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多様性活用を目指す組織変革

先日、「Climers2022春」というオンラインイベントに参加しました。様々な分野でブレイクスルーを実現した登壇者の特別講義からヒントを得る趣旨のイベントでした。同イベントにおいて、「働く環境に変革を起こすため、多様性の理解と浸透を目指すリーダーたちの挑戦」というテーマで、パナソニック コネクト株式会社 執行役員 常務/CMO 山口 有希子氏と株式会社ポーラ 執行役員 安野 晋平氏の対談がありました。

組織を発展させ創造的な仕事を生み出してさらに社会に貢献するためには、その活動に参加するメンバーに多様性(人種、性別、年齢、価値観、強みとするものなど)が必要だということは、広く言われてきています。この考え方自体にはほとんどの人がうなずきますが、実践は難しいものです。なぜなら、私たちは自分と似た同質的な人と一緒にいるほうが楽だからです。多様性あふれるメンバーの活躍は、うまくできている組織のほうが少数派でしょう。

同対談からは、多様な人材を活用するための組織の取り組みを進める上で、様々なヒントが得られました。個人的に印象に残った点を中心にしながら、個人的な意見も含めたことをランダムにまとめてみます。

1.トップの強いコミットメントが必要

多様な人材の活用は、企業変革であり、企業変革は文化の変革を伴います。文化の変革は、相手も自分もこれまでにない世界への適応を伴うものであり、とても困難なことです。異文化圏の外国に数日間旅行するのは気楽なものですが、一定期間定住するとなるとカルチャーショックに身構えないといけないことを、私たちは知っています。多様な人材の活用をしていくということは、本来それと同じイメージの身構えが必要なわけです。

そのような、ストレスがかかりできれば避けて通りたい困難な変革を進めていくうえでは、最高意思決定者であるトップの本気度が大前提になります。そのテーマを推進しているようでいてそこまで強い思い入れはない、「あとは任せたから」と言って途中でトーンダウンしていく、などでは、変革はできません。しかし、トップの本気度がハテナな姿勢の景色は、多くの会社で見かけます。トップの本気度が最重要の要素だということを、改めて認識すべきだと思います。

2.社外の人物も使ってトップの本気度を高める

そのうえで、組織にはトップ以外のメンバーも存在します。取り組みの成否は、トップ1人だけの責任ではありません。そこで、トップに影響を与えることのできる幹部メンバーもカギになってきます。

同対談では、「文化の変革にあたっては、トップのアンコンシャスバイアス(無意識の根拠のない思いこみや偏見)は存在する前提で取り組む必要がある」という示唆がありました。

トップは、今までのやり方でトップまで上り詰めています。よって、「自分のやり方が成果を出すやり方だ」=「他のやり方では成果が出ないのではないか」という無意識の偏見をもっているというわけです。これ自体正論ではないと思いますが、仮に今のトップの方法論が成功するための唯一の方法論だったとしても、トップが成功した当時の環境と今の環境は違うはずです。ですので、環境に合わせて方法論も変わりうるはずです。しかし、そのような柔軟で客観的な物事の捉え方は、なかなかできないものです。

同対談の示唆は、そのことを嘆くのではなく、所与の条件として織り込むべきだということです。「トップの頭の固さ」ゆえに企画が進まないという悩みは、多くの企業の幹部から聞くことのある話です。その際、トップの性格や人格に原因を求めていきがちですが、その個人の問題ではなく、人は普遍的にそういう側面の持ち主だと捉えたうえで、対応方法を考えましょうというわけです。

トップも基本的には、企業をよくしたい気持ちを持っているはずです。対談では、社外の声の活用も有効だというお話がありました。社内はもちろん、社外の声も有効に使って、あの手この手でトップに自らのバイアスに気づいてもらう。取り組みテーマへの理解とコミットメントを求めていくのが、幹部メンバーの役割だということです。

トップは、社内の力関係では頂点の存在です。どんなに「風通しが良い」「フラット」と呼ばれるような風土をつくったとしても、メンバーが何でもかんでもトップにモノを言える組織はあり得ませんし、トップにもそのような力関係はどうしても身についてしまっています。ですので、社会の世論、業界の動向、専門家の意見、顧客の声、社外関係者で自社をよく理解してくれている人、などの社外の外圧をうまく使うのは、トップのバイアス認識を促すためにやはり有力な手段になります。

3.トップがバイアスの有無を問う

トップに比べると度合いはそこまで強くないかもしれませんが、アンコンシャスバイアスにかかる可能性があるのは、トップ以外のメンバーも同じです。良かれと思って考え抜いた取り組みの方向性や施策内容にも、多様性を後退させることにつながるようなバイアスがかかっているかもしれません。

同対談では、「トップが最後に「これって、バイアスかかってないよね?」とメンバーに問いかけるのが効果的だ」という示唆がありました。組織としての最終意思決定の前にこのようなステップがあることで、その取り組み内容に必要な軌道修正が生まれてより洗練される機会になると思います。

続きは、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
取り組みテーマに対するバイアスを取り除き、本気度を高める。


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