や高度IT人材などが調達難のため、同職種の年収相場が年々上がっています。他方、事務職などは十分な供給源があり、あまり上がっていきません。

組織の管理職を志向する人が減っているということは、マネジメントを務める人材の供給力が減っていくことになります。さらには、管理職を志向することに加え、実際に取り組んで成果を出した実績をつくれた人(やりたい人+できる人)となると、さらにパイが小さくなることになります。前回紹介した記事のデータから、「なりたい+どちらかといえばなりたい」で17%、ここからさらに「できる人」という条件を加えると、イメージとしては全人材の一桁%でしょうか。一言でいうと、今後管理職が務まる人材は希少価値が高まるということが想定できます。

働く人のキャリア開発への意識が、年々高まっています。生涯通用する武器としては、一般的には何かの専門領域でのスペシャリストを想像します。そのうえで、上記のように考えると、組織マネジメントに秀でているということは、今後キャリアで生涯通用する希少価値の高い武器になり得るという見方もできるでしょう。

仕事がAIに代替される可能性が叫ばれていますが、組織に存在する様々な変数や要素を捉えてマネジメントすることは、AIに代替されにくい領域でもあります。現勤務先で勤め上げるにしろ、転職するにしろ、自ら起業するにしろ、経済活動で事業の営みが存在する以上何らかの組織マネジメントは存在し続けます。これを身に着けておくのは、自己防衛手段としても注目してよいと言えると思います。

3つめの視点は、上記にも通じますが、管理職は本来やりがいのある仕事だということです。

ところで、「管理職とはどのような役割のことを言うのですか?」と問われたら、どう説明されますでしょうか。読んで字のごとくなら「組織管理をする人」になるかもしれませんが、私は的確でないと思います。

マネージャー(manager)の語源の「manage」をweblio辞典で引くと、「どうにかしてする、うまくする、なんとかする」などが出てきます。つまり、マネージャーとは、決まった手順で物事を進めて管理する人ではなく、所与のルールなどない中で組織内外の環境変化を見定めながら「どうにかする人」だということでしょう。一般的に、組織をマネジメントするマネージャーのことを「管理職」という言葉で表現しますが、個人的にはこの「管理職」という語感はマネージャーに本来期待されている役割を的確に表現していないと思います。

私個人としては、自分なりに管理職を次のように定義しています。

「会社(上位組織)の戦略が実現するよう、自組織の戦略を決め、作戦レベルに落とし込んで成功させることを、どうにかしながらやる人」

マネジメントについて、「戦略」「作戦」「戦術」という言葉を使って考えてみたいと思います。3つの言葉について、ここでは以下のように定義してみます。

戦略:将来を見通しての方策・シナリオ
作戦:方策実現のために実行するプロジェクト
戦術:個々の具体的な活動・手段

これらは、いずれの言葉も語源に「戦」の漢字が使われています。
(本人がそのように考えていたかどうかは存じ上げませんが、イメージとして)例えば織田信長公が、「自由経済圏をつくる」「外国の技術・文化を積極的に導入する」「旧態依然とした勢力・慣習を打破する」の3本柱によって強い国をつくる、と大方針を定めたとすれば、それは戦略レベルの視点です。作戦レベルとしては、自由経済圏の象徴として安土城下で日本一の楽市楽座を完成させる、などが当たるかもしれません。戦術レベルは、楽市楽座のメインストリートをどのように設計するか、などかもしれません。

上記の私なりのイメージは、管理職が、作戦の遂行や個々の具体的な戦術はメンバーに任せて推進し、自らはメンバーの意見も聞き参考にしたうえで、戦略立案と作戦を判断して決めること、を役割とすることです。このように考えると、管理職という仕事はやりがいあって面白いものだと感じられるのではないでしょうか。

「管理職」という言葉は聞き慣れていますが、改めて言語化するといろいろな定義が可能だと思います。上記は私の個人的な定義です。よかったら、ぜひ自分なりの定義をしてみるとよいと思います。管理職という役割や機能に対して、また違った見え方がしてくると思います。

<まとめ>
管理職は本来やりがいがある仕事であり、それを務められる人材の価値は今後高まるであろう。


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